建設業法令遵守ブログ

【建設業法】関連コラム

「実務経験」と「指導監督的実務経験」の違い

大野裕次郎

社員行政書士・東京事務所所長

大野裕次郎

建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。

営業所の専任技術者や主任技術者・監理技術者になるための資格要件に、「実務経験」や「指導監督的な実務の経験」(指導監督的実務経験)という実務経験が出てきます。主任技術者と一般建設業の専任技術者が同じ資格要件で、監理技術者と特定建設業の専任技術者が同じ資格要件です。

「実務経験」「指導監督的実務経験」それぞれどのような経験をいうのか解説いたします。

「実務経験」とは?

国土交通省の「建設業許可事務ガイドライン」では次のように定義されています。

「実務の経験」とは、建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいい、ただ単に建設工事の雑務のみの経験年数は含まれないが、建設工事の発注に当たって設計技術者として設計に従事し、又は現場監督技術者として監督に従事した経験、土工及びその見習いに従事した経験等も含めて取り扱うものとする。

実務経験とは「建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験」です。具体的に次のような職務経験が含まれるとのことです。

    • 建設工事の発注にあたって設計技術者として設計に従事した経験
    • 現場監督技術者として監督に従事した経験
    • 土工及びその見習いに従事した経験

建設工事の雑務に従事した経験は含まれませんが、工事現場で施工に従事した経験であれば含まれると考えていただいて問題ありません。また、請け負った工事に関する実務経験がなくても、注文者の立場で「設計技術者として設計に従事した経験」も実務経験として認められますので、請け負った工事に関する経験のみではないというところもポイントだと思います。

「指導監督的な実務の経験」とは?

国土交通省の「建設業許可事務ガイドライン」では次のように定義されています。

① 「指導監督的な実務の経験」とは、建設工事の設計又は施工の全般について、工事現場主任者又は工事現場監督者のような立場で工事の技術面を総合的に指導監督した経験をいう。
② 指導監督的な実務の経験については、許可を受けようとする建設業に係る建設工事で、発注者から直接請け負い、その請負代金の額が4,500万円以上であるものに関し、2年以上の指導監督的な実務の経験が必要であるが、昭和59年10月1日前に請負代金の額が1,500万円以上4,500万円未満の建設工事に関して積まれた実務の経験及び昭和59年10月1日以降平成6年12月28日前に請負代金の額が3,000万円以上4,500万円未満の建設工事に関して積まれた実務の経験は、4,500万円以上の建設工事に関する実務の経験とみなして、当該2年以上の期間に算入することができる。

指導監督的実務経験についてまとめると「元請の立場で請け負った4,500万円※以上の建設工事において、その設計又は施工の全般について、工事の技術面を総合的に指導監督した経験」です。指導監督的実務経験の場合、職務の内容は「総合的に指導監督した経験」となりますので、その経験を積んだときの立場がポイントです。例えば、次のような立場である必要があります。※昭和59年9月30日までの工事は1,500万円以上、昭和59年10月1日~平成6年12月27日までの工事は3,000万円以上で良いとされています。

    • 工事現場主任者
    • 工事現場監督者
    • 主任技術者
    • 現場代理人
    • 工事主任
    • 設計監理者
    • 施工監督

【まとめ】「実務経験」と「指導監督的実務経験」の違い

違いをまとめると下表のとおりになります。

実務経験 指導監督的実務経験
業種

29業種どれでもOK

指定建設業(土木、建築、電気、管、鋼構造物、舗装、造園)を除く、22業種

必要年数 1年、3年、5年、10年 2年(左記年数と重複可)
元請・下請 問わない 元請工事(発注者から直接請け負った工事)であること
請負代金の額 問わない 1件の工事が定められた請負代金の額(4,500万円※)以上であること
※S59.9.30日までは1,500万円以上、S59.10.1~H6.12.27までは3,000万円以上
経験内容 工事の経験であること 工事の指導監督的な立場での経験であること
・工事現場主任者
・工事現場監督者 等

建設業許可の申請や、技術検定の申請、監理技術者資格者証の申請の際には、「実務経験」「指導監督的実務経験」の違いや、実務経験として認められる実績であるかどうかを意識して申請をするようにしましょう。