建設業法令遵守ブログ

【建設業法】関連コラム

【建設業許可事務ガイドライン】建設業許可の区分~営業所について

寺嶋紫乃

行政書士

寺嶋紫乃

行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。

今回は、建設業許可の区分を見ていきます。基本的な内容ではありますが、お客様の話や相談を聞いていると、十分理解できていない部分、誤解している部分があると感じます。

1.大臣許可と知事許可

国土交通大臣の許可と都道府県知事の許可の区分については、二以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業しようとする場合には国土交通大臣の許可、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業しようとする場合には都道府県知事の許可となることは、みなさんご承知のことと思います。

国土交通大臣の許可と都道府県知事の許可の違いは、営業所の数ではなく営業所が設けられている「都道府県の数」になります。よくある勘違いとしては、大臣許可じゃないと全国で工事ができないというものです。営業所は1ヶ所しか無くても、工事は全国どこでも施工可能です。施工できる場所に違いはありません。

2.営業所の範囲について

建設業法上の「営業所」とは、本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所のことを言います。名称は関係なく、実態で判断します。つまり、本店又は支店は常時建設工事の請負契約を締結する事務所でない場合であっても、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行う等建設業に係る営業に実質的に関与するものである場合には、当然、建設業法上の「営業所」に該当することになります。建設業法上の「営業所」であれば、届出等の手続きをして営業所も建設業許可を取得する必要があるということです。

「常時請負契約を締結する事務所」とは、請負契約の見積り、入札、狭義の契約締結等請負契約の締結に係る実体的な行為を行う事務所のことを指します。契約書の名義人が当該事務所を代表する者であるか否かは問いません。よくある勘違いが、見積書の作成を許可が無い営業所等で作成し発行している行為です。この行為は無許可営業となり建設業法違反に該当します。見積書の作成も請負契約の締結行為の一部であるため、建設業許可が無い営業所等では行うことができません。

また、許可を受けた業種については軽微な建設工事のみを請け負う場合であっても、届出をしている営業所以外においては当該業種について営業することはできません。この一文が非常に重要です。ここを十分に理解せず営業している建設業者が多く存在しています。

例をあげて、具体的に解説します。以下の株式会社名南建設の許可を見てください。

株式会社名南建設
特定:建築一式、内装仕上  一般:防水
営業所:本店(建、内、防)3業種
    東京支店(建築、内装)2業種

株式会社名南建設が1000万円の防水工事を請負う場合、許可がある本店であれば請負契約を締結でき、許可がない東京支店では請負契約はできないという点は問題無いでしょうか。
では、450万円の軽微な防水工事の請負契約の場合はどうでしょうか。この場合も、許可がある本店であれば請負契約の締結ができますが、許可がない東京支店では防水工事の請負契約は締結できません。なぜなら「許可を受けた業種については軽微な建設工事のみを請け負う場合であっても、届出をしている営業所以外においては当該業種について営業することはできません。」という、この一文があるからです。
株式会社名南建設は本店で防水工事業の許可を持っているため、他の営業所でも防水工事を請負いたい場合には防水工事業の許可を取得する必要があります。この考え方は500万円未満の軽微な工事であっても同様です。いずれかの営業所で許可を持っている業種については、その業種の許可を持っている営業所でしか請負契約を締結できないということです。

営業所の数が多く営業所ごとに許可業種が異なる建設業者の場合、どの営業所でどの工事なら請負契約を締結できるのか、しっかり整理して管理する必要があります。