経営事項審査の主な改正事項(令和5年1月1日改正)
社員行政書士・東京事務所所長
大野裕次郎
建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。
令和4年8月15日、「<令和4年国交省告示第827号>建設業法第二十七条の二十三第三項の経営事項審査の項目及び基準を定める件の一部を改正する告示」が出て、経営事項審査の改正内容が明らかになりました。改正日は令和5年1月1日です。主な改正事項を見ていこうと思います。
経営事項審査におけるその他社会性(W)改正の概観
令和5年1月1日の主な改正事項は次の5つです。
1 W1-9 ワーク・ライフ・バランス(WLB)に関する取組の審査基準及び評点
2 W1-10 建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況
3 W1-10の改正時期及び総合評定値算出係数の改正
4 W7 建設機械の保有状況の改正
5 W8 国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の有無の改正
(出典:国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001397215.pdf)
現行の「労働福祉の状況(W1)」、「若年の技術者及び技能者の育成及び確保の状況(W9)」、「知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況(W10)」に新設された「ワーク・ライフバランスに関する取組の状況」「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況」を合わせて、新たに「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況」として評価されることになります。また、「建設機械の保有状況(W7)」「国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況(W8)」の加点対象が拡大・追加されます。
ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況
内閣府による「女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する実施要領」(平成28年3月22日内閣府特命担当大臣(男女共同参画)決定)に基づき、「女性活躍推進法に基づく認定」、「次世代法に基づく認定」及び「若者雇用促進法に基づく認定」について、審査基準日における各認定の取得をもって、以下の評点で評価されることになります。令和5年1月1日以降の申請で適用されます。
(出典:国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001397215.pdf)
建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況・改正時期及び総合評定値算出係数の改正内容
建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用状況が加点対象となります。加点には次の要件があります。
◆審査対象工事(①~③を除く審査基準日以前1年以内に発注者から直接請け負った建設工事)
① 日本国内以外の工事
② 建設業法施行令で定める軽微な建設工事
③ 災害応急工事(防災協定に基づく契約又は発注者の指示により実施された工事)
◆該当措置(①~③のすべてを実施している場合に加点)
① CCUS上での現場・契約情報の登録
② 建設工事に従事する者が直接入力によらない方法※でCCUS上に就業履歴を蓄積できる体制の整備
③ 経営事項審査申請時に様式第6号に掲げる誓約書の提出
※直接入力によらない方法
就業履歴データ登録標準API連携認定システム(https://www. auth.ccus.jp/p/certified )により、入退場履歴を記録できる措置を実施していること等
(出典:国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001397215.pdf)
W1-10に関しては、審査基準日が令和5年8月14日以降の申請について、審査項目に追加されることになります。なた、P点に占めるW点のウェイトが大きく増加するため、各項目間のバランスを維持するために、総合評定値算出に係る係数が次のように変更されます。
(出典:国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001397215.pdf)
建設機械の保有状況の改正内容
現行の経審において、実際の災害対応において活躍しているものの、経営事項審査上は加点対象となっていない建設機械が存在しているため、対象となる建設機械が拡大されます。こちらは令和5年1月1日の申請で適用されます。
(出典:国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001397215.pdf)
国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の有無の改正内容
現行経審においては、環境への配慮に関する取組として、ISO14001の登録状況が評価されていますが、環境問題への取組を適切に評価する観点から環境省が定める「エコアクション21」の認証取得状況が加点対象に追加されます。こちらは令和5年1月1日以降の申請で適用されます。
(出典:国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001397215.pdf)
エコアクション21はISO14001に比べ、認定にあたっての審査基準が少なく、認証手続も簡便であることから、ISO14001の5点より下位の3点とされます。
※エコアクション21も、ISO14001も、いずれの認証も取得している場合、評点の合算は行われません。
※エコアクション21についても、ISOと同様に、認証範囲に建設業が含まれていない場合及び認証範囲が一部の支店等に限られている場合には加点されません。
令和4年8月15日の改正「監理技術者講習受講者の経審上の加点内容の改正」
上記の改正とは別に、令和4年8月15日に改正された項目があります。それが「監理技術者講習受講者の経審上の加点内容の改正」です。
これは、現行経審の技術力(Z)の項目において、監理技術者の講習受講者が加点対象となっていますが、建設業法上専任の監理技術者として配置可能な期間と経審上加点可能な期間にずれが生じていました。この状況を修正するため、監理技術者の講習受講者の加点可能な期間が「講習修了の日の属する年の翌年から5年間」とされました。
(出典:国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001397215.pdf)