建設業法第17条の2「事業承継」解説
社員行政書士・東京事務所所長
大野裕次郎
建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。
記事更新日:2020年10月1日
本記事は、2020年10月1日に施行された改正建設業法に関する規定の解説です。
旧建設業法では、建設業者の地位の承継に関する規定がなく、建設業者が事業の譲渡、会社の合併、分割を行った場合、譲渡、合併後又は分割後の会社は新たに建設業許可を取り直すことが必要で、新しい許可が下りるまでの間に建設業を営むことができない空白期間が生じ、不利益が生じていました。そのような不都合を解消するために、2020年10月1日に施行された改正建設業法で、事業承継の規定が整備され、事前の認可を受けることで、建設業許可の承継をすることが可能となりました。
条文の確認
(譲渡及び譲受け並びに合併及び分割)
第十七条の二 建設業者が許可に係る建設業の全部(以下単に「建設業の全部」という。)の譲渡を行う場合(当該建設業者(以下この条において「譲渡人」という。)が一般建設業の許可を受けている場合にあつては譲受人(建設業の全部を譲り受ける者をいう。以下この条において同じ。)が当該一般建設業の許可に係る建設業と同一の種類の建設業に係る特定建設業の許可を、譲渡人が特定建設業の許可を受けている場合にあつては譲受人が当該特定建設業の許可に係る建設業と同一の種類の建設業に係る一般建設業の許可を受けている場合を除く。)において、譲渡人及び譲受人が、あらかじめ当該譲渡及び譲受けについて、国土交通省令で定めるところにより次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める者の認可を受けたときは、譲受人は、当該譲渡及び譲受けの日に、譲渡人のこの法律の規定による建設業者としての地位を承継する。
一 譲渡人が国土交通大臣の許可を受けているとき 国土交通大臣
二 譲渡人が都道府県知事の許可を受けているとき 当該都道府県知事。ただし、次のいずれかに該当するときは、国土交通大臣とする。
イ 譲受人が国土交通大臣の許可を受けているとき。
ロ 譲受人が当該都道府県知事以外の都道府県知事の許可を受けているとき。
~以下省略~
条文が長いため省略をしていますが、会社合併・分割の場合も事業譲渡と同様の規定となっています。
承継のスキームについて
下図は、建設業者Aの地位を建設業者Bが承継するケースのスキームです。
①許可行政庁に対し、事業譲渡等について事前認可申請
②許可行政庁において、申請の内容について審査
③許可行政庁から、認可について建設業者に通知
④事業譲渡等の効力発生日に建設業許可についても承継
(出典:国土交通省「新・担い手三法について~建設業法、入契法、品確法の一体的改正について~」)
注意点
事前認可による建設業許可の承継には、次のような注意点があります。
※異業種間の承継は可能です。
※同一業種でも、一般・特定の区分が同じであれば承継は可能です。
※承継元の一部の許可のみを承継することは不可です。
例として以下のようなケースは、この制度による承継の対象外となります。
1.一般建設業の許可を受けている者が、その許可に係る建設業のいずれか同一種類の建設業に係る特定建設業の許可を受けている者の地位を受け継ぐようなケース
<承継元の許可>
建築(特定)、鉄筋(特定)、舗装(一般)、造園(一般)
<承継先の許可>
建築(特定)、鉄筋(一般)、大工(一般)、左官(一般)
→ このケースでは承継先が鉄筋(一般)を事前に廃業することで承継が可能となります。
2.特定建設業の許可を受けている者が、その許可に係る建設業のいずれか同一種類の建設業に係る一般建設業の許可を受けている者の地位を受け継ぐようなケース
<承継元の許可>
土木(特定)、鉄筋(一般)、舗装(一般)、造園(一般)
<承継先の許可>
土木(特定)、鉄筋(特定)、大工(一般)、左官(一般)
→ このケースでは承継元が鉄筋(一般)を事前に廃業することで承継が可能となります。
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