令和6年4月1日建設業に変わった企業集団制度とは?国土交通省の通知をもとに解説

行政書士
寺嶋紫乃
行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。
企業集団制度とはどのような制度でしょうか。建設業法上の基本ルールを確認しながら、制度の概要及び変更点を見ていきたいと思います。
監理技術者等の雇用関係
建設業法では、現場に配置する技術者である主任技術者及び監理技術者(以下、「監理技術者等」という)は属する建設業者と一定の雇用関係になければなりません。具体的には、「直接的かつ恒常的」な雇用関係が必要です。今回ポイントとなるのは、「直接的な雇用関係」についてです。
「直接的な雇用関係」とは、監理技術者等と属する建設業者の間に第三者が介入することのない雇用関係をいいます。つまり、建設業者に直接雇用されている者でなければならず、在籍出向者や派遣社員は建設業者以外の企業に雇用されているため直接的な雇用関係には無いということになり監理技術者等になることができません。
企業集団制度とは
以上のとおり、原則として監理技術者等には建設業者との直接的な雇用関係が求められますが、特例として認められているのが「企業集団制度」を導入している場合になります。
企業集団制度とは、一定の要件を満たす企業集団において、親会社及びその連結子会社の間の出向社員を直接的かつ恒常的な雇用関係があるものとして取り扱うという制度です。つまり、要件を満たした企業集団に含まれる会社間であれば出向社員でも監理技術者等になることが可能となります。
令和6年4月1日から、新たな企業集団制度が設けられ2パターンとなりました。
①親会社及びその連結子会社の間の出向社員を監理技術者等として配置する場合(即時配置可能型)
1つ目のパターンは、以前から認められているものになります。
「即時配置可能型」の制度は、親子間の在籍出向社員を監理技術者等として配置可能です。ただし、この制度を利用する場合には、国土交通省 不動産・建設経済局 建設業課へ「企業集団確認申請」をして企業集団の確認を受ける必要があります。
要件は次のとおりです。
(1)一の親会社とその連結子会社からなる企業集団であること。
(2)親会社及び連結子会社が建設業者であること。
(3)(2)の連結子会社がすべて(1)の企業集団に含まれる者であること。
(4)親会社又はその連結子会社のいずれか一方が経営事項審査を受けていない者であること。
(5)親会社又はその連結子会社が、既に即時配置可能型の対象となっていないこと。
要件のうち、特に注意が必要なものは(4)です。親会社も子会社も、いずれも経営事項審査を受審している場合は「即時配置可能型」を選択できません。親会社もしくは子会社いずれかの有効な経営事項審査の結果が切れた後でなければ即時配置可能型の要件を満たさないため経営事項審査を受審している会社を含む企業集団は注意が必要です。
また「即時配置可能型」では、出向社員を監理技術者等として配置する建設工事に、当該企業集団を構成する会社又は当該親会社の非連結子会社が下請負人として工事に入ることはできないというルールにも注意してください。
②企業集団内の出向社員を監理技術者等として配置する場合(3ヶ月後等配置可能型)
2つ目のパターンが、新たに設けられたものです。
「3ヶ月後等配置可能型」の制度は、親子間だけでなく連結子会社間の在籍出向者を監理技術者等として配置することができます。この制度は、即時配置可能型と違い、要件さえ満たせば特別な手続きは要しません。
要件は、
(1)一の親会社とその連結子会社からなる企業集団であること。
(2)公共工事の場合は、所属建設業者から当該公共工事の入札の申込のあった日以前に出向先と三ヶ月以上の雇用関係があること。
民間工事しか請負わない企業であれば、要件の(2)は該当しないため雇用後、即時配置ができることになります。また、経営事項審査に関する要件や下請人の要件も無く、従来の制度である「即時配置可能型」より要件がシンプルで、活用しやすくなりました。
3ヶ月後等配置可能型は、特別な手続きを要しませんが、個別工事において、企業集団内の各企業が一定の企業集団内の企業であること等を確認できるようにしておく必要があります。具体的には、次の書類を備えておくようにしてください。
1)出向社員の出向元の会社との間の雇用関係を示す書類(健康保険被保険者証等)
2)出向であることを証する書類(出向契約書、出向協定書等)
3)一の親会社とその連結子会社からなる企業集団内の会社であることを示す書類(有価証券報告書等)
そして、これらの書類は事後的に確認できるよう、帳簿の保存期間と同期間保存が必要となりますのでご注意ください。
建設業法第四十条の三(不当に低い請負代金の禁止)
建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その営業所ごとに、その営業に関する事項で国土交通省令で定めるものを記載した帳簿を備え、かつ、当該帳簿及びその営業に関する図書で国土交通省令で定めるものを保存しなければならない。建設業法施行規則第二十八条(帳簿及び図書の保存期間)
法第四十条の三に規定する帳簿(第二十六条第六項の規定による記録が行われた同項のファイル又は電磁的記録媒体を含む。)及び第二十六条第二項の規定により添付された書類の保存期間は、請け負つた建設工事ごとに、当該建設工事の目的物の引渡しをしたとき(当該建設工事について注文者と締結した請負契約に基づく債権債務が消滅した場合にあつては、当該債権債務の消滅したとき)から五年間(発注者と締結した住宅を新築する建設工事に係るものにあつては、十年間)とする。
(以下省略)
まとめ
企業集団制度は人手不足を解消するための制度です。ただ、中小規模の会社が採用できる制度では無いため根本的な解決策とはなりませんが、要件を満たす企業は積極的に採用をしてほしいと思います。
- 建設業法の研修を実施してほしい
- 立入検査対応に不安がある
- 建設業法に関する質問・相談がしたい
- 建設業法改正に対応できているか不安
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