建設業法における営業停止処分とは?具体的な処分事例と注意事項について解説
行政書士法人名南経営
愛知県名古屋市の行政書士法人名南経営。許認可業務と相続・遺言関連業務を主軸とし、企業から個人のクライアントまで、幅広いサービスを提供。事業に関する許認可コンサルティング及び個人の相続・遺言法務コンサルティングを通じて、クライアントのリスク・負担・不安を解消し、ビジネスや暮らしにおける「願い」を実現するサポートをしている。
建設業法とは建設業を営む者が守らなければならない法律であり、建設業法に違反した場合には、罰則や監督処分という制裁が科せられる可能性があります。
今回は監督処分のうち「営業停止処分」について、処分を受けるケースについていくつかの事例をもとにご紹介します。
罰則と監督処分の違い
罰則とは、刑罰(犯罪を犯した者に科せられる法律上の制裁)又は過料のことで、裁判所が科す制裁です。
一方監督処分とは、法令違反などがあったときに所轄の行政機関が科す制裁です。建設業者の場合は、許可行政庁(国土交通大臣や都道府県知事)が科すことになります。
「罰則」や「監督処分」について、詳しくは「【相談事例】建設業法違反による制裁には何があるか」をご覧ください。
監督処分の種類
監督処分には、勧告、指示処分、営業停止処分、許可取消処分があります。
勧告とは
勧告とは、建設業者に対する適正な行動を促すための指導や助言です。
勧告は建設業者を拘束する処分とは異なり、拘束力はありませんが、勧告に従わず、かつ必要があるときは指示処分の対象となる可能性があります。
指示処分とは
指示処分とは建設業者の法令違反又は不適正な事実の是正のため、建設業者が具体的にとるべき措置を命令する処分です。
指示処分には拘束力があり、指示処分に従わない場合は営業停止処分の対象となる可能性があります。
営業停止処分とは
営業停止処分とは、建設業に関する営業活動が一定期間禁止される処分のことです。
建設業者の違反状況や内容等から判断して、指示処分では十分でない場合や建設業者が指示処分に従わない場合等に営業停止処分の対象となります。
許可取消処分とは
許可取消処分とは、建設業許可を取り消す処分のことです。
例えば建設業者が許可要件を満たさなくなった場合や、営業停止処分中に営業を行った場合には許可取消処分の対象となります。
営業停止処分の事例
営業停止処分を含む監督処分を受けると、国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」に掲載されることになります。
こちらは誰でも閲覧できるサイトのため、監督処分を受けてしまうと会社の信用に関わる可能性もあります。
今回は「ネガティブ情報等検索サイト」に掲載されている営業停止処分の事例をいくつかご紹介します。
【事例① 主任技術者の配置義務違反】
| 商号又は名称 | K社 |
| 許可を受けている建設業の種類 | 土、建、大、と、水 |
| 処分年月日 | 2025年10月14日 |
| 処分を行った者 | 静岡県 |
| 根拠法令 | 建設業法第28条第3項 |
| 処分の内容(詳細) | 停止を命ずる営業の範囲:建設業に関する営業のうち、公共工事に係るもの
※「公共工事」とは、国、地方公共団体、法人税法(昭和40年法律第34号)別表第一に掲げる公共法人(地方公共団体を除く。)又は建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)第18条に規定する法人が発注者である建設工事をいう。 |
| 処分の原因となった事実 | K社は、F市発注の建設工事において、建設業法第26条第1項の規定に違反し、その工事現場に資格要件を満たさない者を主任技術者として配置させていた。このことは、建設業法第28条第1項第2号に該当することから、同法第28条第3項に該当すると認められる。 |
この事例は、必要な資格要件を満たしていない主任技術者を現場に配置していたという事例です。
現場に配置する主任技術者・監理技術者という配置技術者は、適正な国家資格や実務経験を有した方でなければならないため、配置技術者を配置する際にはご注意ください。
主任技術者・監理技術者について詳しくは「建設業法における監理技術者とは?資格や必要となる工事について解説」をご確認ください。
【事例② 無許可営業】
| 商号又は名称 | Y社 |
| 許可を受けている建設業の種類 | 土、建、と、屋、タ、舗、内、具、水、解 |
| 処分年月日 | 2025年10月1日 |
| 処分を行った者 | 北海道 |
| 根拠法令 | 建設業法第28条第3項(第28 条第1項第2号該当) |
| 処分の内容(詳細) | 建設業法第28 条第3項に基づく営業停止処分
営業停止期間:令和7年10 月14 日から令和7年10 月20 日までの7日間 営業停止範囲:地域、業種、公共・民間工事の範囲を限定せず営業の全部停止 |
| 処分の原因となった事実 | Y社が管工事業の建設業許可を有しないにもかかわらず、建設業者発注の「社員寮エアコン設置寒冷地仕様に更新工事」(税抜13,500 千円)を受注した。このことは、建設業法第28 条第1項第2号に該当するものである。 |
こちらは建設業許可を有しない業種について、税込500万円以上の工事を請け負ってしまったという事例です。
建設業許可は業種ごとに取得するため、許可を取得していない業種について税込500万円以上(建築一式工事の場合は税込1,500万円以上)の工事を請け負うことは無許可営業となり、建設業法違反となります。
無許可営業について詳しくは「建設業の無許可営業を行うとどうなる?」をご確認ください。
【事例③ 違法な下請契約】
| 商号又は名称 | O社 |
| 許可を受けている建設業の種類 | 建、電、管、内 |
| 処分年月日 | 2025年9月11日 |
| 処分を行った者 | 奈良県 |
| 根拠法令 | 建設業法第28条第3項(第1項第2号該当) |
| 処分の内容(詳細) | 停止を命ずる営業の範囲:建設業に係る営業のうち、民間工事に係るもの
※「民間工事」とは、国、地方公共団体、法人税法(昭和40年法律第34号)別表第一に掲げる公共法人(地方公共団体を除く。)又は建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)第18条に規定する法人が発注者である建設工事以外の建設工事又は民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号)第2条第2項に規定する特定事業に係る建設工事以外の建設工事をいう。 期間:令和7年9月30日から令和7年10月6日までの7日間 |
| 処分の原因となった事実 | O社は、同社が請け負った奈良県奈良市内の工場新築工事において、建設業法第3条第1項第2号に規定する特定建設業の許可を有していないにもかかわらず、元請業者として同号の政令で定める金額を超える下請負契約を締結した。このことは、建設業法第28条第1項第2号に該当すると認められる。 |
最後は、特定建設業許可を取得していないにも関わらず、元請として受注した工事について、下請に政令で定める金額(令和7年10月現在、税込5,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円))以上の工事を発注してしまった事例です。
元請として受注した工事について、下請に税込5,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)の工事を発注する場合は特定建設業許可の取得が必要になりますのでご注意ください。
まとめ
主任技術者・監理技術者等の配置技術者や下請契約等、建設業法には遵守しなければならない事項が多くあり、遵守しなかった場合には上記のような罰則や監督処分といった制裁が科される可能性があります。
営業停止処分等の処分を受けることなく適切に営業を行っていくためには、建設業法についての理解を深めておく必要があります。
また、建設業法は随時改正も行われているため、常に最新の情報を把握しておくことも大切です。
自社の建設業法の遵守体制についてお悩みや不安がある方は、ぜひ行政書士法人名南経営までご相談ください。
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