建設工事の丸投げ(一括下請負)は建設業法違反!
社員行政書士・東京事務所所長
大野裕次郎
建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。
建設業界において、建設工事の丸投げが禁止されているということをご存知の方は多いと思います。しかしながら、具体的にどのようなケースが丸投げに該当するのか、丸投げはどのような理由で禁止されているのか、など詳細までご理解いただいている方は少ない印象です。この記事では、丸投げとは何か、なぜ建設業法で禁止されているのか、合法的に丸投げをする方法などについて解説いたします。
丸投げ(一括下請負)とは?
丸投げとは、⼯事を請け負った建設業者が、施⼯において実質的に関与をせず、下請負⼈にその⼯事の全部⼜は主たる部分もしくは独⽴した⼀部を⼀括して請け負わせることをいい、建設業法では、「一括下請負」と呼ばれ、原則として禁止されています。
公共工事では、入契法第14条の規定により、一括下請負は全面的に禁止されています。
民間工事では、発注者の書面による事前承諾がある場合を除き、禁止されていますが、ただし、共同住宅を新築する工事等、一定の民間工事では、全面禁止されています。
出典:中部地方整備局「建設業法に基づく適正な施工の確保に向けて」(https://www.cbr.mlit.go.jp/kensei/info/qa/pdf/R0509/R0509_000_tekiseinasekounokakuho.pdf)
一括下請負が禁止されている理由
建設業法では、次の理由から、一括下請負を原則として禁止しています。
- 発注者が建設業者に寄せた信頼を裏切る。
- 施⼯責任があいまいになることで、⼿抜⼯事や労働条件の悪化につながる。
- 中間搾取を⽬的に、施⼯能⼒のない商業ブローカー的不良建設業者の輩出を招く。
例えば、自宅を建てたいと思って、いろいろ探し回り、ようやく理想の家を建ててくれる工務店を見つけ依頼したところ、建築工事が始まったと思ったら、全く違う建設業者が建築していた。なんてことになったら嫌ですよね。一括下請負は、そういった発注者の信頼を裏切る行為とされ、原則として禁止されています。
一括下請負の禁止に該当する具体例
一括下請負に該当する行為は2つあります。
①請け負った建設工事の全部又はその主たる部分を一括して他人に請け負わせる場合
②請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の工事を一括して他人に請け負わせる場合
具体的な事例にすると、次のようになります。
①の場合、元請A社は請け負った建築工事の主たる部分を下請B社に請け負わせているため、一括下請負に該当します。
②の場合、元請A社は請け負った建築工事のうち、独立して機能を発揮する住宅2棟を下請B社に請け負わせているため、一括下請負に該当します。
実質的に関与とは?
一括下請負は、元請負人が下請工事の施工に実質的に関与していると認められない場合に該当してしまいます。「実質的に関与」とは、自ら施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導等を行うことをいいます。
元請・下請それぞれの具体的な役割は次のとおりです。
出典:関東地方整備局「建設工事の適正な施工を確保するための建設業法」(https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000699485.pdf)
合法的に一括下請負をする方法
冒頭でもお伝えしましたが、民間工事では、共同住宅を新築する工事を除き、発注者の事前承諾がある場合は、一括下請負は禁止されません。
下請負人間(例:一次下請・二次下請間)で一括下請負をする場合でも、発注者(工事の最初の注文者)の事前承諾が必要となる点に注意が必要です。
建設業法
(一括下請負の禁止)
第二十二条 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。
2 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。
3 前二項の建設工事が多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。
(以下省略)建設業法施行令
(一括下請負の禁止の対象となる多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事)
第六条の三 法第二十二条第三項の政令で定める重要な建設工事は、共同住宅を新築する建設工事とする。
まとめ
- 丸投げとは、⼯事を請け負った建設業者が、施⼯において実質的に関与をせず、下請負⼈にその⼯事の全部⼜は主たる部分もしくは独⽴した⼀部を⼀括して請け負わせることをいう。
- 建設業法では、「一括下請負」と呼ばれ、原則として禁止されている。
- 一括下請負は、発注者が建設業者に寄せた信頼を裏切る等の理由から禁止されている。
- 一括下請負に該当する行為は2つある。
①請け負った建設工事の全部又はその主たる部分を一括して他人に請け負わせる場合
②請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の工事を一括して他人に請け負わせる場合 - 元請負人が下請工事の施工に実質的に関与していると認められない場合には一括下請負に該当する。
- 民間工事で、共同住宅を新築する工事を除き、発注者の書面による事前承諾があれば、合法的に一括下請負をすることができる。