建設業法令遵守ブログ

【建設業法】用語解説

建設業許可の手引き等の「技術士資格」の見方を解説!

大野裕次郎

社員行政書士・東京事務所所長

大野裕次郎

建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。

先日、弊社主催のセミナーにご登壇いただいたコニカミノルタプラネタリウム株式会社の技術士(機械部門)の野方美歩様に、技術士に関していろいろと教えていただきましたので、ブログの記事にしたいと思います。こちらを読んで技術者資格に関する知識を深めていただければ幸いです。

建設業許可に携わっていらっしゃる方は、読まれる機会が多いと思いますが、各許可行政庁の建設業許可の手引きなどを見ると、専任技術者(または主任技術者、監理技術者)として認められる資格として、次のような一覧表が掲載されていることがあります。

▼「技術者資格免許及び資格コード」

(出典:愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)」https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/413693.pdf)

例えば、この中で、「機械器具設置工事」の特定建設業許可の専任技術者として認められる技術士として、「45 機械・総合技術監理(機械)」「46 機械「熱・動力エネルギー機器」又は「流体機器」・総合技術監理(機械「熱・エネルギー機器」又は「流体機器」)」という記載があります。

これが何を表しているかご存知でしょうか?
私は、技術士であれば専任技術者として認められる、ということは分かっていましたが、正直なところ、建設業許可に携わる者として恥ずかしながら、技術士資格がどういった仕組みになっているかイマイチよくわかっていませんでした。野方美歩様のお話しを伺って、技術士試験について良く理解することができましたので解説いたします。

技術士試験について

手引き等の一覧表に記載されている資格の見方を解説する前に、まずは技術士試験について簡単に解説をさせていただきます。

技術士試験は、技術士第一次試験、技術士第二次試験に分けて、21ある技術部門ごとに実施されます。第一次試験と第二次試験をクリアし、登録をした人が、技術士になることが出来ます。(第一次試験をクリアした後は、第二次試験までに「技術士補」や「修習技術者」として実務経験を積む必要があります。)

1.機械部門 2.船舶・海洋部門 3.航空・宇宙部門
4.電気電子部門 5.化学部門 6.繊維部門
7.金属部門 8.資源工学部門 9.建設部門
10.上下水道部門 11.衛生工学部門 12.農業部門
13.森林部門 14.水産部門 15.経営工学部門
16.情報工学部門 17.応用理学部門 18.生物工学部門
19.環境部門 20.原子力・放射線部門 21.総合技術監理部門
(第二次試験のみ実施)

第一次試験の科目は、①基礎科目・②適正科目・③専門科目の3つに分かれます。
①基礎科目・②適正科目は受験者全員が共通のものを受験することになりますが③専門科目は、上記の「1.機械部門」~「20.原子力・放射線部門」の中から1部門を選択して受験することになります。

そして第二次試験は、選択した部門ごと(A.機械部門~原子力・放射線部門までの20部門とB.総合技術監理部門)で内容が異なりますが、いずれについても①必須科目と②選択科目(選択科目についての専門知識及び応用能力に関するもの等)について受験をすることになります。選択科目は技術部門ごとに異なります。詳しくは、公益社団法人日本技術士会のHP「技術士第二次試験の科目表」に掲載されています。

なお、第二次試験の「B.総合技術監理部門」に関して、機械部門~原子力・放射線部門の20部門のいずれかについて第二次試験まで合格した人でなければ、総合技術管理部門のみ合格するということは出来ません(他の部門との併願受験が可能ですが、他の部門が不合格となった場合は、総合技術監理部門も不合格となるため)。総合技術管理部門は、他の20部門の上位資格的な位置付けだと思っていただくと分かりやすいと思います。

ここまでで説明した、第一次試験の専門科目で選択する「部門」と第二次試験で部門ごとに選択する「選択科目」が、建設業の技術者(専任技術者、主任技術者・監理技術者)にも関わってくることになります。ここから、建設業許可の手引きに書かれている資格の見方を解説します。

建設業許可の手引き等の「技術士資格」の見方

「機械器具設置工事」の特定建設業許可の専任技術者として認められる技術士として、「45 機械・総合技術監理(機械)」「46 機械「熱・動力エネルギー機器」又は「流体機器」・総合技術監理(機械「熱・エネルギー機器」又は「流体機器」)」があります。これらが何を意味しているのか解説します。

「45 機械・総合技術監理(機械)」について

「45 機械・総合技術監理(機械)」は、機械器具設置工事の専任技術者や主任技術者・監理技術者として認められる資格です。記載の仕方から、1つの資格であるように思えますが、実は次の2つの資格を意味しています。

1.「機械」
 → 技術士(機械部門)
2.「総合技術監理(機械)」
 → 技術士(機械部門)をクリアした技術士(総合技術監理部門)

「1.技術士(機械部門)」は、第一次試験の専門科目で機械部門を選択し、第二次試験まで合格して登録した技術士、という意味になります。そして、「2.技術士(機械部門)をクリアした技術士(総合技術監理部門)」は、「1.技術士(機械部門)」の要件を満たし、かつ、第二次試験の総合技術監理部門を合格して登録した技術士、という意味になります。

「46 機械「熱・動力エネルギー機器」又は「流体機器」・総合技術監理(機械「熱・エネルギー機器」又は「流体機器」)」について

「46 機械「熱・動力エネルギー機器」又は「流体機器」・総合技術監理(機械「熱・エネルギー機器」又は「流体機器」)」は、「45 機械・総合技術監理(機械)」と同じく、機械器具設置工事の専任技術者等として認められる資格ですが、それに加えて、管工事の専任技術者等としても認められる資格です。こちらの資格は、次の4つの資格を意味していることになります。

1.「機械「熱・動力エネルギー機器」」
 → 選択科目が「熱・エネルギー機器」の技術士(機械部門)
2.「機械「流体機器」」
 → 選択科目が「流体機器」の技術士(機械部門)
3.「総合技術監理(機械「熱・エネルギー機器」)」
 → 選択科目が「熱・エネルギー機器」の技術士(機械部門)をクリアした技術士(総合技術監理部門)
4.「総合技術監理(機械「流体機器」)」
 → 選択科目が「流体機器」の技術士(機械部門)をクリアした技術士(総合技術監理部門)

「45 機械・総合技術監理(機械)」と比べて、こちらでは第二次試験の選択科目が関係しています。選択科目次第では、専任技術者や主任技術者・監理技術者として認められる範囲が広がるイメージを持っていただければよいと思います。

技術士資格をどのように確認するか?

ここまでの解説で、建設業許可の手引き等に記載されている技術士資格の見方についてお分かりいただけたかと思います。それでは建設業許可申請の手続き実務上、技術士資格がどのように確認されているのでしょうか?

技術士の方が該当する技術士資格を持っているかどうかの確認は、「登録証」と「合格証明書」で行うことになります。

「登録証」では、第一次試験の専門科目で選択した「部門」の確認を行うことができ、そして「合格証明書」では、第二次試験で選択した「選択科目」の確認を行うことができます。そのため、選択科目の確認が必要ない「45 機械・総合技術監理(機械)」などは、「登録証」のみで確認が出来ることとなります。

建設業許可の手引き等に記載されている「技術士資格」の見方について解説をさせていただきましたがいかがでしたでしょうか?もし、技術士資格の内容についてご不明な点があれば、公益社団法人日本技術士会(TEL03-3459-1331)までお問い合わせください。