建設業法令遵守ブログ

【建設業法】関連コラム

【建設業許可事務ガイドライン】第7条関係「常勤役員等」についてPart1

寺嶋紫乃

行政書士

寺嶋紫乃

行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。

今回は、建設業許可の要件の一つでもある「常勤役員等」について取り上げます。令和2年10月の建設業法改正によって、事業者全体で建設業に関し適切な経営管理体制が構築できることが求められることになった、という点は記憶に新しいと思います。改めて、「常勤役員等」について見ておきます。

1.適切な経営管理体制とは

適切な経営管理体制とは、経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者(「常勤役員等」のことです。)がいることです。
「常勤役員等」について簡単におさらいをします。常勤役員等とは、法人の場合はその役員のうち常勤であるもの、個人の場合はその者(事業主)またはその支配人をいいます。ここでいう「役員」とは、業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいいます。

1つ注意が必要なのが「執行役」です。ここでいう「執行役」とは、指名委員会等設置会社の執行役をいいます。
よくご相談を受けるのが、株式会社で取締役の他に執行役員という役職があり、それがここで言う「役員」に含まれるか?というものです。上記の説明を見ていただければわかる通り、指名委員会等を設置している会社であれば執行役も役員に含まれますが、一般的な株式会社の執行役員は役員には含まれません。

また、株式会社等の執行役が「準ずる者」に該当するかどうかは個別判断となります。
「準ずる者」とは、法人格のある各種組合等の理事等をいいます。そのため執行役員、監査役、会計参与、監事及び事務局長等は原則として準ずる者に含まれません。ただし、以下の2点を満たす場合には、準ずる者として認められることがあります。

①業務を執行する社員、取締役又は執行役に準ずる地位にあること
②建設業の経営業務の執行に関し、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受けていること

2.「準ずる者」の判断方法

「準ずる者」に該当するか否かの判断は、以下の書類により確認をします。

執行役員等の地位が業務を執行する社員、取締役又は執行役に次ぐ職制上の地位にあることを確認するための書類
組織図その他これに準ずる書類
業務執行を行う特定の事業部門が建設業に関する事業部門であることを確認するための書類
業務分掌規程その他これに準ずる書類
取締役会の決議により特定の事業部門に関して業務執行権限の委譲を受ける者として選任され、かつ、取締役会の決議により決められた業務執行の方針に従って、特定の事業部門に関して、代表取締役の指揮及び命令のもとに、具体的な業務執行に専念する者であることを確認するための書類
定款、執行役員規程、執行役員職務分掌規程、取締役会規則、取締役就業規程、
取締役会の議事録その他これらに準ずる書類

確認書類は一般的な書類で例示に過ぎません。また、これらの名称の書類を準備すればよいというものではなく、記載されている内容も確認します。
それぞれの書類が、何を証明・確認するために準備するものなのか、その点を理解したうえで書類を整える必要があります。

3.「常勤であるもの」とは

常勤役員等には常勤性が求められています。「常勤」とは、原則として本社、本店等において休日その他勤務を要しない日を除き、毎日所定の時間中、その職務に従事していることが必要です。働き方が多様化している現在では、出社をしないテレワーク勤務でも、常勤性が認められています。

常勤については、注意があります。建設業以外の他事業の許認可等において、法令で専任が求められているものと重複する場合で、かつそれぞれ営業場所が異なる場合は、常勤と認められないのでご注意ください(例えば、建築士事務所を管理する建築士や宅地建物取引業者の専任の宅地建物取引士等。)。