建設工事における請負代金内訳書とは?建設業法をもとに解説
行政書士
寺嶋紫乃
行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。
建設業に携わる皆さまには、契約時に提出する「請負代金内訳書」が重要な書類であることをご存じでしょうか。本記事では、最新の建設業法令と国土交通省のガイドライン等を参照し、請負代金内訳書の重要性や記載事項について分かりやすくご説明いたします。
請負代金内訳書とは何か
請負代金内訳書は、建設工事の契約時に、請負代金の内容を具体的に明示するための書類です。特に公共工事では、落札者が契約後に提出することが義務化されています。法定福利費やその他の必要経費が適正に反映されているかを確認するため、内訳が細かく記載されます。
「工事費内訳書の提出について」(平成27年3月17日付け国港総第497号、国港技第125号)
1 対象工事
競争入札に付する全ての工事において工事費内訳書の提出を求めるものとする。
2025年法改正による記載義務の拡充
2025年12月12日に施行される第三次担い手3法により、公共工事等の入札時には、請負代金内訳書に以下の5項目の記載が必須となります。
| 項目 | 定義・説明 |
|---|---|
| 材料費 | 工事に必要な材料や資材にかかる費用です。 |
| 労務費 | 現場作業員等の人件費です。 |
| 法定福利費 | 事業主負担分の社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険等)です。 |
| 安全衛生経費 | 労働者の安全・健康確保のための経費(安全管理や衛生のための費用)です。 |
| 建設業退職金共済掛金 | 建設業退職金共済(建退共)に加入するための掛金です。 |
「工事費内訳書の提出について」(平成27年3月17日付け国港総第497号、国港技第125号)
2 工事費内訳書の内容及び様式
工事費内訳書の内容は、数量総括表に掲げる工事区分、各工種、種別、細別に相当する項
目に対応するものの単位、数量、単価及び金額を少なくとも表示したもの(様式自由。ただ
し、商号又は名称並びに住所及び工事名を記載すること。)とする。ただし、種別及び細別
については、当該工事における数量総括表と同一でなくても良い。また、材料費及び労務
費並びに法定福利費(建設工事に従事する労働者の健康保険料等の事業主負担額をいう。)、
安全衛生経費(建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律(平成二十八年
法律第百十一号)第十条に規定する建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する経費を
いう。)及び建設業退職金共済契約(中小企業退職金共済法(昭和三十四年法律第百六十
号)第二条第五項に規定する特定業種退職金共済契約のうち、建設業に係るものをいう。)
に係る掛金(以下「法定福利費等」という。)を明記するものとする。
■内訳明示すべき必要経費の範囲
出典:国土交通省「改正建設業法「令和7年12月施行分」説明会」
法定福利費の明示と算出方法
法定福利費とは、雇用保険、健康保険、厚生年金保険などの事業主負担分を指します。健康保険には介護保険料、厚生年金には子ども・子育て拠出金も含まれており、全てをまとめて明示する必要があります。
■内訳明示する法定福利費の範囲
出典:国土交通省「法定福利費を内訳明示した見積書の作成手順」
法定福利費の算出方法は各自治体や国土交通省のガイドラインに詳しく記載されていますので、参考にしてください。
民間工事での請負代金内訳書の位置づけ
民間工事では法的義務はありませんが、国土交通省が作成した「民間建設工事標準請負契約約款」に基づき、請負代金内訳書の作成と法定福利費の明示が標準化されています。
民間建設工事標準請負契約約款(甲)
(請負代金内訳書及び工程表)
第四条 受注者は、この契約を締結した後、速やかに請負代金内訳書及び工程表を発注者
に、それぞれの写しを監理者に提出し、請負代金内訳書については、監理者の確認を受
ける。
2 請負代金内訳書には、材料費、労務費、法定福利費(建設工事に従事する者の健康保
険料等の事業主負担額をいう。)、安全衛生経費(建設工事従事者の安全及び健康の確保
の推進に関する法律(平成二十八年法律第百十一号)第十条に規定する建設工事従事者
の安全及び健康の確保に関する経費をいう。)並びに建設業退職金共済契約(中小企業退
職金共済法(昭和三十四年法律第百六十号)第二条第五項に規定する特定業種退職金共
済契約のうち、建設業に係るものをいう。)に係る掛金を明示するものとする。
公共・民間問わず、適正な契約と社会保険加入推進のため、請負代金内訳書の作成が推奨されます。
また、建設業法では、建設工事の施工のために必要な経費の内訳を記載した建設工事の見積書(材料費等記載見積書)の作成が努力義務となっていますので、内訳は作成しておくのがよいでしょう。
建設業法
(建設工事の見積り等)
第二十条 建設業者は、建設工事の請負契約を締結するに際しては、工事内容に応じ、工事の種別ごとの材料費、労務費及び当該建設工事に従事する労働者による適正な施工を確保するために不可欠な経費として国土交通省令で定めるもの(以下この条において「材料費等」という。)その他当該建設工事の施工のために必要な経費の内訳並びに工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を記載した建設工事の見積書(以下この条において「材料費等記載見積書」という。)を作成するよう努めなければならない。
まとめ
請負代金内訳書の作成は、法令遵守と適正な契約関係の維持、企業の信頼性向上のために不可欠です。2025年の法改正による項目追加にも対応し、記載すべき内容を正確に把握した上で作成しましょう。最新情報は国土交通省や自治体公式サイトを随時ご確認ください。
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