賃貸住宅管理業者等への全国一斉立入検査結果(令和4年度)
社員行政書士・東京事務所所長
大野裕次郎
建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。
国土交通省は、令和5年1~2月にかけ、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の施行後初めて全国97社に対して立入検査を実施し、その結果を公表しました。
国土交通省の「【詳細版】賃貸住宅管理業者等への全国一斉立入検査結果(令和4年度)」から抜粋して、立入検査の結果をご紹介します。
目的
賃貸住宅管理事業者等の事務所等へ立ち入り、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律に係る法令の遵守状況について検査を行い、必要に応じて是正指導等を実施することで、賃貸住宅管理業等の適正化を推進することを目的としています。
調査結果
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律が令和3年6月に施行され、賃貸住宅管理業者の登録制度が創設されました。令和4年度末(令和5年3月末)現在では、賃貸住宅管理業者の登録数は8,943社となっています。令和4年度の全国一斉立入検査では、8,943社のうち97社に対して立入検査が実施され、59社に対して是正指導が行われました。
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の条ごとの指導数
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- 管理受託契約重要事項説明義務違反(第13条関係) 17件
⇒法定記載事項の記載不備など - 管理受託契約締結時の書面交付義務違反(第14条関係) 28件
⇒法定記載事項の記載不備など - 財産の分別管理義務違反(第16条関係) 2件
⇒一部口座について財産の混在など - 従業者証明書の携帯義務違反(第17条関係) 15件
⇒従業員証明書未作成 - 帳簿の備付け義務違反(第18条関係)11件
⇒事業年度ごとの分類をしていない、一部未作成など - 標識の掲示義務違反(第19条関係) 4件
⇒指定様式の標識未使用など - 委託者への定期報告義務違反(第20条関係) 2件
⇒定期報告書面に報告対象期間が未記載など - 誇大広告の禁止義務違反(第28条関係) 4件
⇒借地借家法に関する事項が未記載など - 特定賃貸借契約重要事項説明義務違反(第30条) 2件
⇒法定記載事項の記載不備など - 特定賃貸借契約締結時の書面交付義務違反(第31条) 10件
⇒法定記載事項の記載不備など - 書類の備え置き及び閲覧義務違反(第32条) 18件
⇒業務状況調書未作成、業務状況調書を電子のみ(書面化できない状態)で保存など
- 管理受託契約重要事項説明義務違反(第13条関係) 17件
なお、是正指導が行われた59社すべてにおいて是正がなされたことが確認されているようです。
是正指導事項別の傾向及び今後の対応策
国土交通省では、今後も賃貸住宅管理業者等への立入検査等による法令遵守の指導が行われる方針です。また、悪質な管理業法違反に対しては、法に基づき厳正かつ適正に対処するとのことです。
下記のような資料を参考にして、法令遵守に努めましょう。
・賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方
・賃貸住宅管理業法 FAQ 集
・賃貸住宅管理業法制度概要ハンドブック
・サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン
・管理受託契約及び特定賃貸借契約の重要事項説明書記載例
・賃貸住宅標準管理受託契約書及び特定賃貸借標準契約書
・賃貸住宅管理業法ポータルサイト