令和3年度の国土交通省の立入検査等の件数は?
社員行政書士・東京事務所所長
大野裕次郎
建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。
令和4年6月6日、国土交通省より「令和3年度「建設業法令遵守推進本部」の活動結果及び令和4年度の活動方針」が公表されましたので、中身を見ていきたいと思います。
令和3年度の立入検査等の件数は?
最も気になる立入検査等の実施件数ですが、令和3年度は778件でした。
令和2年度は416件で、令和元年度は598件でした。新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、立入検査等の実施件数が減らされていたのが、令和3年度には以前の水準に戻ったという印象です。
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令和3年度の監督処分・勧告の実施件数は次のとおりです。
出典:国土交通省「令和3年度「建設業法令遵守推進本部」の活動結果及び令和4年度の活動方針」(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001484784.pdf)
立入検査等の実施件数は増加しましたが、監督処分・勧告については令和2年度の件数に比べて減少していました。
令和4年度の活動方針は?
活動方針のうち、特に気になるのは「立入検査及び報告徴取の実施」についてです。立入検査等の「検査対象」と「重点事項」をチェックします。
検査対象
次のような建設企業を中心に立入検査等を実施すると記載されています。
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- 各種相談窓口に通報が寄せられた建設企業
- 営業所の実態・技術者に必要な実務経験等に疑義のある建設企業
- 新規に建設業許可を取得した建設企業
- 過去に監督処分又は行政指導を受けた建設企業
- 下請取引等実態調査において未回答又は不適正回答の多い建設企業
- 不正行為等を繰り返し行っているおそれのある建設企業
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令和3年度の活動方針における検査対象と比べると「不正行為等を繰り返し行っているおそれのある建設企業」が追記されています。
重点事項
重点的に以下の事項について検査されることになります。
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- 技能労働者への適切な水準の賃金支払い
技能労働者の賃金水準の上昇を図るためには、適正な単価による契約締結が重要であることから、昨年度に引き続き、受発注者間・元請下請間のいずれにおいても、適正な請負代金での契約締結がなされるよう、建設業法第 20 条の見積りに関する規定等を踏まえ、標準見積書の活用状況や見積りに基づく協議の状況、代金の支払い状況等について、確認を行うとともに、その後も継続して改善状況について深掘りした情報収集や調査を行うものとする。 - 低価格受注工事における下請取引状況の確認
上記1の取り組みを踏まえ、特に公共工事における低価格受注工事については、入札にあたっての価格設定及び積算単価の考え、下請契約における下請負人との協議状況や代金の支払い状況等について、深掘りした情報収集や調
査を行うものとし、必要に応じて関係する公共工事発注部局に対しても確認を行うものとする。 - 著しく短い工期の禁止
当初契約や工期の変更に伴う契約変更に際して、著しく短い工期の疑義がある場合には、工期に関する基準(令和2年7月中央建設業審議会勧告)が工期設定に当たってどのように考慮されたかを確認するとともに、過去の同種類似工事の実績との比較や建設業者が行った工期の見積りの内容の精査、さらには工期設定の結果として時間外の労働時間状況の把握などを行い、工事ごとに個別に判断することになるため、深掘りした情報収集や調査を行うものとする。また、今年度は受発注者間の契約締結状況について確認を行い、個々の工期の実態を把握したうえで、発注者に対しても必要な注意喚起を行うものとする。 - 価格転嫁
昨今の資機材の高騰を踏まえた適正な価格設定及び適切な協議は大変重要であり、不適正な請負代金の設定による請負契約は建設業法に違反するおそれがあることから、請負契約における請負代金の変更に関する規定(いわゆるス
ライド条項等)の適切な設定・運用状況について確認を行うものとする。また、受発注者間についても同様の確認を行い、発注者に対しても状況に応じて適切な対応等の要請や必要な注意喚起を行っていくこととする。 - 下請代金の支払手段
「下請代金のうち労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮をしなければならない」と建設業法において規定されていることから、下請負人への代金の支払いのうち労務費相当分の支払い状況等について確認を行うものとする。また、手形に関し、更なる手形期間の短縮、割引料等のコスト負担を下請業者に負担させないこと等が盛り込まれた「下請代金の支払手段について」(令和3年3月31日付け中小企業庁・公正取引委員会)の通達を踏まえて建設業法令遵守ガイドラインを改訂したところであり、必要な周知を実施する。
- 技能労働者への適切な水準の賃金支払い
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また、【その他】として、(1)建設業を支える担い手の確保、(2)規制逃れを目的とした一人親方対策、(3)新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、建設現場等の実態に応じた新型コロナウイルス感染予防対策を行う際の基本的事項を定めた「建設業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」(令和3年5月12日改訂)の周知と本ガイドラインに沿った対応を求めること、が挙げられています。
令和3年度の建設業取引適正化推進期間はいつ?
毎年 11 月が「建設業取引適正化推進月間」とされ、建設業の法令遵守に向けた普及・啓発がされていましたが、令和2年度からは、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を踏まえて、10月から 12月の3ヶ月間を「建設業取引適正化推進期間」として実施されています。 令和4年度も引き続き、10月から12月が「建設業取引適正化推進期間」として実施されるようです。立入検査等の実施もこの期間に集中することになると思いますので、十分な対策が必要です。
»「令和3年度「建設業法令遵守推進本部」の活動結果及び令和4年度の活動方針」
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