建設業法令遵守ブログ

【建設業法】関連コラム

【相談事例】監督員や現場代理人と主任技術者・監理技術者は兼務できるか?

大野裕次郎

社員行政書士・東京事務所所長

大野裕次郎

建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。

建設工事現場にはさまざまな役割の人が登場します。「監督員」「現場代理人」「主任技術者・監理技術者」などです。それぞれ兼務は可能なのでしょうか?
「建設業法のツボとコツがゼッタイにわかる本[第2版]」(秀和システム)の第4章技術者から「11 監督員又は現場代理人と主任技術者・監理技術者は兼務できるの?」の内容を参考に解説したいと思います。

監督員とは?

監督員とは、注文者の代理人として、次のような職務を行うために工事現場に設置される者です。

①契約の履行についての受注者又は受注者の現場代理人に対する指示、承諾又は協議
②設計図書に基づく工事の施工のための詳細図等の作成及び交付又は受注者が作成した詳細図等の承諾
③設計図書に基づく工程の管理、立会い、工事の施工状況の検査又は工事材料の試験若しくは検査(確認を含む)

監督員に関しては、建設業法に規定はありません。当事者間の契約において設置が定められるものです。

現場代理人とは?

現場代理人とは、契約の履行に関し、工事現場の運営、取締りを行うほか、請負代金の変更、請負代金の請求及び受領等を行うために工事現場に設置される受注者の代理人です。現場代理人についても、建設業法に規定はありません。当事者間の契約において設置が定められるものです。

主任技術者・監理技術者とは?

建設工事の適正な施工を確保するため、工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる者として、建設業法において設置が定められているものです。
建設工事を施工する場合には、工事現場における工事の施工の技術上の管理をつかさどる者として、主任技術者を置かなければなりません。また、発注者から直接請け負った建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額の合計が4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上となる場合には、特定建設業の許可が必要になるとともに、主任技術者に代えて監理技術者を置かなければなりません。主任技術者又は監理技術者となるためには、一定の国家資格や実務経験を有していることが必要で、特に指定建設業(土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業及び造園工事業)に係る建設工事の監理技術者は、一級施工管理技士等の国家資格者又は建設業法第15条第2号ハの規定に基づき国土交通大臣が認定した者(国土交通大臣認定者」)に限られています。

兼務はできるか?

監督員、現場代理人、主任技術者・監理技術者の設置根拠や役割についてまとめると次の表のとおりとなります。

設置根拠 設置義務 資格要件 役割
監督員 契約 なし なし 請負契約の履行に関し、注文者の代理人として、設計図書に伴って工事が施工されているか否かを監督する。現場代理人に相対する者。
現場代理人 契約 なし※公共工事は原則あり なし 請負契約の履行に関し、請け負った建設業者の代理人として、工事現場の運営、取り締まりを行うほか、請負金額の変更、請負代金の請求・受領等の一切の権限と責任を有する。
主任技術者・監理技術者 建設業法 あり あり 建設工事の施工にあたり、施工内容、工程、技術的事項、契約書及び設計図書の内容を把握したうえで、その施工計画を作成し、工事全体の工程の把握、工程変更への適切な対応等具体的な工事の工程管理、品質確保の体制整備、検査及び試験の実施等及び工事目的物、工事仮設物、工事用資材等の品質管理を行うとともに、当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督を行う。

建設業法に設置根拠があるのは、主任技術者・監理技術者のみです。主任技術者・監理技術者については、建設業法上、監督員や現場代理人との兼務を禁止するような規定はありません。また、監督員、現場代理人については、注文者・受注者間の契約において設置が定められるもので、建設業法には設置に関する規定がないため、当然兼務を禁止するような規定もありません。そのため、監督員と注文者側の主任技術者・監理技術者が同一人物であったり、現場代理人と受注者側の主任技術者・監理技術者が同一人物であるということは問題ありません。

なお、公共工事標準請負契約約款では、「現場代理人、監理技術者等(監理技術者、監理技術者補佐又は主任技術者をいう。以下同じ。)及び専門技術者は、これを兼ねることができる。」と記載されています。