建設工事における基本契約書とは?建設業法をもとに解説!
行政書士
寺嶋紫乃
行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。
建設工事の基本契約書と建設工事の契約書、これらは何が違うのでしょうか。
基本契約書について詳しく見ていきたいと思います。
「基本契約書」とは
一般的に、基本契約書とは、継続的な取引を行う相手と締結する契約書のことをいいます。同じ相手と繰り返し取引を行う等の継続的な取引相手がいる場合、取引のたびに毎回契約書を作成するのは手間がかかります。そのため、取引において共通する事項については、あらかじめ「基本契約書」に定めておくことで契約締結行為を簡略にすることができます。
工事の請負契約における基本契約書
もちろん建設工事の請負契約においても、基本契約書が使用されることはあります。
よく仕事をお願いする先(発注する先)がある場合、協力会社がいる場合等、継続的に工事を発注する先があれば、基本契約書を使用することがあると思います。
基本契約書を使った工事請負契約
建設業法には、建設工事の請負契約についていくつかルールが定められています。もちろん、基本契約書を用いて請負契約を締結する場合でも、建設業法のルールを遵守する必要があるため、基本契約書を用いる場合には少し注意が必要です。
先に見たとおり、基本契約書とは「取引において共通する事項」を定めたものです。そのため、少なくとも工事の内容・金額・工期などの工事毎に異なる内容は基本契約書には記載されていません。
建設業法第19条では、契約書に記載すべき事項16項目(現在、第16号(国土交通省令で定める事項)は定められていないため、実質的には15項目)が定められており、それらの項目を網羅するように契約書等を作成し締結する必要があります。
では、基本契約書を使用して契約の締結をする場合どうしたらいいのでしょうか。
それは基本契約書とは別に、個別の工事に関する事項は「注文書・注文請書」に記載し締結をするという方法です。基本契約書と注文書・注文請書のセットで、記載すべき事項をすべて網羅します。
基本契約書等の建設工事請負契約の参考資料
契約書を一から作成することは大変だと思いますので、基本契約書のみならず請負契約書を作成する際、参考にしていただきたいのが国土交通省の「建設工事標準請負契約約款」です。
公共工事と民間工事における標準約款に加え、下請契約における標準約款もあります。約款の内容で問題が無ければ、そのまま使用していただいても構いませんし、基本契約書として活用するのであれば、個別の工事にかかわる部分を省略する等の加工をして使用していただいても問題ありません。誰でも使用することができますので、ぜひご活用ください。