手形支払いに関する建設業法等のルールについて解説
行政書士
寺嶋紫乃
行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。
下請代金の支払いに関して、建設業法やガイドラインではどのようなルールがあるのかを見ていきたいと思います。
下請代金の支払い手段
建設業法では、下請代金の支払い手段についていくつかルールを設けています。まず、建設業法第24条の3第2項に次のとおり規定されています。
建設業法第24条の3第2項(下請代金の支払)
2 前項の場合において、元請負人は、同項に規定する下請代金のうち労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮をしなければならない。
禁止されている支払い手段はありませんが、労務費の支払いについては「現金払い」をするよう配慮義務が課されています。
ちなみに、ここで言う「現金」とは現金そのものだけでなく、銀行振込や小切手など、すぐに現金化できるものが「現金」に含まれます。
手形支払いに関しては注意
先にみたとおり、労務費の支払いについては配慮義務があるものの、建設業法では支払い手段に制限がありません。しかし、手形で支払いを行う場合には「手形サイト」に注意が必要です。
「手形サイト」とは、手形の交付日から手形の入金日までの期間のことです。つまり手形サイトの期間中は、手形を現金化することができないということになります。そうすると、長期間現金化できない手形支払いを受けた下請業者は資金繰りに困ることになります。
そのため、建設業法第24条の6第3項で手形サイトに関して次のとおり規定しています。
建設業法第24条の6(特定建設業者の下請代金の支払期日等)
3 特定建設業者は、当該特定建設業者が注文者となつた下請契約に係る下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付してはならない。
現金化をすることに日にちを要する手形を交付することは、建設業法で禁止されています。では、具体的にどの程度の期間を設けていると割引困難な手形と判断され建設業法違反となるのでしょうか。この答えは、国土交通省が策定した「建設業法令遵守ガイドライン」に記載されています。
11.長期手形
割引を受けることが困難な長期手形の交付は建設業法に違反
元請負人が手形期間60日を超える長期手形を交付した場合は、「割引を受けることが困難である手形の交付」と認められる場合があり、その場合には建設業法第24条の6第3項に違反する。
60日を超える手形サイトを設けた手形での支払いは、建設業法違反となりますので手形サイトを見直しできるだけ短縮するようにしてください。
ただ、この手形サイトに関するルールは、元請負人が特定建設業者であり下請負人が資本金4,000 万円未満の一般建設業者である場合に限られます。
まとめ
労務費の現金支払いや手形サイトを60日以内としている理由は、下請業者の資金繰りの負担を軽減することにあります。下請業者を苦しめることが無いよう、支払いにおける法令遵守状況を確認してみましょう。
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