建設業法令遵守ブログ

【建設業法】関連コラム

建設業法第29条の3「許可の取消し等の場合における建設工事の措置」解説

寺嶋紫乃

行政書士

寺嶋紫乃

行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。

条文の確認

(許可の取消し等の場合における建設工事の措置)
第二十九条の三 第三条第三項の規定により建設業の許可がその効力を失つた場合にあつては当該許可に係る建設業者であつた者又はその一般承継人は、第二十八条第三項若しくは第五項の規定により営業の停止を命ぜられた場合又は前二条の規定により建設業の許可を取り消された場合にあつては当該処分を受けた者又はその一般承継人は、許可がその効力を失う前又は当該処分を受ける前に締結された請負契約に係る建設工事に限り施工することができる。この場合において、これらの者は、許可がその効力を失つた後又は当該処分を受けた後、二週間以内に、その旨を当該建設工事の注文者に通知しなければならない。
2 特定建設業者であつた者又はその一般承継人若しくは特定建設業者の一般承継人が前項の規定により建設工事を施工する場合においては、第十六条の規定は、適用しない。
3 国土交通大臣又は都道府県知事は、第一項の規定にかかわらず、公益上必要があると認めるときは、当該建設工事の施工の差止めを命ずることができる。
4 第一項の規定により建設工事を施工する者で建設業者であつたもの又はその一般承継人は、当該建設工事を完成する目的の範囲内においては、建設業者とみなす。
5 建設工事の注文者は、第一項の規定により通知を受けた日又は同項に規定する許可がその効力を失つたこと、若しくは処分があつたことを知つた日から三十日以内に限り、その建設工事の請負契約を解除することができる。

許可取消し後でも行えること

許可の取消し等、行政処分がいつ行われるか分かりません。突然処分を受け許可が無くなったときに工事の施工中であった場合、許可が無いため工事を続けられないということは注文者等の不利益に繋がります。そのため、本条で明確に、処分を受ける前に締結した請負契約があるときは、その工事に限り施工することができると規定されています。ただし、締結した請負契約が適法なものであることが前提です。
また上記の場合には、許可の取消し等の処分があったことと引き続き工事を施工することを、処分を受けた建設業者は注文者へ通知しなければなりません。この通知は処分のあった日から2週間以内に行わなければならないと定められており、この通知を怠ると罰則の適用があります。

注意点

許可取消し処分後にも引き続き工事を施工する場合であっても、当然のこととして建設業法を遵守しなければなりません。そのため工事現場には技術者を配置する必要があります。また、処分を受けた建設業者が特定建設業者であった場合には、支払いルール等特定建設業者としての責務も果たさなければなりません。

請負契約の解除

本条第5項で請負契約の解除を認めています。解除できる権利があるのは注文者です。処分を受けた建設業者ではありません。注文者は許可を持つ建設業者だからと信用して工事をお願いしていると考えられ、そのような注文者の利益を保護するために解除権を認めています。
ただしこの解除権にも期限があります。処分を受けた建設業者から処分を受けた旨の通知を注文者が受けた日、または処分を受けた建設業者の許可が失効した日、もしくは注文者が処分があったことを知った日、いずれか早い日から30日以内でなければ解除することはできません。