建設業法令遵守ブログ

【建設業法】用語解説

監理技術者・主任技術者・営業所技術者等は、出向社員や派遣社員でも認められる?

大野裕次郎

社員行政書士・東京事務所所長

大野裕次郎

建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。

お客様からよくいただくご質問として、「監理技術者・主任技術者」や「営業所技術者・特定営業所技術者(旧専任技術者)」は「出向社員」や「派遣社員」でも認められるか?というご質問があります。建設業法や建設業許可・経営事項審査といった手続きにおいては、様々な「技術者」が登場し、どのような違いがあるのかお悩みの方も多いようです。

今回は、「監理技術者・主任技術者」「営業所技術者・特定営業所技術者(以下、営業所技術者等)」「経営事項審査の加点対象となる技術職員」の要件に関して、その違いを解説していきたいと思います。

監理技術者・主任技術者

建設業法で、建設工事現場に配置することが義務付けられている「監理技術者・主任技術者」に関しては、国土交通省の「監理技術者制度運用マニュアル」に次のとおり記載されています。

「建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある者であることが必要」

監理技術者・主任技術者は、建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあることが要件となっています。

「直接的な雇用関係」とは、監理技術者等とその所属建設業者との間に第三者の介入する余地のない雇用に関する一定の権利義務関係(賃金、労働時間、雇用、権利構成)が存在することをいいます。

「恒常的な雇用関係」とは、一定の期間にわたり当該建設業者に勤務し、日々一定時間以上職務に従事することが担保されていることをいいます。
公共工事においては、発注者から直接請け負う建設業者の専任の主任技術者、専任の監理技術者、特例監理技術者又は監理技術者補佐については、所属建設業者から入札の申込のあった日以前に3ヶ月以上の雇用関係にあることが必要とされています。

直接的かつ恒常的な雇用関係が要件となっていますので、在籍出向社員や派遣社員を監理技術者・主任技術者とすることは認められていません。なお、嘱託等の有期雇用の労働者に関しては、原則は監理技術者・主任技術者となることは認められていませんが、雇用期間が限定されている継続雇用制度の適用を受けている者は、常時雇用されている(=恒常的な雇用関係にある)ものとみなされます。

営業所技術者等

建設業許可の要件である「営業所技術者等」に関しては、国土交通省の「建設業許可事務ガイドライン」に次の通り記載されています。

「「専任」の者とは、その営業所に常勤(テレワークを行う場合も含む。)して専らその職務に従事することを要する者をいう」

営業所技術者等は、その営業所に常勤して専らその職務に従事すること、つまり、「専任」であることが要件となっています。

「専任」に関しては、会社の社員である場合は、その者の勤務状況、給与の支払状況、その者に対する人事権の状況等により判断をすることになります。そして、これらの判断基準により専任性が認められる場合には、いわゆる出向社員であっても専任の技術者として取り扱うとされています。派遣社員は、給与の支払い状況や、その者に対する人事権の状況から、建設業者への専任性が認められないため、営業所技術者等となることはできません。なお、嘱託等の有期雇用の労働者であっても、建設業者との専任性が認められれば、営業所技術者等として認められるということになります。

経営事項審査の加点対象となる技術職員

経営事項審査の加点対象となる技術職員に関しては、国土交通省の「経営事項審査の事務取扱いについて」

「審査基準日以前に6か月を超える恒常的な雇用関係があり、かつ、雇用期間を特に限定することなく常時雇用されている者(法人である場合においては常勤の役員を、個人である場合においてはこの事業主を含む。)とする」

経営事項審査の加点対象となる技術職員は、「6か月を超える恒常的な雇用関係」と「雇用期間を特に限定することなく常時雇用されている」ことが要件となっています。

出向社員であっても「6か月を超える恒常的な雇用関係」があり、「雇用期間を特に限定することなく常時雇用されている」者であれば、認められるということになります。派遣社員は、建設業者との間に恒常的な雇用関係があるとは言えないため、経営事項審査の加点対象となる技術職員とすることはできません。なお、嘱託等の有期雇用の労働者に関しては、「雇用期間が限定されている者のうち、審査基準日において高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)第9条第1項第2号に規定する継続雇用制度の適用を受けているもの(65歳以下の者に限る。)については、雇用期間を特に限定することなく常時雇用されている者とみなす」とされています。

まとめ

下表は、行政書士法人名南経営で技術者の要件の違いについてまとめたものです。

■「監理技術者・主任技術者」「営業所技術者等」「経営事項審査の加点対象となる技術職員」の要件の違い

  監理技術者・主任技術者 営業所技術者等 経営事項審査の加点対象となる技術職員
根拠 監理技術者制度運用マニュアル 建設業許可事務ガイドライン 経営事項審査の事務取扱いについて
要件 「所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある者であることが必要」

 

「直接的な雇用関係」とは、監理技術者等とその所属建設業者との間に第三者の介入する余地のない雇用に関する一定の権利義務関係(賃金、労働時間、雇用、権利構成)が存在することをいう。在籍出向者、派遣社員については直接的な雇用関係にあるとはいえない。

「恒常的な雇用関係」とは、一定の期間にわたり当該建設業者に勤務し、日々一定時間以上職務に従事することが担保されていることをいう。公共工事において、発注者から直接請け負う建設業者の専任の主任技術者、専任の監理技術者、特例監理技術者又は監理技術者補佐については、所属建設業者から入札の申込のあった日以前に3ヶ月以上の雇用関係にあることが必要。

「「専任」の者とは、その営業所に常勤(テレワークを行う場合を含む。)して専らその職務に従事することを要する者をいう」

 

会社の社員の場合には、その者の勤務状況、給与の支払状況、その者に対する人事権の状況等により「専任」か否かの判断を行い、これらの判断基準により専任性が認められる場合には、いわゆる出向社員であっても専任の技術者として取り扱う。

「審査基準日以前に6か月を超える恒常的な雇用関係があり、かつ、雇用期間を特に限定することなく常時雇用されている者(法人である場合においては常勤の役員を、個人である場合においてはこの事業主を含む。)」

 

雇用期間が限定されている者のうち、審査基準日において高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)第9条第1項第2号に規定する継続雇用制度の適用を受けているもの(65歳以下の者に限る。)については、雇用期間を特に限定することなく常時雇用されている者とみなす。

在籍出向者について ×認められない

(企業集団確認を受けた場合は親会社及びその連結子会社間で認められる)

○認められる ○認められる
派遣社員について ×認められない ×認められない ×認められない
有期雇用労働者について △認められる可能性もある

(雇用期間が限定されている継続雇用制度の適用を受けている者は、常時雇用されている(=恒常的な雇用関係にある)ものとみなされる)

○認められる ×認められない

65歳以下で継続雇用制度の適用を受けている者は認められる)

※継続雇用制度の対象者であった者が65歳を超えて再雇用される場合など、許可行政庁によっては恒常的な雇用関係がある者として取り扱われることもありますのでご確認ください。

行政書士法人名南経営は、建設業許可手続きだけでなく、スポットでの相談対応、従業員・協力会社向けの建設業法令研修や、模擬立入検査、コンプライアンス体制構築コンサルティングまで対応しております。
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