建設業法令遵守ブログ

【建設業法】関連コラム

適切な安全衛生経費の確保について

大野裕次郎

社員行政書士・東京事務所所長

大野裕次郎

建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。

労働安全衛生法では、元請負人お呼びした請負人に労働災害防止対策を義務付けており、それに要する経費は元請負人等が義務的に負担しなければなりません。つまり、この経費は「通常必要と認められる原価」に含まれることとなり、建設工事の請負契約においては、この経費を含む金額で締結することが必要です。

国土交通省の「建設業法令遵守ガイドライン」において、労働災害防止対策の実施者と、その経費の負担者などの明確化の手順が示されています。ここでは、建設業法令遵守ガイドラインに定められた手順を見ていきたいと思います。

(1)元請負人による見積条件の提示

元請負人は、見積条件の提示の際、労働災害防止対策の実施者及びその経費の負担者の区分を明確化し、下請負人が自ら実施する労働災害防止対策を把握でき、かつ、その経費を適正に見積もることができるようにしなければなりません。

(2)下請負人による労働災害防止対策に要する経費の明示

下請負人は、元請負人から提示された見積条件をもとに、自らが負担することとなる労働災害防止対策に要する経費を適正に見積った上、元請負人に提出する見積書に明示する必要があります。

(3)元請負人と下請負人との契約交渉

元請負人は、「労働災害防止対策」の重要性に関する意識を共有し、下請負人から提出された労働災害防止対策に要する経費」が明示された見積書を尊重しつつ、建設業法第18条を踏まえ、対等な立場で契約交渉をしなければなりません。

(4)建設工事請負契約書面における明確化

元請負人と下請負人は、契約締結の書面化に際して、契約書面の施工条件等に、労働災害防止対策の実施者及びその経費の負担者の区分を明確化するとともに、下請負人が負担しなければならない労働災害防止対策に要する経費は、施工上必要な経費と切り離し難いものを除き、契約書面の内訳書などに明示することが必要です。

以上、厚生労働省ホームページに掲載の「安全な建設工事のために適切な安全衛生経費の確保が必要です-労働災害防止についての建設業法令遵守ガイドラインの改訂-」(https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/150618-1.pdf)より抜粋して加工。

建設業法違反に注意

上記の(1)~(4)の手順において、以下のような対応があった場合は、建設業法違反となるおそれがありますので、注意が必要です。
・元請負人が、あらかじめ見積条件において、下請負人の負担であることを明示していないにもかかわらず、一方的に提供・貸与したヘルメットなどの労働災害防止対策の費用を下請代金の支払時に差し引く行為
・元請負人が、労働災害防止対策に要する費用を差し引くなどにより、その結果「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合

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