【国土交通省 通達】国不建第52号「労務費、原材料費、エネルギーコスト等の取引価格を反映した 適正な請負代金の設定や適正な工期の確保について」
行政書士
寺嶋紫乃
行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。
今回から、国土交通省から出ている「通達」について取り上げたいと思います。「通達」とは、行政官庁がその所掌事務について、所管の機関や職員に文書で通知することを言います。
通達を見ていない、通達なんて知らない、という建設業者様も多いかと思います。文章が長文であったり、堅苦しい表現で読みづらいという印象があるかもしれませんが、重要なお知らせもありますので通知には目を通していただくと良いと思います。
1.原材料の高騰と品薄状態
このところ様々なものが「値上げ」ラッシュとなっていることは周知のことと思います。この値上げの影響は、建設工事にも大きな影響を与えています。このような状況下で企業が経済の回復に伴う収益を増大させ、賃上げを積極的に取り組むことができるようにするためにも、請負代金や工期について適切に対応することが求められています。なぜならそのような対応は中小企業等との取引において、円滑な価格転嫁を進めるために必要なことだからです。
2.実態(調査結果)
適正な対応と言っても、実際どの程度の企業が対応をしているのでしょうか。ここで、国土交通省が行ったモニタリング調査の結果を見ておこうと思います。
以下は、「物価等の変動に基づく契約変更条項が含まれているか」を確認した結果になります。
<受発注者間契約>
<元請下請間契約>
「請負契約書の中に物価等の変動に基づく契約変更条項が含まれていない」と回答は、受発注者間契約で15%、元請下請間契約で10%にも及びました。
3.建設業法違反に注意
物価等の変動を反映した価格設定が行われていない場合、請負代金の額が不当に低いと判断され建設業法第19条の3に違反するおそれがあります。(建設業法第19条の3「不当に低い請負代金の禁止」)
そのようなことがないように、請負契約の締結にあたっては、建設工事標準請負契約約款に記載されている請負代金の変更に関する規定(いわゆるスライド条項)を含めていただくように見直しをおすすめします。