建設業法令遵守ブログ

【建設業法】関連コラム

軽微な建設工事の金額要件の緩和はされないの?

大野裕次郎

社員行政書士・東京事務所所長

大野裕次郎

建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。

建設業法施行令が改正され、来年令和5年1月1日から、監理技術者と主任技術者の専任要件の緩和や、特定建設業許可の許可と監理技術者の配置、施工体制台帳などの作成が必要となる下請金額の緩和が実施されます。

建設業法施行令の改正についてはこちらの記事をご覧ください。
»建設業法施行令の一部改正が閣議決定

金額要件のある他の規定

建設業法施行令の中で、監理技術者等の専任配置や特定建設業許可の下請金額と同じように、金額要件のあるものが他にもあります。それが、「軽微な建設工事」です。建設業法施行令第1条の2に規定があります。

(法第三条第一項ただし書の軽微な建設工事)
第一条の二 法第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、千五百万円)に満たない工事又は建築一式工事のうち延べ面積が百五十平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とする。
2 前項の請負代金の額は、同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする。ただし、正当な理由に基いて契約を分割したときは、この限りでない。
3 注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格又は市場価格及び運送賃を当該請負契約の請負代金の額に加えたものを第一項の請負代金の額とする。

軽微な建設工事をまとめると下表のようになります。

建築一式工事 次のいずれかに該当する工事
①工事1件の請負代金が税込1,500万円に満たない工事
②延べ面積が150㎡に満たない木造住宅工事(延べ面積の2分の1以上を居住の用に供すること)
その他の工事 工事1件の請負代金が税込500万円に満たない工事

この軽微な建設工事の金額要件は緩和されないのでしょうか?

軽微な建設工事の金額要件は緩和されない

結論から申し上げると、軽微な建設工事の金額要件は緩和されません。
今回の令和5年1月1日の各種金額要件の緩和は、少子高齢化に伴う全産業的な労働力人口の減少が進む中で、限りある人材の有効活用を図りつつ、将来にわたる中長期的な担い手の確保及び育成を図ることなどを目的としたものです。そのため、建設業者(建設業許可業者)に対する緩和となっています。軽微な建設工事とは、主に無許可業者に対する規定であり、緩和をしても、上記の目的を達成する手段にはならないため、緩和の対象になっていないものと考えます。

国土交通省の考え方は?

先日実施された建設業法施行令の一部改正に関するパブリックコメントの結果(https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=155220320&Mode=1)が出ています。その中で、軽微な建設工事の金額要件緩和に対する国土交通省の考え方がありましたので、引用してご紹介します。

軽微な建設工事に係る金額の引き上げは、許可を要せずに建設業を営むことができる範囲を広げることとなりますが、近年少額のリフォーム工事等におけるトラブルが増加している状況にあり、消費者保護の観点
から慎重に検討する必要があると考えております。

建設業法の目的に「発注者の保護」がありますが、消費者保護の観点から、軽微な建設工事の金額要件については慎重に検討する必要があるとのことです。
少額の工事におけるトラブルが増加している状況ということであれば、私の個人的な意見としては、軽微な建設工事の金額要件は緩和ではなく、建設業許可を受けた適正な建設業者による施工を増やすために、金額要件を強化すべきであるように感じます。