工事請負契約時に注文請書は必要なのか?建設業法をもとに解説
行政書士
寺嶋紫乃
行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。
注文請書の作成は義務ではない?
民法では、当事者の一方からなされる意思表示の「申込み」と他方で申し込みの後になされる意思表示の「承諾」との合致によって契約は成立します。つまり、口約束だけでも契約は成立します。
しかし、建設業法では原則として契約は書面の相互交付により行うと定められています。
つまり工事の請負契約の場合は、口約束で契約をしても契約は成立しますが、この行為は建設業法違反となるということです。
建設業を営む者は建設業法を遵守しなければならないため、工事の請負契約を締結する際には書面で行わなければなりません。
また、建設業法上認められている契約方法は、
①請負契約書
②基本契約書+注文書・注文請書の交換
③注文書・注文請書の交換
いずれかとなります。注文書とは「申込み」に該当し、注文請書は「承諾」に該当すると覚えていただければ、注文書と注文請書はセットでいずれも契約に必要であることが理解できます。そのため②や③の方法で工事の請負契約を締結する場合には、必ず注文書と注文請書を作成しそれらを交換しなければなりません。
少額工事でも注文請書の作成は義務である
お客様から「〇万円の数時間で終わるような小さい工事は契約書がなくてもいいよね?」という質問をよくいただきますが、この答えはNOです。契約書は建設工事の規模や金額を問わず、作成する義務があります。
ここでいう契約書には、注文書・注文請書も含まれています。どれだけ小さな建設工事であっても、契約書や注文書・注文請書も必ず作成しなければなりません。
発注者へ提出する必要があり、民間工事においては発注者から施工体制台帳の閲覧の請求があったときには閲覧に供せられるようにしておく必要があります。
作成した施工体制台帳は、引き渡した後の工事完了後も5年間保存する義務がありますので、完了後すぐ破棄しないようにしてください。
まとめ
建設業法では契約の方法が定められています。契約書や注文書・注文請書の作成や交付が手間だと感じるかもしれませんが、建設業法違反とならないようにするためにも、契約書等は必ず作成をするようにしましょう。
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