建設業法令遵守ブログ

【建設業法】関連コラム

令和4年度の国土交通省の立入検査等の件数は?

大野裕次郎

社員行政書士・東京事務所所長

大野裕次郎

建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。

令和5年6月20日、国土交通省より「令和4年度「建設業法令遵守推進本部」の活動結果及び令和5年度の活動方針」が公表されましたので、中身を見ていきたいと思います。

令和4年度の立入検査等の件数は?

最も気になる立入検査等の実施件数ですが、令和4年度は884件でした。
「令和4年度「建設業法令遵守推進本部」の活動結果及び令和5年度の活動方針」によれば、令和3年度858件、令和2年度451件、令和元年度613件、平成30年度739件となっていますので、直近5年間では最も多い実施件数となりました。

令和4年度の監督処分・勧告の実施件数は次のとおりです。


出典:国土交通省「令和4年度「建設業法令遵守推進本部」の活動結果及び令和5年度の活動方針」(https://www.mlit.go.jp/common/001615414.pdf)

令和3年度、令和2年度と比べると、令和4年度の監督処分・勧告の件数は大幅に増加していることが分かります。


出典:国土交通省「令和3年度「建設業法令遵守推進本部」の活動結果及び令和4年度の活動方針」(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001484784.pdf)

令和5年度の活動方針は?

活動方針のうち、特に気になるのは「立入検査及び報告徴取の実施」についてです。立入検査等の「検査対象」と「重点事項」をチェックします。

検査対象

次のような建設企業を中心に立入検査等を実施すると記載されています。

      • 各種相談窓口に通報が寄せられた建設企業
      • 営業所の実態・技術者に必要な実務経験等に疑義のある建設企業
      • 新規に建設業許可を取得した建設企業
      • 過去に監督処分又は行政指導を受けた建設企業
      • 下請取引等実態調査において未回答又は不適正回答の多い建設企業
      • 不正行為等を繰り返し行っているおそれのある建設企業

令和4年度の活動方針と同じ検査対象となっています。

重点事項

重点的に以下の事項について検査されることになります。

      1. 技能労働者への適切な水準の賃金支払い
        技能労働者の賃金水準の上昇を図るためには、適正な単価による契約締結が重要であることから、受発注者間・元請下請間のいずれにおいても、適正な請負代金での契約締結がなされるよう、建設業法第 20 条の見積りに関する規定等を踏まえ、標準見積書の活用状況や見積りに基づく協議の状況、代金の支払い状況等について、モニタリング調査を行う。
      2. 低価格受注工事における下請取引状況の確認
        上記1の取り組みを踏まえ、特に公共工事における低価格受注工事については、入札にあたっての価格設定及び積算単価の考え方、下請契約における下請負人との協議状況や代金の支払い状況等について、モニタリング調査を行う。
      3. 著しく短い工期の禁止
        建設業における長時間労働の是正や働き方改革を推進するためには、適正な工期設定を推進する必要があることから、当初契約や工期の変更に伴う契約変更に際して、工期に関する基準(令和2年7月中央建設業審議会勧告)がどのように考慮されたかを確認するとともに、過去の同種類似工事の実績との比較や建設業者が行った工期の見積りの内容の精査、さらには工期設定の結果としての時間外の労働時間状況等について、モニタリング調査を行う。また、受発注者間についても同様に行う。さらに、令和6年4月から罰則付きの時間外労働の上限規制が建設業に適用されることを踏まえ、今年度は、労働基準監督署と連携して、適正な工期の確保に特化したモニタリング調査を実施する。具体的には、地方整備局等が実施する工期に関する詳細なモニタリング調査に労働基準監督署が同行し、同署から罰則付きの時間外労働の上限規制の周知等訪問支援を行うことにより、長時間労働の是正に向けた自主的な改善を促すこととする。
      4. 価格転嫁
        昨今の資機材の高騰を踏まえた元請下請間における適正な価格設定及び適切な協議は大変重要であり、不適正な請負代金の設定による請負契約は建設業法に違反するおそれがあることから、請負契約における請負代金の変更に関す
        る規定(物価等の変動に基づく契約変更条項等)の適切な設定・運用状況について、モニタリング調査を行う。また、受発注者間についても同様に行う。
      5. 下請代金の支払手段
        「下請代金のうち労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮をしなければならない」と建設業法において規定されていることから、下請負人への代金の支払いのうち労務費相当分の支払い状況等について、モニタリング調査を行う。また、手形に関し、下請中小企業振興法「振興基準」(令和4年改正経済産業省・中小企業庁)において、約束手形をできる限り利用しないよう努めること及びサプライチェーン全体で約束手形の利用の廃止等に向けた取組を進めることとされていること、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画フォローアップ(令和4年6月7日閣議決定)」において、令和8年の約束手形の利用の廃止に向けた取組を促進する旨閣議決定されていること、金融業界に対し、令和8年に手形交換所における約束手形の取扱いを廃止することの可否について検討するよう要請されていること等を踏まえて建設業法令遵守ガイドラインを改訂したところであり、必要な周知を実施する。

令和4年度の活動方針における重点事項と項目自体は変更ありませんでしたが、すべての項目において「モニタリング調査を行う」という文言が入れられたことが印象的でした。調査を行いながら、対策をしていくものと思われるため、立入検査だけでなく、何らかの調査も行われるまた、【その他】として、(1)建設業を支える担い手の確保・育成、(2)規制逃れを目的とした一人親方対策、(3)建設工事から発生する土の搬出先の明確化等、が挙げられています。

令和5年度の建設業取引適正化推進期間はいつ?

令和元年度までは 11 月が「建設業取引適正化推進月間」とされ、建設業の法令遵守に向けた普及・啓発がされていましたが、令和2年度からは、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を踏まえて、10月から 12月の3ヶ月間を「建設業取引適正化推進期間」として実施されています。 令和5年度も引き続き、10月から12月が「建設業取引適正化推進期間」として実施されるようです。立入検査等の実施もこの期間に集中することになると思いますので、十分な対策が必要です。

行政書士法人名南経営では、「模擬立入検査サービス」による建設業法令遵守状況のチェックや、国交省による立入検査を受ける際の「建設業立入検査サポート」といったサービスをご用意しております。お気軽にお問合せください。

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