建設業法令遵守ブログ

【建設業法】関連コラム

【相談事例】建設業法違反による制裁には何があるか

大野裕次郎

社員行政書士・東京事務所所長

大野裕次郎

建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。

最近、建設業法コンプライアンス研修をご依頼いただいた建設業者様の受講者の方から、「建設業法違反による罰則の具体的な適用ケースを知りたい」とご相談をいただきました。今回はその相談事例をもとに、建設業法違反による制裁についてご説明をさせていただきます。

建設業法違反には、「罰則」と「監督処分」という制裁が用意されています。

「罰則」と「監督処分」の違いとは?

»「罰則」とは?
刑罰(犯罪を犯した者に科せられる法律上の制裁)又は過料のことをいう。

»「監督処分」とは?
行政機関が法律にもとづき営業等の行為を規制している場合に、法令違反などがあったときに行政機関が発する命令等をいう。建設業者の場合は、許可行政庁(国土交通大臣や都道府県知事)から受けるペナルティーのこと。

罰則とは懲役や罰金など裁判所が科す刑罰で、監督処分とは、営業停止処分や許可取消処分など行政庁が監督権に基づいて科す行政処分で、罰則と監督処分は全くの別物です。

「罰則」に該当するケース

建設業法の罰則規定をまとめると下表のとおりとなります。

罰則 具体的なケース
3年以下の懲役または300万円以下の罰金

法人に対しては1億円以下の罰金

  • 建設業許可を受けないで建設業を営んだ場合
  • 特定建設業許可がないにも関わらず、元請業者となり、4,000万円(建築一式工事の場合6,000万円)以上となる下請契約を締結した場合
  • 営業停止中に営業した場合
  • 営業禁止中に営業した場合
  • 虚偽又は不正の事実に基づいて許可を受けた場合
6ヶ月以下の懲役又は100万円以下の罰金
  • 建設業許可申請書に虚偽の記載をして提出した場合
  • 変更等の届出を提出しなかった場合
  • 変更等の届出に虚偽の記載をして提出した場合
  • 経営状況分析申請書又は経営規模等評価申請書に虚偽の記載をして提出した場合
100万円以下の罰金
  • 工事現場に主任技術者又は監理技術者を置かなかった場合
  • 土木一式工事又は建築一式工事を施工する場合において、専門技術者の配置等を行わなかった場合
  • 許可取消処分や営業停止処分を受けたにも関わらず、2週間以内に注文者に通知しなかった場合
  • 登録経営状況分析機関から報告又は資料を求められ、報告若しくは資料の提出をしなかった場合又は虚偽の報告若しくは虚偽の資料の提出をした場合
  • 許可行政庁から報告を求められ、報告をしなかった場合又は虚偽の報告をした場合
  • 許可行政庁から検査を求められ、検査を拒否、妨害、忌避した場合
10万円以下の過料
  • 廃業等の届出を怠った場合
  • 調停の出頭要求に応じなかった場合
  • 店舗や工事現場に建設業の許可票を掲げなかった場合
  • 無許可業者が建設業者であると誤認される表示をした場合
  • 帳簿を作成しなかった場合、虚偽の記載等をした場合

※情状により、懲役及び罰金を併科。

「監督処分」に該当するケース

「監督処分」については、許可行政庁ごとに監督処分基準が定められており、その基準に基づいて対処されることとなっています。どのような監督処分を行うかは、不正行為等の内容・程度・社会的影響、情状等を総合的に勘案して判断されることとなります。

以下では、国土交通省の「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」を取り上げ、監督処分の基準の基本的な考え方をまとめました。

監督処分 具体的なケース
不正行為等が故意又は重過失によるときは原則として営業停止処分、その他の事由によるときは原則として指示処分。(情状により、必要な加重又は減軽を行うことを妨げない。 )
  • 建設業者が建設工事を適切に施工しなかつたために公衆に危害を及ぼしたとき、又は危害を及ぼすおそれが大であるとき。
  • 建設業者が請負契約に関し不誠実な行為をしたとき。
  • 建設業者(建設業者が法人であるときは、当該法人又はその役員等)又は政令で定める使用人がその業務に関し他の法令に違反し、建設業者として不適当であると認められるとき。
  • 建設業者が一括下請負の禁止の規定に違反したとき。
  • 主任技術者又は監理技術者が工事の施工の管理について著しく不適当であり、かつ、その変更が公益上必要であると認められるとき。
  • 建設業者が、第三条第一項の規定に違反して建設業許可を受けないで建設業を営む者と下請契約を締結したとき。
  • 建設業者が、特定建設業者以外の建設業を営む者と下請代金の額が総額4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)となる下請契約を締結したとき。
  • 建設業者が、事情を知りつつ、営業停止命令を受けた者又は営業禁止されている者と下請契約を締結したとき。
  • 履行確保法の規定(住宅建設瑕疵担保保証金の供託等)に違反したとき。
指示処分
  • 建設業者が、変更等の届出(建設業許可の変更届、決算変更届の提出等)の規定に違反したとき。
  • 建設業者が、建設工事の請負契約の内容(書面による契約、記載内容等)の規定に違反したとき。
  • 建設業者が、標識の掲示(店舗の標識、建設工事の現場ごとの標識の掲示)の規定に違反したとき。
  • 建設業者が、帳簿の備付け等の規定に違反したとき。 等
勧告(正当な理由がなく勧告に従わない場合は、指示処分)
  • 注文者が建設業者であって、通常必要と認められる期間に比べ著しく短い期間を工期とした請負契約を締結した場合において、特に必要があると認めるとき。
許可取消処分
  • 不正行為等に関する建設業者の情状が特に重い場合又は建設業者が営業停止処分に違反したとき。

その他、具体的な基準についても、監督処分の基準の中に定められていますので、ご自身の許可行政庁の監督処分基準を確認してみてください。

監督処分を受けると、国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」(https://www.mlit.go.jp/nega-inf/)や、許可を受けた都道府県のHPに5年間掲載されることとなります。指示処分であっても、掲載されることとなり、企業イメージや信用の失墜につながってしまいますので注意が必要です。