全国の建設業許可申請の手引きを見てみよう!~茨城県知事許可編②
行政書士
寺嶋紫乃
行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。
引き続き、全国の建設業許可申請の手引きを見ていきたいと思います。弊社の本社は愛知県にあり、お客様も同じエリアに集中しています。そのため手にする、目にする手引きというものが愛知県や中部地方整備局の手引きに偏ります。このブログを読んでいただいている方は全国にいらっしゃいますので、「私自身が全国的な視点を持とう」と思い、全国の手引きを見ています。
建設業許可の要件等は建設業法関連法令に規定されているため、全国を見ても違いはありませんが、要件確認資料の種類や要件や専門用語の説明の仕方等に違いがありますので、取り上げるのはそのような点になります。いろいろな手引きを見ることは参考になると思いますのでご紹介させていただきます。
今回も茨城県知事許可の手引きです。
1.茨城県主催の研修会
茨城県の監理課では、建設業経営者に向けた研修会を実施しているようです。建設業許可を取った後の手続きや遵守すべきこと等、建設業者には必須の知識です。今回は、この研修で使用されている「建設業経営者研修会テキスト」を見ていきたいと思います。
230ページほどのボリュームがあり、すべてに目を通すのは大変だと思いますので、このブログでいくつかピックアップします。
2.茨城県の建設業界がわかる
テキストの冒頭では茨城県内の建設業者の現況が、様々な角度から取り上げられています。
その中でも「建設業の労働環境改善のための取組み」において、快適トイレの普及状況がまとめられています。ちなみに「快適トイレ」とは、男女ともに快適に使用できる仮設トイレだそうです。
茨城県に限らず、建設業界では女性が活躍できるように労働環境の改善が行われていたり、女性が定着しやすい職場づくりが進んでいます。
国土交通省が「女性定着促進に向けた建設産業行動計画 ~働きつづけられる建設産業を目指して~」をまとめていますので、具体的な改善等の内容はこちらをご覧ください。
茨城県では平成29年度から建設現場への快適トイレの普及を進める取り組みをし、現状把握のために設置件数を集計しています。その結果、平成29年度は10件だった設置数が令和3年度には432件と、確実にその成果は出ていて茨城県の建設現場では職場環境の改善が進んでいる様に感じます。
他にも、茨城県はICTの取組みや労務費等を毎年調査し報告し、建設業界全体の動向を見ていると思います。
3.入札へ参加する際の注意事項
茨城県の入札においては、「工事内訳書」の提出が必須となっています。提出が無い場合は、その入札が無効となります。様式は任意様式ですが、作成例やフォーマットが充実しています。建設業許可を取得したばかりの建設業者には、工事内訳書と伝えても分からない可能性があると思いますので、その点、茨城県は初心者でも対応できるようにしてくれていると思いました。(親切ですね。)
また、工事内訳書を作成する際には「法定福利費」を明示するようにしています。
法定福利費とは、簡単に言うと労働者の適切な労務費と適切な保険に加入するための費用です。労働者の処遇改善と社保未加入対策に繋がるとして、法定福利費を明示することをすすめていますが、現時点では建設業関係法令上、法定福利費の明示は義務になっていません。そのため、あくまでも建設業者ごとの判断に委ねられていますが、茨城県の公共工事においては法定福利費も必ず明示するようにしています。(私は専門外なので取り上げませんが、このテキストでは法定福利費の算出方法まで紹介しています。茨城県は徹底していますね。)
公共工事においては、地域ごとに独自のルールや条件を設けていることがあります。
入札が無効となることが無いよう、入札前には、それぞれの注意事項に目を通すようにしましょう。