建設業法令遵守ブログ

【建設業法】条文解説

建設業法第29条「許可の取消し」、第29条の2解説

大野裕次郎

社員行政書士・東京事務所所長

大野裕次郎

建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。

建設業法第29条は、建設業者に対する監督処分のうち、最も重い処分である「許可の取消し」について定めた条文です。また、第29条の2は、建設業者の営業所や役員等の所在が確知できない場合における許可の取消しについて定めています。許可の取消しは、建設業の営業自体ができなくなる極めて重い処分であり、事業継続の可否を左右する重大な効果を持ちます。そこで本コラムでは、建設業法第29条および第29条の2の条文を確認したうえで、取消事由の内容と用語の意味、実務上留意すべきポイントを整理します。

建設業法第29条・第29条の2の条文

はじめに、根拠条文である建設業法第29条および第29条の2を確認します。第29条第1項は、監督行政庁が「取り消さなければならない」場合を列挙した必要的取消事由であるのに対し、第29条第2項および第29条の2は「取り消すことができる」場合を定めた裁量的取消事由である点に、まず注意が必要です。

(許可の取消し)
第二十九条 国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該建設業者の許可を取り消さなければならない。
一 一般建設業の許可を受けた建設業者にあつては第七条第一号又は第二号、特定建設業者にあつては同条第一号又は第十五条第二号に掲げる基準を満たさなくなつた場合
二 第八条第一号又は第七号から第十四号まで(第十七条において準用する場合を含む。)のいずれかに該当するに至つた場合
三 第九条第一項各号(第十七条において準用する場合を含む。)のいずれかに該当する場合(第十七条の二第一項から第三項まで又は第十七条の三第四項の規定により他の建設業者の地位を承継したことにより第九条第一項第三号(第十七条において準用する場合を含む。)に該当する場合を除く。)において一般建設業の許可又は特定建設業の許可を受けないとき。
四 許可を受けてから一年以内に営業を開始せず、又は引き続いて一年以上営業を休止した場合
五 第十二条各号(第十七条において準用する場合を含む。)のいずれかに該当するに至つた場合
六 死亡した場合において第十七条の三第一項の認可をしない旨の処分があつたとき。
七 不正の手段により第三条第一項の許可(同条第三項の許可の更新を含む。)又は第十七条の二第一項から第三項まで若しくは第十七条の三第一項の認可を受けた場合
八 前条第一項各号のいずれかに該当し情状特に重い場合又は同条第三項若しくは第五項の規定による営業の停止の処分に違反した場合
2 国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が第三条の二第一項の規定により付された条件に違反したときは、当該建設業者の許可を取り消すことができる。
第二十九条の二 国土交通大臣又は都道府県知事は、建設業者の営業所の所在地を確知できないとき、又は建設業者の所在(法人である場合においては、その役員の所在をいい、個人である場合においては、その支配人の所在を含むものとする。)を確知できないときは、官報又は当該都道府県の公報でその事実を公告し、その公告の日から三十日を経過しても当該建設業者から申出がないときは、当該建設業者の許可を取り消すことができる。
2 前項の規定による処分については、行政手続法第三章の規定は、適用しない。

第29条は建設業者に対する監督処分のうち、許可の取消しについて定めた規定です。また、第29条の2は、建設業者の営業所の所在地または建設業者の所在を確知できない場合における建設業許可の取消しについて定められています。

建設業法上の許可取消処分の位置づけ

次に、許可取消処分の位置づけを整理します。建設業法上の行政処分には、軽い順に「指示処分」「営業停止処分」「許可取消処分」の3種類があり、許可取消処分はこのうち最も重い処分です。取消しを受けた場合、建設業者は建設業を営むための法的資格そのものを失うことになるため、事業継続そのものが不可能となります。

さらに、許可取消処分の事実は、指示処分や営業停止処分と同様に、国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」において公表される取扱いです(出典:国土交通省「ネガティブ情報等検索サイト」https://www.mlit.go.jp/nega-inf/)。したがって、取消しを受けた事実は取引先や金融機関にも即座に把握されることになり、その影響は極めて大きいと言えます。

加えて、建設業法第8条各号に該当する取消事由(不正の手段による許可取得、営業停止処分違反等)による取消しを受けた場合、原則として取消しの日から5年間は再び建設業許可を取得できません(建設業法第8条参照)。この点は、実務上とりわけ注意すべきポイントです。

第29条第1項各号(必要的取消事由)の内容

ここからは、第29条第1項各号に定められた必要的取消事由について、条文に登場する用語を確認しながら整理します。これらに該当した場合、監督行政庁は許可を「取り消さなければならない」とされており、裁量の余地はありません。

第1号:許可要件を欠いた場合

第1号は、「一般建設業の許可を受けた建設業者にあつては第七条第一号又は第二号、特定建設業者にあつては同条第一号又は第十五条第二号に掲げる基準を満たさなくなつた場合」と定められています。一般建設業許可、特定建設業許可のいずれの場合も、許可を受けた建設業に関して、建設業許可の要件である「常勤役員等」や「営業所技術者等」を欠いた状態を指します。

ただし、常勤役員等や営業所技術者等が死亡や退職等で不在となった場合であっても、経験や資格を有する後任者を配置し、変更届を提出することができれば、要件を欠いたことにはなりません。したがって、これらの人的要件については、日常的にモニタリングを行い、欠員が生じる可能性を早期に把握しておくことが重要です。

第2号:許否事由に該当した場合

第2号は、「第八条第一号又は第七号から第十四号までのいずれかに該当するに至つた場合」と定められており、建設業許可の欠格要件(許否事由)に該当することとなった場合を指します。具体的には、役員等が禁錮以上の刑に処せられた場合や、建設業法違反により罰金刑を受けた場合、暴力団員等に該当することとなった場合などが典型例です。

第3号:許可換えを行わない場合

第3号は、大臣許可・知事許可の区分に変動が生じたにもかかわらず、必要な許可換えの手続きがされない場合を指します。たとえば、以下のケースが該当します。

  • 国土交通大臣許可業者が、1つの都道府県の区域内にのみ営業所を有することとなったとき
  • 都道府県知事許可業者が、2以上の都道府県の区域内に営業所を有することとなったとき 等

これらは本来、許可換え新規の手続きを行うべきケースです。手続きを行わないまま放置した場合、許可取消しの対象となります。

第4号:営業開始しない、または長期休業した場合

第4号は、「許可を受けてから一年以内に営業を開始せず、又は引き続いて一年以上営業を休止した場合」と定められています。建設業許可は事業活動を継続的に行うことを前提として付与されるものであるため、実態として営業が行われていない状態が続く場合には、許可を維持する意義がないとされているためです。

第5号:廃業等の事由に該当した場合

第5号は、「第十二条各号のいずれかに該当するに至つた場合」を指します。具体的には次のいずれかに該当する場合です。

  • 建設業者である個人事業主が死亡したとき
  • 建設業者である法人が合併により消滅したとき
  • 建設業者である法人が破産手続開始の決定により解散したとき
  • 建設業者である法人が合併又は破産手続開始の決定以外の事由により解散したとき
  • 建設業を廃止したとき

これらの事由に該当した場合、原則として廃業届の提出が必要となります。

第6号:相続の認可がされなかった場合

第6号は、建設業者である個人が死亡した場合において、相続人による事業承継の認可(第17条の3第1項)がされない旨の処分があったときを指します。相続による事業承継制度は令和2年10月施行の改正建設業法により導入された制度であり、相続開始後30日以内に認可申請を行うことで、相続人が被相続人の建設業者としての地位を承継できる仕組みです。

第7号:不正手段により許可等を受けた場合

第7号は、不正の手段により建設業許可、許可の更新、または事業承継の認可を受けた場合を指します。たとえば、実態のない技術者を専任技術者として届け出て許可を取得したケースや、経営業務の管理責任者の経験を偽って申請したケース等が典型例です。この場合、取消しから5年間は再取得ができない極めて重い効果が生じます。

第8号:情状が特に重い場合等

第8号は、第28条第1項各号のいずれかに該当し情状が特に重い場合、または営業停止処分に違反した場合を指します。すなわち、指示処分や営業停止処分の対象となる違反行為のうち、悪質性が高いと判断された場合には、より重い許可取消処分が科されるという構造です。

第29条第2項(裁量的取消事由)と条件違反

第29条第2項は、建設業許可に付された条件に違反した場合の取消しについて定めています。建設業法第3条の2第1項では、監督行政庁は許可に条件を付し、およびこれを変更することができるとされており、当該条件は「建設業の適正な運営を確保するため必要な最小限度のもの」でなければなりません。

第29条第1項各号が「取り消さなければならない」と定めているのに対し、第2項は「取り消すことができる」と定められています。したがって、条件違反の内容や情状に応じて、監督行政庁が取消しの要否を判断する仕組みとなっています。

第29条の2:所在不明の場合の許可取消し

第29条の2は、建設業者の営業所や役員等の所在が確知できない場合に、公告手続きを経て許可を取り消すことができる旨を定めた規定です。具体的には、次の場合が対象となります。

「建設業者の営業所の所在地を確知できないとき」の意義

本店または支店、もしくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所の存在する場所が不明確な場合を指します。たとえば、届出上の営業所を訪ねても実体がなく、連絡もつかないといった状況が典型例です。

「建設業者の所在を確知できないとき」の意義

法人の場合は役員の所在が、個人の場合は本人または支配人の所在が不明確な場合を指します。役員全員と連絡がつかない、あるいは所在が全く把握できないといった状況が該当します。

手続きの流れ

所在が確知できない場合、監督行政庁は官報または当該都道府県の公報でその事実を公告し、公告の日から30日を経過しても建設業者からの申出がないときに、許可を取り消すことができます。なお、この処分については、行政手続法第3章(不利益処分に関する手続)の規定は適用されません(第29条の2第2項)。これは、そもそも通知先である建設業者の所在が不明であるため、聴聞や弁明の機会の付与といった手続きを行うことが事実上不可能であるためです。

まとめ:許可取消しリスクを防ぐための実務対応

ここまで、建設業法第29条および第29条の2に定められた許可取消処分について、条文に沿って整理してきました。許可取消しは、建設業を営むための法的資格を失う極めて重い処分であり、その事実は国土交通省のネガティブ情報等検索サイトで公表されます。また、取消事由によっては5年間の再取得制限が生じるなど、事業への影響は長期にわたります。

そこで、建設業者としては、常勤役員等・営業所技術者等の人的要件のモニタリング、変更届・廃業届・許可換え手続きの適時実施、欠格要件に該当する事情の早期把握と対応など、日常的な管理体制の整備が不可欠です。建設業許可の維持や取消しリスクへの対応、社内体制整備についてご不安な点があれば、建設業許可・コンプライアンス支援を専門とする行政書士法人名南経営までお気軽にご相談ください。

お問い合わせはこちら
こんなお悩みありませんか?
  • 建設業法の研修を実施してほしい
  • 立入検査対応に不安がある
  • 建設業法に関する質問・相談がしたい
  • 建設業法改正に対応できているか不安

行政書士法人名南経営が解決への一歩をサポートいたします!