建設業法令遵守ブログ

【建設業法】関連コラム

【建設業法令遵守ガイドライン】不当に低い請負代金

寺嶋紫乃

行政書士

寺嶋紫乃

行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。

令和2年10月の建設業法の改正に伴い「建設業法令遵守ガイドライン」も改訂されました。改訂された部分を中心に、建設業法令遵守のために注意すべき事項を見ていきます。

Case1.元請負人が、自らの予算額のみを基準として、下請負人との協議を行うことなく、下請負人による見積額を大幅に下回る額で下請契約を締結した。
Case2.元請負人が、契約を締結しない場合には今後の取引において不利益な取り扱いをする可能性がある旨を示唆して、下請負人との従来の取引価格を大幅に下回る額で、下請契約を締結した。
Case3.元請負人が、下請代金の増額に応じることなく、下請負人に対し追加工事を施工させた。
Case4.元請負人が、契約後に、取り決めた代金を一方的に減額した。
Case5.下請負人に対して、発注者提出用に法定福利費を適正に見積もった見積書を作成させ、実際には法定福利費等を削除した見積書に基づき契約を締結した。

Case1.~Case.5いずれの場合にも、建設業法第19条の3に違反するおそれがあります。

不当に低い請負代金の禁止
第十九条の三 注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。

【注意点1】不当に低い請負代金の禁止
「不当に低い」とは、通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額のことをいいます。このような請負金額で契約を締結することを禁止しています。

【注意点2】通常必要と認められる原価
請負金額の不当性を判断する基準に、「通常必要と認められる原価」というものがあります。工事をその地域で施工するにあたり、一般的に必要となる価格のことをいい、直接工事費・間接工事費・一般管理費の合計額を指します。
具体的には、下請負人の実行予算・下請負人の再下請け先・資材業者等の取引状況・現場地域における同種工事の請負代金の実例等によって判断します。

【注意点3】自己の取引上の地位の不当利用禁止
元請負人は、工事の取引上、下請負人に対して優越な地位にあります。その地位を利用して、下請負人に経済的に不当に圧迫するような取引等を強制してはいけません。

「取引上の優越な地位」とは
下請負人にとって、元請負人との取引の継続が困難になると自社の事業経営に大きなダメージを生じます。一方で、元請負人は下請負人に一方的で著しく不利益な要請を行っても、その建設業者に断られれば他の建設業者を、と契約締結をしてくれる先を選ぶことができます。そのため取引継続のために、下請負人は元請業者の要請を受け入れざるを得ないこととなります。このような関係性にある元請人を取引上の優越な地位といいます。
ただし、元請負人すべてが取引上優越な地位に該当するわけではなく、元請下請間の取引依存度等で判断します。

「地位の不当利用」とは
元請負人が元請という地位を不当に利用したかどうかは、下請負人の指名権や選択権等を背景に、下請負人を経済的に不当に圧迫するような取引等を行ったかどうか、下請代金の額の決定にあたり元請下請間で十分な協議が行われたどうか、という対価の決定方法等で判断されます。

建設業法第19条の3不当に低い請負代金の禁止については、前回のブログ「工期変更に伴う増加費用」も併せてご確認ください。

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