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【建設業法】関連コラム

内示書とは?建設業法違反になるのか解説!

大野裕次郎

社員行政書士・東京事務所所長

大野裕次郎

建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。

私法上、請負契約は口頭でも成立しますが、建設業法では、書面による契約でなければ建設業法違反となることはご存知の方が多いと思います。
急いで工事を進めたい場合でも、口頭での請負契約の締結は建設業法違反になってしまうので、発注者や元請業者が内示書を発行するケースがあります。このように、内示書が発行されていれば建設業法違反にならないのか解説します。

内示書とは?

内示書とは、一般的に、建設工事の発注内容が固まらない段階で、正式な請負契約書を交わす前に、請負業者側に先行して工事に着手してもらうために発行する書面です。工期に間に合わせる目的で、着工を早めるために作成されることが多い書面だと思います。

内示書という名称は法令で定められているものではなく、「発注内示書」「仮発注書」「仮注文書」「着工指示書」などの名称で呼ばれることもあります。いずれの名称であっても、内示書と同じ目的で作成される書面です。

内示書は建設業法違反?

結論から申し上げると、内示書は建設業法違反となるケースがほとんどです。その点に関して説明をします。

建設業法第19条第1項には請負契約に関するルールが規定されています。

(建設工事の請負契約の内容)
第十九条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
一 工事内容
二 請負代金の額
三 工事着手の時期及び工事完成の時期
四 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
五 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
六 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
七 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
八 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
九 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
十 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
十一 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
十二 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
十三 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
十四 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
十五 契約に関する紛争の解決方法
十六 その他国土交通省令で定める事項
(以下省略)

建設工事の請負契約の当事者である元請負人と下請負人は、上記の第1号から第16号の事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならないこととされています。また、契約書面の交付については、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として、下請工事の着工前に行わなければなりません。

ポイントをまとめると次のとおりです。

①必要事項を記載した書面で行うこと
②署名又は記名押印をすること
③相互に交付すること
④着工前に行うこと

つまり、書面での請負契約を締結する前に、着工することは認められておらず、内容が固まらない段階で発行される内示書に基づいて着工することは、建設業法違反ということになります。

なお、建設工事の請負契約の締結に際して、契約内容を書面に記載し相互に交付することを求めているのは、請負契約の明確性及び正確性を担保して、紛争の発生を防止することが目的です。

追加工事等の内容が直ちに確定できない場合は、着工後の契約変更でも認められる

さきほど説明したとおり、原則として着工前に契約書面の交付をしなければなりません。しかしながら、追加工事等の場合は着工後の契約変更でも認められるケースがあります。

工事状況により追加工事等の全体数量等の内容がその着工前の時点では確定できない等の理由で、追加工事等の依頼に際して、その都度追加・変更契約を締結することが不合理な場合は、元請負人は、次の事項を記載した書面を追加工事等の着工前に下請負人と取り交わすことで、契約変更等の手続については、追加工事等の全体数量等の内容が確定した時点で行うことができます。

①下請負人に追加工事等として施工を依頼する工事の具体的な作業内容
②当該追加工事等が契約変更の対象となること及び契約変更等を行う時期
③追加工事等に係る契約単価の額

なお、契約変更等の手続は、内容が確定した時点で遅滞なく行わなければなりません。

まとめ

  • 一般的な内示書は建設業法違反である
  • 建設工事の請負契約には次の要件がある
    ①必要事項を記載した書面で行うこと
    ②署名又は記名押印をすること
    ③相互に交付すること
    ④着工前に行うこと
  • 追加工事等の場合は次の事項を記載した書面を取り交わすことで、着工後の契約変更でも認められる
    ①下請負人に追加工事等として施工を依頼する工事の具体的な作業内容
    ②当該追加工事等が契約変更の対象となること及び契約変更等を行う時期
    ③追加工事等に係る契約単価の額

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