建設業法令遵守ブログ

【建設業法】用語解説

国土交通省の立入検査とは?

大野裕次郎

社員行政書士・東京事務所所長

大野裕次郎

建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。

国土交通省の立入検査、建設業者様であれば一度は聞いたことがあるかもしれません。当社には立入検査に関するご相談も多くいただいております。今回は、立入検査について「建設業法のツボとコツがゼッタイにわかる本[第2版]」(秀和システム)の第7章監督処分と罰則について「3 建設業許可を取得すると、定期的に立入検査があるの?」の内容を参考に解説したいと思います。

立入検査とは?

立入検査とは、国土交通省の職員や都道府県の職員により行われる立入検査のことです。建設業法に規定があり、元請負人と下請負人との対応な関係の構築及び公正かつ透明な取引の実現等が主な目的として行われています。

(報告及び検査)
第三十一条 国土交通大臣は、建設業を営むすべての者に対して、都道府県知事は、当該都道府県の区域内で建設業を営む者に対して、特に必要があると認めるときは、その業務、財産若しくは工事施工の状況につき、必要な報告を徴し、又は当該職員をして営業所その他営業に関係のある場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 第二十六条の二十一第二項及び第三項の規定は、前項の規定による立入検査について準用する。

立入検査の対象は「建設業を営む者」となっており、建設業許可業者に限られておらず、無許可業者であっても対象となります。しかしながら、実際は次のような建設業者(建設業許可業者)を中心に実施されています。

・新規に建設業許可を取得した建設業者
・過去に監督処分又は行政指導を受けた建設業者
・「駆け込みホットライン」等の各種相談窓口に多く通報が寄せられる建設業者
・下請取引等実態調査において未回答又は不適正回答の多い建設業者
・不正行為等を繰り返し行っているおそれのある建設業者

立入検査の頻度

立入検査の頻度については、明確に定められているわけではありません。そのため、定期的に実施されるものでもありません。建設業法第31条第1項に「特に必要があると認めるときは」と記載されているように、許可行政庁が必要と認めるタイミングで実施されているような状況です。

国土交通省では毎年度の立入検査等の実施件数を公表しています。「令和4年度「建設業法令遵守推進本部」の活動結果及び令和5年度の活動方針」の情報について別の記事で紹介していますのでぜひご覧ください。
»令和4年度の国土交通省の立入検査等の件数は?

最近公表された情報では、令和4年度の立入検査等の実施件数は884件でした。ちなみに令和3年度858件、令和2年度451件、令和元年度613件、平成30年度739件です。令和5年3月現在の大臣許可業者数は10,422業者ですので、10年に一度くらいは立入検査等が行われることになると考えられます。

立入検査で何がチェックされる?

立入検査は、元請負人と下請負人との対等な関係の構築及び公正かつ透明な取引の実現等が目的として行われていますので、主に契約関係書類がチェックされます。当社のお客様が対象として実施された立入検査でチェックされた書類は以下のとおりです。

【立入検査でチェックされた書類】
①発注者との契約関係書類
・契約書(追加・変更分を含む)
・検査結果通知書等(完成日、検査日及び引渡日が確認できる書類)
・工程表
・施工体系図
・施工体制台帳(添付書類、再下請負通知書を含む)
・配置技術者に必要な資格を有することを証する書類(監理技術者資格者証、合格証等)
・発注者からの入金が確認できる会計帳簿
②下請負人との契約関係書類
・見積関係書類(見積依頼書、見積書等)
・契約書(注文書・請書の場合を含む。追加・変更分を含む。)
・検査結果通知書等(完成日、検査日及び引渡日が確認できる書類)
・下請負人からの請求書及び下請代金の支払日、支払金額等が確認できる会計帳簿

上記のとおり、その作成辞退が建設業法で義務付けられている書類であったり、建設業法の規定が守られているかを確認できる書類がチェックされることになります。建設業法の規定が守られているかどうかの検査ですので、日頃から建設業法を遵守されている建設業者様であれば全く恐れる必要はありません。少しでも不安のある方はまず何ができていないかをチェックしたうえで対策をしていきましょう。