建設業法における書類の保存期間と書類の種類や管理方法について解説!
行政書士
片岡詩織
行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可をはじめとする各種許認可手続きを担当し、担当件数は年間200件を超える。建設業者向けの研修や建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可のデューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務にも携わっている。
建設工事は工事を施工・引き渡しをして完了ではなく、工事に関する帳簿を作成したり、書類を保管する義務が建設業法において定められています。
今回は、建設業法上、建設業者が保管しなければならない書類の種類や期間について解説をしていきます。
建設業者は書類を保管する義務がある
建設業者は、建設業法において帳簿の作成や書類、図書の保管義務が定められています。
帳簿の作成や必要な図書を保管していなかった場合には、建設業法違反として、10万円以下の過料が科せられる可能性もあります。
建設業法第55条
次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の過料に処する。
五 第四十条の三の規定に違反して、帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは帳簿に虚偽の記載をし、又は帳簿若しくは図書を保存しなかつた者
建設業法で保存期間が定められている書類の種類とそれぞれの保存期間
帳簿・添付書類の保管期間は5年間
建設業法において、すべての建設業者は帳簿を作成し、添付書類を保管する義務があり、5年間の保存が義務付けられています。(ただし、発注者と締結した新築住宅を新築する建設工事に係るものは10年間の保存が必要です)
帳簿というと会計帳簿を思う方が多いと思いますが、建設業法で作成が求められる帳簿は会計帳簿とは別のもので、建設工事に関する情報を記載した帳簿のことを言います。同じものと勘違いされている建設業者が多く、立入検査などで初めて別の物と認識する建設業者もいます。
帳簿に記載しなければならない事項は以下の通りです。
(出典:関東地方整備局 建設工事の適正な施工を確保するための建設業法 (令和5.1版))
帳簿を作成し、保存するだけでは不十分です。以下の書類を帳簿に添付して保存しなければなりません。
■帳簿の添付書類
1.契約書又はその写し
2.特定建設業の許可を受けている者が注文者(元請工事に限らない。)となって、一般建設業者(資本金が4,000万円以上の法人企業を除く。)
に建設工事を下請負した場合には、下請代金の支払済額、支払った年月日及び支払手段を証明する書類(領収書等)又はその写し
3.建設業者が施工体制台帳を作成したときは(元請工事に限る。)、工事現場に据え付ける施工体制台帳の以下の部分。
[工事完了後に施工体制台帳から必要な部分のみを抜粋します。]
①当該工事に関し、実際に工事現場に置いた監理技術者の氏名と、その者が有する監理技術者資格
②監理技術者以外に専門技術者を置いたときは、その者の氏名と、その者が管理を担当した建設工事の内容、有する主任技術者資格
③下請負人(末端までの全業者を指しています。以下同じ。)の商号・名称、許可番号
④下請負人に請け負わせた建設工事の内容、工期
⑤下請業者が実際に工事現場に置いた主任技術者の氏名と、その者の主任技術者資格
⑥下請負人が主任技術者以外に専門技術者を置いたときは、その者の氏名と、その者が管理を担当した建設工事の内容、有する主任技術者資格
※各号に掲げる書類は、スキャナによる読み取り等による電磁記録による保存も可能
(参考:関東地方整備局 建設工事の適正な施工を確保するための建設業法 (令和5.1版))
営業に関する図書の保管期間は10年間
営業に関する図書とは、完成図や発注者との打合せ記録、施工体系図のことをいい、建設工事の目的物を引き渡したときから10年間保存しなければなりません。営業に関する図書の保存義務があるのは、発注者から直接建設工事を請け負った建設業者、つまり元請業者です。
■営業に関する図書
①完成図
②発注者との打合せ記録
③施工体系図
※施工体制台帳の作成対象工事以外の工事での元請業者は、上記①と②を保存
※各号に掲げる書類は、電磁記録による保存も可能
(参考:関東地方整備局 建設工事の適正な施工を確保するための建設業法 (令和5.1版))
書類の管理方法について
帳簿・帳簿の添付書類・営業に関する図書は、その工事を請け負った営業所ごとに保存をしなければなりません。「本社でまとめて保管する」「工事エリアごとに支店でまとめて保管する」等は建設業法違反となりますので注意が必要です。
なお帳簿・帳簿の添付書類・営業に関する図書は、紙媒体での保存に加え、電子データでの保存やスキャンデータでの保存でも問題ありませんので、管理のしやすい方法で保管していただくことをお勧めします。
まとめ
建設業法で作成・保管が義務付けられている書類は、法令遵守だけでなく、許可行政庁による立入検査の際の資料や、会社・従業員の工事実績を証明する書類として必要になることもあります。営業所ごとに適切に書類の作成・保管が出来ているのか確認をしておくことが大切です。