建設業法令遵守ブログ

【建設業法】関連コラム

【相談事例】主任技術者・監理技術者はリモートでその職務を行うことができるか

大野裕次郎

社員行政書士・東京事務所所長

大野裕次郎

建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。

お客様から「現地の担当者とウエラブルカメラを通じて画像共有したり応答することにより、主任技術者・監理技術者の職務を行うことができるか」というご質問をいただきました。つまり、リモートで主任技術者・監理技術者の職務を行うことができるかというご質問です。これに関して検討してみたいと思います。

主任技術者・監理技術者の職務とは

まず主任技術者・監理技術者の職務について確認したいと思います。

主任技術者・監理技術者の職務は、工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどることです。建設工事の施工に当たり、施工内容、工程、技術的事項、契約書及び設計図書の内容を把握したうえで、その施工計画を作成し、工事全体の工程の把握、工程変更への適切な対応等具体的な工事の工程管理、品質確保の体制整備、検査及び試験の実施等及び工事目的物、工事仮設物、工事用資材等の品質管理を行うとともに、建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督を行うことが求められています。また、特例監理技術者は、監理技術者としての職務を適正に実施できるよう、監理技術者補佐を適切に指導することが求められています。

国土交通省の「監理技術者制度運用マニュアル」には下表の記載があります。

表:主任技術者及び監理技術者の職務

(出典:国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル」https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001580029.pdf)

上表を踏まえ、主任技術者・監理技術者は職務を誠実に行わなければなりません。

テレワークは認められるか?

同一の監理技術者等が管理できる範囲の見直しで兼任できる範囲が増えたことにより、監理技術者等が1つの現場に対応可能な時間が限られ、現場に不在の時間が増えることとなりました。そのような状況で適正な施工を確保するためには、ICTや連絡要員を活用した遠隔での施工管理と現場における確認・立会等を組み合わせることが必要です。

国土交通省の「監理技術者制度運用マニュアル」では、「上記の職務(主任技術者及び監理技術者の職務)は、業務内容及び業務環境に応じて、テレワークにより行う場合も含まれる。」と定められています。つまり、テレワークで主任技術者・監理技術者の職務を行うことも認められるということですね。

具体的にはどのように行うか?

テレワークで主任技術者・監理技術者の職務を行うには具体的にどのようにすればよいか、国土交通省の「適正な施工確保のための技術者制度検討会(第2期)」においてとりまとめられた「技術者制度の見直し方針」(令和4年5月31日)で示された「ICT、連絡要員を活用した適正な施工管理」が参考になりますのでご紹介します。


(出典:国土交通省適正な施工確保のための技術者制度検討会(第2期)「技術者制度の見直し方針」https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001483768.pdf)

施工計画の作成
    • パソコン・メール等を使用した計画書等の作成
    • メールやクラウドストレージ等を活用した要領書等の共有
    • パソコン・メール等を使用した計画書等の修正
工程管理
    • スマートフォンやウェアラブルカメラ等と連絡要員を活用した動画や静止画による進捗確認、CCUSによる現場施工体制の確認
    • オンラインシステムを活用した工程調整
    • WEB会議による工程会議等への参加
品質管理
    • スマートフォンやウェアラブルカメラ等と連絡要員を活用した動画や静止画での立会確認
技術的指導
    • 技術者配置のスマートフォン等での確認
    • WEB会議による打ち合わせ等による技術的指導
その他技術上の管理
    • パソコンとソフトを使用した計画の策定とメール等を活用した計画の共有
    • スマートフォンやウェアラブルカメラ等と連絡要員を活用した動画や静止画の確認

まとめ

主任技術者・監理技術者の職務はリモートで行うことも可能です。ただし、リモートのみでの確認や状況把握が難しい場合もあるため、状況に応じて現場で確認・立会を行うことも必要です。