令和5年1月10日スタート!建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)
社員行政書士・東京事務所所長
大野裕次郎
建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。
建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP:Japan Construction Industry electronic application Portal)が、令和5年1月10日から運用開始されることになりました。建設業許可や経営事項審査の電子申請受付が開始されることとなります。
電子申請システムの概要
電子申請システムは、次の目的から導入されることになります。
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- 建設業の働き方改革推進の一環として、申請者・許可行政庁の事務負担を軽減し、生産性の向上を図る。
- 新型コロナウイルス感染症の拡大等を踏まえ、非対面での申請手続を行うことができる環境を整備する。
■電子申請システムの概要
(出典:国土交通省「建設業許可・経営事項審査電子申請システム」https://www1.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001519393.pdf)
「事務負担を軽減」とのことですが、申請者にとっては、紙申請の場合と比べて、どういった点が負担軽減になるのでしょうか。私が電子申請により負担軽減されると考えている点は以下の点です。
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- 窓口に行く、もしくは郵送をする手間がなくなる
- 形式的なチェックをしてもらうことができる
- バックヤード連携により、納税証明書や登記簿謄本を取得する手間がなくなる
- 許可通知書、結果通知書を電子送付で受領できる
特に3の「バックヤード連携」は、申請者にとってかなり負担が経験されると考えています。納税証明書や登記事項証明書の他にも、技術検定合格証明書や経営状況分析結果通知書、監理技術者資格者証・監理技術者講習修了証、建設業経理士登録証・建設業経理士CPD講習修了証がバックヤード連携される予定です。申請時に技術者などの従業員から合格証明書等を借りて、コピーして申請書に添付するなどの手間がなくなります。
電子化の対象となる手続きの範囲
中には作成できない書類もあるのですが、建設業許可・経営事項審査の申請手続きは全て電子システムで行うことができるようになります。
建設業許可関係
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- 許可申請(新規許可、許可換え、般特許可、業種追加、更新)
- 変更等の届出(事業者の基本情報、経営業務管理責任者、営業所の専任技術者、営業所の代表者等)
- 廃業等の届出
- 決算報告
- 許可通知書等の電子送付
経営事項審査関係
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- 経営事項審査申請(経営規模等評価、総合評定値)
- 再審査申請(経営規模等評価、総合評定値)
- 結果通知書等の電子送付
国土交通省の説明動画
国土交通省は申請者向けに建設業許可・経営事項審査電子申請システムの解説動画を出しています。こちらをご覧いただくとご理解いただけると思いますので、ご紹介をさせていただきます。
申請者向け【基本編】
申請者向け【操作編】
電子申請だから自社でできる?行政書士に依頼しなくてもよい?
紙申請の場合は、「面倒だから」「時間がないから」といった理由で行政書士に手続きをお願いしている建設業者様も多いかと思います。確かに電子申請化による事務負担の軽減により「面倒」「時間がない」といった不満は解消されるかもしれません。しかしながら、建設業許可の要件が緩和されるわけではありませんので、建設業許可の申請手続きが難しいことには変わりがありません。令和5年1月からの電子申請化によって自社対応に切り替えるというのはまだ少し難しいかもしれません。
ただ、行政書士法人名南経営としては、建設業許可の手続きを適正に行うということは建設業法令遵守への第一歩だと考えています。コンプライアンスに取り組む建設業者様は、建設業許可のことも理解する必要があると考えています。行政書士に依頼すると、どうしても建設業許可の制度・要件、手続きの理解が疎かになりがちです。コンプライアンスを意識されるのであれば、この電子申請化をきっかけに、自社対応を検討してみるのも良いかもしれません。