建設工事における請負代金内訳書とは?建設業法をもとに解説
行政書士
寺嶋紫乃
行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。
請負代金内訳書とは、誰がどのタイミングで作成し、内訳記載が求められているのはどのような項目でしょうか。
請負代金内訳書について詳しく見ていきたいと思います。
請負代金内訳書とは
社会保険等への加入を一層推進するため、令和3年4月1日以降、入札公告・指名通知等を行う案件において、落札した者が契約後に提出しなければならないと定められた書面が「請負代金内訳書」です。この内訳書は、請負代金の中に必要な法定福利費を適切に確保するために作成をします。
佐賀県「記入例 法定福利費を明示すること。」より
請負代金内訳書に記載する法定福利費とは
請負代金内訳書に記載する法定福利費は以下のとおりです。
1.建設工事の直接的な作業に従事する現場作業員にかかる社会保険料の事業主負担分
2.対象の社会保険は、雇用保険、健康保険及び厚生年金保険の3つ
2.の健康保険の保険料は介護保険料と、厚生年金保険の保険料は子ども・子育て拠出金と一体で徴収されるため、内訳に記載する法定福利費には、これらの事業主負担分も含まれるため注意が必要です。
「法定福利費をどのように算出するかわからない」という声を、よく耳にします。
ここでは愛知県の算出方法を紹介しますので、参考にしてください。
愛知県「法定福利費の内訳明示及び公表・確認について」
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/515139.pdf
請負代金内訳書は民間工事においても必須
請負代金内訳書は公共工事においては義務化されていますが、民間工事においてはそのような定めはありません。しかし、国土交通省の中央建設業審議会の作成している標準約款を見てみると、請負代金内訳書は民間工事でも標準化されています。
民間建設工事標準請負契約約款(甲)より
請負代金内訳書及び工程表
第四条 (第1項省略)
2 請負代金内訳書には、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険に係る法定福利費を明示
するものとする。
公共工事、民間工事を問わず、適切な法定福利費を確保するためにも、請負代金内訳書を作成するようにしてください。
まとめ
請負代金内訳書の作成は慣れるまでは大変な作業かもしれませんが、工事を適正な価格で請け負うためにも、請負代金内訳書を作成するようにしましょう。