建設業法第20条の見積期間とは?期間の数え方についても解説
行政書士
寺嶋紫乃
行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。
建設業法で定められた見積期間とは
「見積り」については、建設業法第20条に見積を依頼する側のルールと見積りを作成する側のルールが定められています。特に、同条第4項では、
「建設工事の注文者は、請負契約の方法が随意契約による場合にあつては契約を締結するまでに、(中略)建設業者が当該建設工事の見積りをするために必要な政令で定める一定の期間を設けなければならない。」
と、見積りを作成する期間について規定されています。
また、建設業法施行令第6条では、次のとおり見積期間が設定されています。
下請工事の予定価格の金額 | 見積期間 |
500万円に満たない工事 | 1日以上 |
500万円以上5,000万円にみたない工事 | 10日以上 |
5,000万円以上の工事 | 15日以上 |
なぜ見積期間が定められているのか
下請工事の予定金額によって見積期間が定められていますが、なぜこのような定めがあるのでしょうか。それは、適切な見積り作成ができるようにするためです。
元請負人から「できるだけ早く」と見積り作成を急かされることで、下請負人が見積落し等の問題を生することがあります。
見積条件を確認・検討する期間を十分確保できれば、そのような問題が生ずることも無くなり、下請負人は適切な見積りをすることができます。
見積期間の数え方
見積期間は、下請負人へ契約内容を提示した時から契約締結までの間に設けなければなりません。
また、見積期間はそれぞれ「中」1日以上、「中」10日以上、「中」15日以上設ける必要があります。
「中」●日とは、契約内容を提示した日と契約締結日を除いて期間を設けなければなりません。
例えば、12月1日に契約内容の提示をしたとします。この場合、下請工事の予定金額が500万円にみたない工事であれば、12月3日以降に契約締結をしなければなりません。
下請工事の予定金額が500万円以上5,000万円にみたない工事であれば12月12日以降に、5,000万円以上の工事であれば12月17日以降に契約締結をしなければならないということになります。
見積期間に土日は含まれるのか
設けなければならない見積期間は、土日祝日を含めても構いません。
建設業法等の関連法令で、「平日のみ見積期間に数える」という規定は存在しないためです。
ただし、建設業界でも働き方改革の取組を行っており、週休2日制を導入する建設業者も増えています。
例えば、下請業者へ予定金額300万円の工事の見積りを金曜日に依頼した場合、中1日の見積期間を設けたとしても、日曜日を見積作成期限として設定することが可能となります。
そうすると週休2日制を取ると期限までに見積作成ができない可能性があるため、週休2日制を導入できないという建設業者が出てきます。
土日祝日を除かなければならないという規定はありませんが、週休2日制の導入等の働き方改革を進めるためにも、平日で見積期間の設定をしていただくことをおすすめします。
見積期間を短縮することができるのか
建設業法施行令第6条には、例外的に見積期間を5日以内に限り短縮できると規定されています。
ただし、短縮できるのは下請工事の予定価格が「500万円以上5,000万円にみたない工事」と「5,000万円以上の工事」だけです。
また、元請業者の都合で短縮できるわけではなく、やむをえない事情があるときに限定されています。
「やむをえない事情」の具体的な規定はありませんが、一般的には災害等により早急な復旧工事が必要な場合等が該当します。
ただし、やむをえない事情に該当するか否かの明確な基準は無いため、見積期間の短縮が必要になる場合には許可行政庁等に都度確認をするようにしてください。
見積期間の設定が不十分な場合は
明確な理由も無く見積期間が法定期間よりも短かった場合、もちろんその行為は建設業法に違反します。
建設業法違反ではありますが、監督処分や罰則の対象になっていません。しかし、指導等の対象になる可能性はありますので、十分な見積期間の設定をするようにしてください。
まとめ
見積期間について、建設業法には下請業者を守るため明確なルールがあります。このルールをしっかりと理解し、下請業者には適切な見積書を発行してもらえるようにしましょう。