令和4年度下請取引等実態調査の実施
社員行政書士・東京事務所所長
大野裕次郎
建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。
国土交通省と中小企業庁は、建設工事における下請取引の適正化を図るため、下請取引等実態調査を毎年実施していますが、令和4年度も例年と同様に実施されます。下請取引等実態調査についてご説明いたします。
下請取引等実態調査とは?
建設工事における元請負人と下請負人の間の下請取引の適正化を図るため、国土交通省と中小企業庁が、建設業法に基づき実施している下請取引等の実態を把握するための調査です。
調査対象
調査対象業者は、全国の建設業許可業者の中から無作為に抽出されており、今年度は全国の14,000の建設業者が対象となっています。
調査方法
郵送による書面調査です。
なお、この調査は、建設業法第31条第1項及び第42条の2第1項に基づき、国土交通大臣及び中小企業庁長官が実施しているものであり、報告しない又は虚偽の報告をした場合は、100万円以下の罰金に処せられることがあります。
建設業法
(報告及び検査)
第31条 国土交通大臣は、建設業を営むすべての者に対して、都道府県知事は、当該都道府県の区域内で建設業を営む者に対して、特に必要があると認めるときは、その業務、財産若しくは工事施工の状況につき、必要な報告を徴し、又は当該職員をして営業所その他営業に関係のある場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2(略)
第42条の2 中小企業庁長官は、中小企業者である下請負人の利益を保護するため特に必要があると認めるときは、元請負人若しくは下請負人に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員に元請負人若しくは下請負人の営業所その他営業に関係のある場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2~4(略)
第52条 次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。
1~4(略)
5 第31条第1項、第41条の2第4項又は第42条の2第1項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
6 第31条第1項、第41条の2第4項又は第42条の2第1項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第53条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人、その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
1(略)
2 第50条又は前条 各本条の罰金刑
調査期間
令和4年7月27日から令和4年9月9日です。
調査内容
- 下請負人との見積方法(提示内容、期間、法定福利費、労務費、工期)の状況 ※
- 下請契約(追加・変更契約を含む。)の締結方法の状況 ※
- 下請代金の支払期間・方法の状況
- 価格転嫁や工期設定の状況
- 発注者による元請負人へのしわ寄せの状況
- 元請負人による下請負人へのしわ寄せの状況 ※
- 約束手形の期間短縮や電子化の状況
- 技能労働者への賃金支払状況 など
※元請負人と下請負人の取引は、元請負人と1次下請との間の取引のみではなく、2次と3次、3次と4次等の取引も含まれています。
令和4年度調査では、資材等価格の高騰の状況を踏まえた、適正な請負代金の設定や適切な工期の確保についても調査が行われるとされています。
調査後の措置
建設工事における下請取引の適正化等のために、次のような措置が取られることとなっています。
- 建設業法令違反行為等を行っている建設業者に対して指導票を送付し、是正措置を講ずるよう指導
- 未回答業者や、建設業法令違反等があり、特に必要がある場合には、許可行政庁による立入検査等の端緒情報として活用
未回答であれば、罰則や立入検査等の端緒情報とされてしまうためリスクがありますし、回答をしてもその内容が元請請負人等にバレることはありません。そのため、下請取引等実態調査の届いた建設業者の方は、包み隠さずありのままの内容を報告するようにしましょう。