建設業許可業者数が3年連続で増加!
社員行政書士・東京事務所所長
大野裕次郎
建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。
国土交通省では、建設業に許可制度を採用した昭和47年度以来、毎年度(3月末時点)における全国の建設業許可業者数を調査、許可業者数の動向を把握し、公表をしています。令和3年5月17日に、令和3年3月末現在の建設業許可業者の現況が公表されましたので見ていきましょう。
令和3年3月末時点の調査結果のポイント
〇全国の建設業許可業者数は、3年連続増の473,952業者。
〇令和2年10月1日より施行された、事業承継の認可件数が半年で203件。
- 令和3年3月末現在の建設業許可業者数は473,952業者で、前年度比1,479業者(0.3%)増で、3年連続の増加。
許可の有効期限が3年から5年に延長されて以降、通常であれば、失効業者数を含む廃業等業者数が新規業者数に比べて多くなる年度であるにも関わらず、許可業者数が増加。 - 令和2年10月1日施行の建設業法改正に伴い、建設業許可の承継制度が新設された。
施行日から令和3年3月末までの認可件数は203件となっており、譲渡及び譲受けが147件、合併が22件、分割が10件、相続が24件となっている。
(出典:国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について(概要)」)
調査結果の概要
都道府県別許可業者数
都道府県別許可業者数は、東京都(43,428 業者。全体の 9.2%)、大阪府(39,525業者。全体の 8.3%)、神奈川県(28,306 業者。全体の 6.0%)で昨年度と同様に多く、鳥取県(2,115 業者。全体の 0.4%)、島根県(2,722 業者。全体の 0.6%)、高知県(2,959業者。全体の 0.6%)で少ない。
(出典:国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について(概要)」)
一般・特定許可業者数
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- 一般建設業許可を取得している業者は 450,076 業者で、前年同月比 1,061 業者(0.2%)の増加となり、一般建設業許可業者数が最も多かった平成 12 年 3 月末時点と比較すると▲127,633 業者(▲22.1%)の減少。
- 特定建設業許可を取得している業者は 47,055 業者で、前年同月比 604 業者(1.3%)の増加となり、特定建設業許可業者数が最も多かった平成 17 年 3 月末時点と比較すると▲4,121 業者(▲8.1%)の減少。
(出典:国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について(概要)」)
業種別許可業者数
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- 許可を取得している業者が多い上位3業種は、
①「とび・土工工事業」174,289 業者(許可業者の 36.8%)
②「建築工事業」148,430 業者(同 31.3%)
③「土木工事業」130,888業者(同 27.6%) - 許可を取得している業者が少ない上位3業種は、
①「清掃施設工事業」425 業者(同 0.1%)
②「さく井工事業」2,352 業者(同 0.5%)
③「電気通信工事業」15,345業者(同 3.2%) - 前年同月に比べて取得業者数が増加した許可業種は 25 業種で、増加数の上位 3 業種は、
①解体工事業 5,084 業者(9.1%)
②とび・土工工事業 2,778 業者(1.6%)
③塗装工事業 2,277 業者(3.6%) - 前年同月に比べて取得業者数が減少した許可業種は 4 業種で、減少数の上位 3 業種は、
①建築工事業▲2,246 業者(▲1.5%)
②造園工事業▲280 業者(▲1.1%)
③さく井工事業▲25 業者(▲1.1%)
- 許可を取得している業者が多い上位3業種は、
(出典:国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について(概要)」)
兼業業者数
建設業以外の営業を行っているいわゆる兼業業者は 135,738 業者で、前年同月比 1,807業者(1.3%)増加し、兼業業者が全体に占める割合は 28.6%となり、前年同月比で 0.3ポイント上昇。
大臣許可業者・知事許可業者別では、兼業業者は、大臣許可業者が 7,660 業者(兼業率 74.6%)、知事許可業者が 128,078 業者(同 27.6%)となっており、兼業率は大臣許可業者が圧倒的に高い。
また、一般建設業と特定建設業の別では、兼業業者は、一般建設業が 123,092 業者(兼業率 27.3%)、特定建設業が 24,236 業者(同 51.5%)となっており、兼業率は特定建設業の方が高い。
まとめ
建設業許可業者数は、平成12年3月末時点のピーク時は、600,980業者であり、令和3年3月末時点の473,952業者と比較すると確かに大幅に減少していますが、平成24年度からは、47万業者前後で横ばいの状態が続いています。建設業者は減少しているイメージが強いですが、実は最近では減少しておらず、むしろ増加に転じていることが分かるデータです。
特に注目したいのは、「兼業業者数」です。建設業以外の営業を行っている兼業業者は、建設業許可業者数が最も多かった平成12年3月末時点では、兼業業者の割合は21.3%でしたが、令和3年3月末時点では7.3ポイント上昇しています。これは建設業者が兼業を始めていることを示しているのではなく、どちらかというと建設業以外の業者が建設業許可を取得するケースが増えていると捉えるのが良いと思います。行政書士法人名南経営のお客様も、建築・土木といった純粋な建設業のお客様より、製造業や商社、運送業といった別の業種から建設業に参入するお客様が増加している印象です。
兼業業者の方は特にですが、「建設業法」について詳しくないことが多く、お困りの方が多い様子です。弊社では、顧問契約・スポットでの相談対応や、建設業法令遵守体制構築のためのコンサルティングをしておりますので、お気軽にお問い合わせください。