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【建設業法】関連コラム

営業担当者が無自覚に起こす無許可営業のリスクとは? 若手・営業担当者向けコンプラ研修のカリキュラム例

片岡詩織

行政書士

片岡詩織

行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可をはじめとする各種許認可手続きを担当し、担当件数は年間200件を超える。建設業者向けの研修や建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可のデューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務にも携わっている。

建設業におけるコンプライアンス違反の中でも、「無許可営業」は営業担当者の些細な判断ミスから発生しやすい法令違反の一つです。無許可営業というと、建設業許可を取得していない会社が犯す建設業法違反というイメージを持たれがちですが、既に建設業許可を取得している会社であっても、制度の理解不足や判断の誤りによって該当してしまうケースが少なくありません。
今回は、営業担当者が無自覚のまま無許可営業を犯してしまう事例と、社内研修として押さえるべきカリキュラム例をご紹介します。

無許可営業には罰則や監督処分が科せられる

建設業における無許可営業とは、建設業許可を取得せず、軽微な建設工事の範囲を超えた工事を請け負うことをいいます。無許可営業は、故意に法令を無視した場合だけでなく、制度理解が不十分なまま業務を進めた結果として発生することも多く、企業規模を問わず注意が必要です。

建設業許可を取得せず、無許可営業を行った場合には、以下のような制裁が科せられます。

・指示処分/営業停止処分/許可取消処分などの監督処分
・3年以下の懲役または300万円以下の罰金
・1億円以下の罰金(法人の場合)
・建設業許可を5年間受けられなくなる

無許可営業が発覚し、監督処分や罰則の対象となった場合は、単に一定期間事業活動が制限される、あるいは金銭的な制裁を受けるにとどまりません。他の許認可においても取得・維持ができなくなるなどの影響が考えられるほか、行政処分の事実が公表されることにより、取引先や発注者からの信頼を大きく損なうおそれがあります。

無許可営業について、詳しくは「建設業の無許可営業を行うとどうなる?」を参照ください。

無許可営業が起こりうる事例3選

無許可営業は、既に建設業許可を取得している会社であっても注意が必要で、特に現場での安易な判断や認識のズレによって発生することも多い違反事例です。建設工事の契約は営業担当者が契約の主体となることも多く、「会社として建設業許可を持っている」という認識だけで判断が進められてしまい、本来必要な確認が省略されるケースが見受けられます。

本社に許可があっても無許可営業となるケース

建設業許可は、会社全体に付与されるものではなく、「営業所」単位で取得する制度です。ここでいう営業所とは、「常時請負契約の締結にかかる実体的な行為(見積・入札・契約等)を行う事務所」を指します。
そのため、本社が建設業許可を取得していることを理由に、許可を有していない支店等で工事の見積や契約を行っている場合には、建設業の無許可営業に該当します。

建設工事であるにもかかわらず、工事ではないと誤認して請け負ったケース

無許可営業の原因の一つとして挙げられるのは、「その業務が建設工事に該当するとは思っていなかった」という誤認です。建設工事に該当するかどうかは、契約書の題名や件名で判断するのではなく、具体的な作業内容をもって判断する必要があります。
たとえば、「設備更新」「機器販売」「レイアウト調整」などの件名であっても、作業内容に工作物の撤去や設備・機械の設置等といった作業を含む場合には、建設工事に該当する可能性があります。建設工事にあたるか否か(該否判断)の基準が会社として浸透しておらず、判断を従業員個人の感覚に委ねてしまうことは、無許可営業のリスクを高める要因となります。

建設業許可を有していない業種で軽微な建設工事以外の工事を請け負ったケース

建設業許可は、29に区分された工事業種ごとに取得する必要があります。そのため、自社が許可を有していない業種の工事について、軽微な建設工事の範囲を超えて請け負った場合無許可営業となります。
「軽微な建設工事」とは、請負金額が税込500万円未満(建築一式工事の場合には、1,500万円(税込)未満、もしくは延べ面積が150㎡未満の木造住宅を建設する工事)を指しますが、金額要件だけで判断することは適切ではありません。そもそも、請け負おうとする工事が29のうちどの業種に該当するのかを誤っていれば、軽微な建設工事かどうかの検討自体が成立しないためです。工事内容と業種区分の関係を正確に把握することが、無許可営業を防止する前提条件となります。

営業担当者向け研修のカリキュラム例

会社として無許可営業を防止するためには、会社として建設業許可を取得するだけでなく、各担当者が、建設工事の該否や業種に関する判断と自社が取得している建設業許可業種との関係性をしっかりと認識することが大切です。また単なる法令解説にとどまらず、「どの場面で、どのような基準で、何をもって判断するか」を具体的に示す内容であることが求められます。

建設工事の該否判断

研修の最初の項目として重要なのが、「そもそも、その業務が建設工事に該当するのか」という該否判断です。無許可営業は、建設業許可を取得していないことを認識しながら請け負ったのではなく、「これは建設工事ではないと思っていた」という誤認からも発生します。
工事名や契約書の表現に左右されることなく、実際の作業内容に基づいて建設工事に該当するか否かを判断する考え方を、実際の案件を基に説明します。営業担当者が、案件の初期段階で違和感を持ち、社内で確認を求めるべきポイントを明確にすることが目的となります。

建設工事の業種判断

建設工事に該当すると判断できたとしても、次に問題となるのが「どの建設業許可業種の工事に該当するのか」という業種判断です。無許可営業は、自社が建設業許可を取得しているにもかかわらず、許可を有していない業種の工事を請け負ってしまった結果として生じるケースが少なくありません。
工事名ではなく、実際の施工内容で業種を判断する視点を伝えます。あわせて、自社が保有している建設業許可の業種は何か、どのような工事であれば請け負うことが出来るのかについても説明します。

建設工事の該否・業種判断に関する研修実施のメリット

このような研修は、無許可営業という重大な法令違反を未然に防止するために有効であるだけでなく、契約内容を整理しやすくなり、業務を適切に進められるようにもなります。

例えば、工事であるにもかかわらず役務提供等として処理してしまうと、契約内容が曖昧になり、責任範囲や条件が不明確なまま業務が進行するおそれがあります。該否判断が適切に行える体制を整えることで、最初から建設工事請負契約として整理し、法令に則った契約締結を行うことができます。
また、業種の判断を適切に行うことで、必要な技術者の要否や、協力会社の選定、施工範囲の切り分けについても事前に検討することが可能となり、後工程での手戻りやトラブルを防止する効果が期待されます。
さらに、建設工事としての整理が徹底されることは、請負金額の確保という点でも重要な意味を持ちます。工事内容や責任範囲を曖昧なまま進めてしまうと、本来工事として評価されるべき作業が適正に価格へ反映されず、結果として低金額での受注につながるおそれがあります。該否判断・業種判断を適切に行ったうえで契約を締結することで、建設工事として妥当な請負金額を設定しやすくなります。

また研修の理解度を確認するテスト等を併用することで、知識の定着と社内体制の強化を図ることも可能です。

まとめ

無許可営業は、建設業許可を取得していない会社に限った問題ではなく、許可を取得している会社であっても、営業担当者や工事担当者の判断ミスによって容易に発生し得る建設業法違反です。建設工事の該否・業種判断に関する研修は、無許可営業を防止するための「守りのコンプライアンス施策」であると同時に、契約の適正化や施工条件の整理、請負金額の確保といった事業運営面にも寄与する取り組みといえます。営業担当者の判断力を底上げすることは、結果として企業全体のリスク低減と業務品質の向上につながります。

是非、行政書士法人名南経営の建設業法コンプライアンス研修をご検討ください。

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