発注代行業務・支払代行業務には建設業許可は必要か?
社員行政書士・東京事務所所長
大野裕次郎
建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。
当社にもよくご相談をいただく内容ですが、「発注代行・支払代行は建設業許可は必要か?」という内容について、国土交通省の法令適用事前確認手続照会及び回答事案に掲載されていますのでご紹介します。
事案の内容
※少し内容を加工して解説します。
A社:元請負人、発注・支払業務の委託者
B社:発注・支払業務の受託者
C社:下請負人
①A社は、B社に対し、建設工事に係る発注代行・支払代行業務を委託し、必要な代理権を付与する。
②B社は、C社を含む複数の建設業者から、建設工事に係る見積りを取得、精査し、発注内容についてA社の承諾を得た上、A社のために、建設工事の発注を代行する。
③B社は、C社との間において、A社のために、建設工事の請負契約書の作成及び交付を行う。建設工事の請負契約はA社・C社間に存続する。
④B社は、A社から請負代金相当額を受領する。
⑤B社は、C社に対し請負代金を支払う。
このようなケースで、B社には建設業許可が必要であるか?という照会内容となっています。
見解及び根拠
照会書を記載されている見解及び根拠は以下のとおりです。
Bの業務は、発注、支払等の代行であること、Bは発注内容についてAの承諾を得た上、発注を代行するものであり、発注に係る契約内容の決定権限はAに留保されていること、建設工事に係る請負契約は、A及びCの間に存在し、Bは、請負人又は発注者としての権利義務を負わないことなどから、A及びBの間の業務委託契約は、民法上の請負契約ではなく、かつ、建設工事の完成を目的として締結する契約でもないと解される。したがって、Bの業務は、「建設工事の完成を請け負う営業」(建設業法第2条第2項)には該当しないため、建設業法第3条第1項の適用はなく、Bが上記業務を遂行するにあたり、建設業の許可を受ける必要はない。(出典:法令適用事前確認手続(照会書)令和5年6月28日https://www.mlit.go.jp/appli/content/001619176.pdf)
つまり、B社の業務は建設業許可が必要とされる「建設工事の完成を請け負う営業」ではないため、建設業許可は必要ではない。ということです。
国土交通省の回答
国土交通省不動産・建設経済局建設業課長の回答は以下のとおりです。建設業許可に関する部分のみ抜粋しています。
1 回答
Bは、建設業法(昭和24年法律第100号。以下「法」という。)第3条第1項に基づく建設業の許可を受ける必要はない。
(中略)
2 当該事実と照会法令との関係に関する見解及び根拠
BはAを代理して建設工事の請負契約に係る発注代行及び支払代行業務のみを行う限りにおいて、法第3条1項に基づく建設業の許可を受ける必要はない。
(以下省略)
(出典:法令適用事前確認手続 回答書令和5年7月6日https://www.mlit.go.jp/appli/content/001619177.pdf)
国土交通省の回答としても、B社は、建設工事の請負契約に係る発注代行及び支払代行業務のみを行う限りにおいて、建設業許可を受ける必要はないとのことでした。
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