建設業法令遵守ブログ

【建設業法】関連コラム

【監督処分の基準】具体的な考え方Part1

寺嶋紫乃

行政書士

寺嶋紫乃

行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。

令和2年10月の建設業法の改正に伴い「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準(監督処分基準)」が改正されました。改正された部分はもちろんのこと、この基準の内容を解説し、建設業法令遵守にお役立ていただきたいと思います。

本日は、監督処分の基準の具体的な考え方について取り上げます。具体的な考え方については、細かく分類されていますので、複数回に分けて解説します。

1.公衆危害が発生した場合

具体的には、建設業者が建設工事を適切に施工しなかったために、公衆に死亡者又は3人以上の負傷者が発生した場合です。このような公衆危害が発生した場合で、その建設業者の役職員が業務上過失致死傷罪等の刑に処せられ、公衆に重大な危害を及ぼしたと認められる場合には、7日以上の営業停止処分が行われます。また、それ以外の場合で、危害の程度が(上記の場合よりは)軽微であると認められる場合には、指示処分が行われます。

その他にも、建設業者が建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼすおそれが大きい場合には、直ちに危害を防止する措置を行うよう勧告が行われます。さらに必要に応じて、指示処分が行われることもあります。その指示処分に従わない場合には、営業停止処分が行われることもありますので注意が必要です。この場合、営業停止の期間は、7日以上とされています。

建設業者が建設工事は適切に施工していても公衆危害が発生した場合で、違反行為が建設資材に起因するものであると認められる場合には、必要に応じて指示処分が行われます。

2.建設業者の業務に関する談合・贈賄等(刑法違反(公契約関係競売等妨害罪、談合罪、贈賄罪、詐欺罪)、補助金等適正化法違反、独占禁止法違反)があった場合

建設業者の業務に関する談合・贈賄等があった場合、「誰が行ったのか?誰が処分されたのか?」によって処分の内容が異なります。

①代表権のある役員等(建設業者が個人である場合においてはその者。以下同じ。)が刑に処せられた場合
代表権のある役員等が所属する建設業者には、1年間の営業停止処分が行われます。

②代表権のない役員等又は政令で定める使用人が刑に処せられた場合
代表権のない役員等が所属する建設業者には、120日以上の営業停止処分が行われます。

③①又は②以外の場合
つまり、役職のある者ではなく、従業員が業務に関する談合等を行った場合になります。このような場合、その従業員が所属する建設業者には、60日以上の営業停止処分が行われます。

④独占禁止法に基づく排除措置命令又は課徴金納付命令の確定があった場合(独占禁止法第7条の2第18項に基づく通知を受けた場合を含む。)
「独占禁止法に基づく排除措置命令・課徴金納付命令」とは、公正取引委員会が独占禁止法に違反する行為をした者に対して,その違反行為を除くために必要な措置を命じます。これが、排除措置命令です。私的独占やカルテル等、一定の不公正な取引方法に対しては,公正取引委員会が違反事業者に対して,課徴金を課します。これが、課徴金納付命令です。
これらが確定した場合、建設業者には30日以上の営業停止処分が行われます。

⑤①~④により営業停止処分(独占禁止法第3条違反に係るものに限る。)を受けた建設業者に対して、当該営業停止の期間の満了後10年を経過するまでの間に、①~④に該当する事由(独占禁止法第3条違反に係るものに限る。)があった場合
処分に該当する行為が短期間で重なった行われた場合です。このような場合には、①~④のそれぞれの処分事由に係る監督処分基準に定めている営業停止の期間を2倍に加重し、1年を超えない範囲で、建設業者には営業停止処分が行われます。

3.まとめ

具体的に見ていただくと分かりやすいと思いますが、建設業者(会社)としての行為だけでなく、そこに所属する役員や従業員一人の違反行為等が処分の対象となります。一人の違反行為等が会社全体の処分に繋がります。
そのため社内での教育実施等、会社全体で法令遵守の取組が必要になります。

 

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