建設業法令遵守ブログ

建設業許可の基礎知識

建設業法第19条の5「著しく短い工期の禁止」他解説

大野裕次郎

社員行政書士・東京事務所所長

大野裕次郎

建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。

はじめに

建設業法は、建設工事の円滑な進行や適正な取引の確保を目的として、様々な規定を設けています。近年では「働き方改革」や「品質確保」への要請が高まる中、工期設定の適正化が重要な課題となっています。本記事では、建設業法第19条の5「著しく短い工期の禁止」および関連条文について、最新の法令や国土交通省のガイドライン・通達を踏まえて分かりやすく解説いたします。

建設業法第19条の5「著しく短い工期の禁止」の内容

まず、「著しく短い工期の禁止」とはどのような規定でしょうか。建設工事の請負契約において、発注者(注文者)及び受注者(建設業者)は、通常必要と認められる期間より著しく短い工期で契約を締結してはならないとされています。

(著しく短い工期の禁止)
第十九条の五 注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。
2 建設業者は、その請け負う建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。

この規定により、発注者・受注者ともに無理なスケジュールで工事を進めることを防いでいます。品質・安全性の確保や、労働環境の改善を図るため、適正な工期の設定が求められています。

「著しく短い工期」の判断基準について

「著しく短い工期」とは、どのような基準で判断されるのでしょうか。国土交通省では、工事の内容・工法・人員・資材・過去の同種工事の実績などを総合的に勘案し、個別具体的に判断することが重要であるとしています。

  • 休日や雨天など、中央建設業審議会において作成した工期に関する基準で示した事項が考慮されているか
  • 過去の同種類似工事の実績との比較
  • 建設業者が提出した工期の見積りの内容の精査

工期に関する基準

工期に関する基準はこちらをご覧ください。

概要は以下のとおりです。

  • 第1章:本基準を作成した背景や、建設工事の特徴、請負契約及び工期に関する考え方(公共、民間(下請契約含む))、本基準の趣旨及び適用範囲、工期設定に受発注者の責務を記載
  • 第2章:自然要因や休日・法定外労働時間、契約方式、関係者との調整、行政への申請、工期変更等、工期全般にわたって考慮すべき事項を記載
  • 第3章:準備段階・施工段階・後片付け段階の各工程において考慮すべき事項を記載
  • 第4章:民間発注工事の大きな割合を占める4分野(住宅・不動産、鉄道、電力、ガス)の分野別の考慮事項を記載
  • 第5章:働き方改革・生産性向上に向け、他社の優良事例を参考にすることが有効である旨を記載
  • 第6章:本基準を運用するうえで考慮すべき事項等を記載


出展:国土交通省 「新・担い手三法について~建設業法、入契法、品確法の一体的改正について~」

関連条文の解説

発注者に対する勧告等(建設業法第19条の6)

著しく短い工期で契約した場合、発注者に対して行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)が必要な勧告を行うことができます。さらに、勧告に従わない場合はその旨を公表することも可能です。

(発注者に対する勧告等)
第十九条の六 建設業者と請負契約を締結した発注者(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第二条第一項に規定する事業者を除く。)が第十九条の三第一項又は第十九条の四の規定に違反した場合において、特に必要があると認めるときは、当該建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該発注者に対して必要な勧告をすることができる。
2 建設業者と請負契約(請負代金の額が政令で定める金額以上であるものに限る。)を締結した発注者が前条第一項の規定に違反した場合において、特に必要があると認めるときは、当該建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該発注者に対して必要な勧告をすることができる。
3 国土交通大臣又は都道府県知事は、前項の勧告を受けた発注者がその勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。
4 国土交通大臣又は都道府県知事は、第一項又は第二項の勧告を行うため必要があると認めるときは、当該発注者に対して、報告又は資料の提出を求めることができる。

このように、行政庁は違反行為に対して報告や資料の提出要求も行うことができ、コンプライアンス強化のための取り組みが推進されています。

工期に影響を及ぼす事象と情報提供義務

建設業法第20条の2では、発注者が地盤沈下や周辺環境など、工期や請負代金に影響を及ぼす事象を事前に把握している場合、契約締結前に建設業者へ必要な情報を通知する義務が定められています。

(工期等に影響を及ぼす事象に関する情報の通知等)
第二十条の二 建設工事の注文者は、当該建設工事について、地盤の沈下その他の工期又は請負代金の額に影響を及ぼすものとして国土交通省令で定める事象が発生するおそれがあると認めるときは、請負契約を締結するまでに、国土交通省令で定めるところにより、建設業者に対して、その旨を当該事象の状況の把握のため必要な情報と併せて通知しなければならない。
2 建設業者は、その請け負う建設工事について、主要な資材の供給の著しい減少、資材の価格の高騰その他の工期又は請負代金の額に影響を及ぼすものとして国土交通省令で定める事象が発生するおそれがあると認めるときは、請負契約を締結するまでに、国土交通省令で定めるところにより、注文者に対して、その旨を当該事象の状況の把握のため必要な情報と併せて通知しなければならない。
3 前項の規定による通知をした建設業者は、同項の請負契約の締結後、当該通知に係る同項に規定する事象が発生した場合には、注文者に対して、第十九条第一項第七号又は第八号の定めに従つた工期の変更、工事内容の変更又は請負代金の額の変更についての協議を申し出ることができる。
4 前項の協議の申出を受けた注文者は、当該申出が根拠を欠く場合その他正当な理由がある場合を除き、誠実に当該協議に応ずるよう努めなければならない。

たとえば、地中の状況や近隣環境、設計の調整、資材の調達等について、発注者が知り得ている情報を提供することで、工事の手戻り防止や円滑な進行を図ることができます。

まとめ

建設業法第19条の5「著しく短い工期の禁止」は、建設工事が適正な品質・安全性・労働環境の下で行われるための重要な規定です。発注者・受注者ともに、工期設定の際は最新の法令や国土交通省ガイドラインを十分に確認し、適正な契約を締結することが求められます。万一違反があった場合、行政庁による勧告や公表などの措置が取られる可能性もあるため、法令遵守の意識が不可欠です。

建設業者の皆様は、工期設定や契約内容の見直しに際して、専門家や行政書士への相談も活用し、安心・安全な事業運営を心掛けてください。

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