建設業法令遵守ブログ

【建設業法】関連コラム

建設業法における契約書のルールとは?

寺嶋紫乃

行政書士

寺嶋紫乃

行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。

建設工事を受発注するとき契約書は必要なのか

建設工事の「契約」については、建設業法第19条に契約方法が定められています。

「建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。」

と規定されています。
民法では、契約の当事者間に「申込み」と「承諾」の2つの意思表示があれば契約は成立しますが、建設業法では意思表示だけでなく契約書面の作成が必要とされています。

契約書に記載しなければいけない事項とは

建設工事を受注し契約書を作成する際、建設業法では契約書面に記載すべき事項を下表のとおり定めています。項目は16項目※あり、すべての項目を網羅した契約書でなければなりません。
※建設業法では16項目定められていますが、現在⑯に該当する事項が無いため、実際には15項目となります。
① 工事内容
② 請負代金の額
③ ⼯事着⼿の時期及び⼯事完成の時期
④ 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
⑤ 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
⑥ 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
⑦ 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
⑧ 価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
⑨ 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
⑩ 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
⑪ 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
⑫ 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
⑬ 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
⑭ 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
⑮ 契約に関する紛争の解決方法
⑯ その他国土交通省令で定める事項
④、⑤、⑬の項目は、いずれも「定めをするときは」とあります。つまり、定めをしない場合には契約書への記載を省略しても問題ありません。同様に、資材の提供や機械の貸与が無い場合には⑩の項目も、記載が不要となります。
それ以外の項目については省略をすることはできないため、必ず契約書には記載をしなければなりません。
具体的な記載方法が分からない場合には、中央建設業審議会が作成している建設工事標準請負契約約款を参考に作成ください。

契約書はコピーでは不可なのか

弊社がいただく質問で多いのが、「契約書は1通作成し、相手方にはコピーを渡しても良いか。」というものです。契約書に添付する印紙代が高くなるため、とのことですがそれは建設業法に違反します。
先に見た建設業法第19条で、「署名又は記名押印をして相互に交付」と定められています。つまり、直筆の署名がある契約書を2通作成するか、それぞれ朱肉で押印した契約書を2通作成するか、いずれかの方法しか認められていません。契約当事者双方が契約書の原本を持っている状態にしなければならないため、契約書のコピーは認められません。

まとめ

建設工事の請負契約は、後日の紛争等のトラブルを防止するためであり、かつ元請業者や上位下請業者が有利になるような片務的な契約になることを防ぐために作成をします。建設業法に定められた契約書のルールをしっかりと理解し、契約書を作成するようにしましょう。

 

[]