【建設業許可事務ガイドライン】一式工事の考え方
行政書士
寺嶋紫乃
行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。
「建設業許可事務ガイドライン」について取り上げております。
今回から数回にわたり、建設業の業種について詳しく見ていきます。
1.「一式工事」の考え方
よくある勘違いとして、「一式工事業の許可はオールマイティだから、どの工事でもできる」というものです。一式工事業の許可が最強という認識です。
これは大きな間違いです。誤った認識のまま許可を取得し工事を請負っている現状があり、その事実が無許可業者としての処分に繋がることがあり得ます。
「一式工事」とは、「総合的に企画、指導及び調整の下に土木工作物又は建築物を建設する工事」であって、土木一式工事と建築一式工事の2種類があります。
※引用:静岡県 建設業許可手引きより
ポイントは「総合的に企画、指導及び調整の下」という点です。
「総合的な企画、指導及び調整」とは、元請負人が自ら総合的に調整及び指導(①施工計画の総合的な企画、工事全体の的確な施工を確保するための②工程管理及び③安全管理、工事目的物、工事仮設物、工事用資材等の④品質管理、下請負人間の⑤施工の調整、下請負人に対する⑥技術指導、監督等)を行うことです。
つまり、一式工事は元請業者が行う工事であって、原則として下請業者が一式工事を請け負うことはありません。また、総合的な調整等が必要になる工事となれば、工事の規模も大きいものになるということが分かると思います。
2.土木一式工事とは
建設業許可事務ガイドラインにおいては、土木一式工事を以下の考え方をしています。
① 「プレストレストコンクリート工事」のうち橋梁等の土木工作物を総合的に建設するプレストレストコンクリート構造物工事は『土木一式工事』に該当する。
② 上下水道に関する施設の建設工事における『土木一式工事』、『管工事』及び『水道施設工事』間の区分の考え方は、公道下等の下水道の配管工事及び下水処理場自体の敷地造成工事が『土木一式工事』であり、家屋その他の施設の敷地内の配管工事及び上水道等の配水小管を設置する工事が『管工事』であり、上水道等の取水、浄水、配水等の施設及び下水処理場内の処理設備を築造、設置する工事が『水道施設工事』である。
なお、農業用水道、かんがい用排水施設等の建設工事は『水道施設工事』ではなく『土木一式工事』に該当する。
特に上下水道に関する工事については、土木一式工事ではなく専門工事とすべき工事がありますので注意が必要です。
※引用:長崎県 建設業許可申請の手引きより
3.建築一式工事とは
建設業許可事務ガイドラインにおいては、建築一式工事を以下の考え方をしています。
ビルの外壁に固定された避難階段を設置する工事は『消防施設工事』ではなく、建築物の躯体の一部の工事として『建築一式工事』又は『鋼構造物工事』に該当する。
これ以外にも、建築一式工事で注意いただきたい工事がリフォーム工事です。
例えばマンション等の部屋一室をリフォームするような工事は、内装工事等の専門工事に該当し、建築一式工事には該当しません。増築や改築、改造を伴うリフォーム工事であれば建築一式工事に該当します。
4.まとめ
一式工事の正しい認識をお願いします。
また、一式工事業の許可を持っており、かつ下請の立場でしか仕事をしない建設業者に該当する場合には、一度自社の建設業許可業種の見直しをしてみてください。
行政書士法人名南経営は、建設業許可手続きだけでなく、スポットでの相談対応、従業員・協力会社向けの建設業法令研修や、模擬立入検査、コンプライアンス体制構築コンサルティングまで対応しております。MicrosoftTeamsを利用したWEB面談も可能です。お気軽にご相談ください。