【建設業法令遵守ガイドライン】工期変更に伴う変更契約
行政書士
寺嶋紫乃
行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。
令和2年10月の建設業法の改正に伴い「建設業法令遵守ガイドライン」も改訂されました。改訂された部分を中心に、建設業法令遵守のために注意すべき事項を見ていきます。
Case1.下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず、下請工事の当初契約で定めた工期が変更になり、下請工事の費用が増加したが、元請負人が下請負人からの協議に応じず、書面による変更契約を行わなかった。
Case1.の場合には、建設業法第19条第2項に違反し、場合によっては建設業法第19条の3に違反するおそれがあります。
建設工事の請負契約の内容
第十九条 (第一項省略)
2 請負契約の当事者は、請負契約の内容で前項に掲げる事項に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
(以下、省略)
建設業法第19条は請負契約のルールを定めています。第2項では、変更契約についても当初契約と同様のルールの適用があることを明確に規定しています。また、請負契約は着工前に締結するものですが、変更契約も同様に、変更部分に関する工事の着工前に変更契約を締結することとされています。
【注意点1】追加工事等の内容や変更後の工期を直ちに確定できない場合の対応
以前にも取り上げておりますので、下記のブログを参照ください。
「建設業法令遵守ガイドライン 書面による契約締結~追加工事等に伴う追加・変更契約~」2020年12月22日のブログ
「建設業法令遵守ガイドライン 書面による契約締結~追加工事等に伴う追加・変更契約~」2020年12月22日のブログ
【注意点2】工期変更に起因して工事費用が増加した場合には変更契約を締結
工事の変更が下請負人の責めに帰すべき理由が無いにも関わらず工期が変更になるというケースは現場ではあると思ます。工期が変更(伸びること)になれば、余計に費用がかかることに繋がります。このような場合、発注者に増額請求等をできれば問題になることは無いと思いますが、実際には増加分を発注者に請求ということは難しく、そのためこのようなケースが問題となります。
下請負人から元請負人に対して費用の増額に伴う請負代金の変更契約の締結を求められた場合に、元請負人が変更契約の締結を拒むような場合には、建設業法第19条第2項に違反することとなります。
不当に低い請負代金の禁止
第十九条の三 注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。
【注意点3】費用増額分の負担者
注意点2にも関係がありますが、費用の増額のケースでは元請負人が変更契約の締結を拒むことがあるため建設業法には変更契約についても明確にルールを規定しています。具体的には、元請負人が増額分の費用を下請負人に負担させようとして変更契約を締結しないケースが考えられます。
建設業法第19条の3には、不当に低い請負代金での契約締結を禁止しています。下請業者が通常必要と認められる原価をきちんと確保したうえで請負代金を設定できるようにするため、元請業者は下請業者いじめとならないようにするため、増加費用分の負担については注意が必要です。
行政書士法人名南経営は、建設業許可手続きだけでなく、スポットでの相談対応、従業員・協力会社向けの建設業法令研修や、模擬立入検査、コンプライアンス体制構築コンサルティングまで対応しております。MicrosoftTeamsを利用したWEB面談も可能です。お気軽にご相談ください。