国土交通省「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&Aについて」
行政書士
寺嶋紫乃
行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。
今回は通達ではありませんが、最近よく耳にする「インボイス制度」について、建設業法の観点から取り上げてみたいと思います。
ただ、インボイス制度については税理士さん等の専門となりますので、制度の詳細や手続き等については顧問税理士等にご相談をお願い致します。
1.インボイスとは(概要)
インボイスとは、簡単に言えば「売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるもの」です。レシートに限らず、請求書や納品書等、使用する書類の名称は問いません。
売手がインボイスを発行し、買手(取引相手)に交付します。買手が求めた時に発行をすればよいことになっています。そして、インボイスの交付を受けた買手は、交付されたインボイスを適正に保存することで、仕入税額控除を適用することができるという流れになっています。(これがインボイス制度の概要です。)
インボイス制度は令和5年10月1日から開始されます。この制度を利用するためには、事前に事業者登録をして、登録番号が付与されている必要があるため、早めに準備している事業者が多いという事です。
2.建設業法との関連
国土交通省は、インボイス制度開始後に懸念される建設業法違反の事例を紹介していますので見ておきたいと思います。
①請負金額総額110万円で建設工事の請負契約を締結
②工事完了後に受け取った請求書にインボイス発行事業者の登録番号が無い
③下請負人Aは免税事業者だと判明
④元請負人は下請負人Aが免税事業者であることを理由に、消費税額10万円を払わないこととした
⑤結果、下請負人Aは原価割れしてしまった
建設業法違反となり得るのは、④の行動です。
元請負人が、取引上の地位を不当に利用し、一方的に消費税相当額を支払わないこととしています。このような一方的な減額によって下請負人Aは原価割れをする、つまり工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額となります。
このような元請負人の行為は建設業法第19条の3の規定に違反し建設業法違反に該当する可能性があります。
(不当に低い請負代金の禁止)
第十九条の三 注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。
インボイス制度は建設業だけの制度ではなく、すべての業種が対象となる制度です。インボイス制度の運用までに、制度の概要を十分理解し準備を進め、それと同時に業法違反が生じないように運用の仕方を確認しておく必要があると考えます。
インボイス制度について →→→ 国税庁のHPや国土交通省のHPをご確認ください。