建設業法第28条「指示及び営業の停止」解説
行政書士
寺嶋紫乃
行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。
建設業法第28条は、建設業者が法令違反や不誠実な行為をした場合に、国土交通大臣または都道府県知事が行う「指示処分」および「営業停止処分」について定めた条文です。行政処分は罰則(刑罰)とは異なる仕組みで運用されており、処分を受けた事実は国土交通省のネガティブ情報等検索サイトに公表されるため、建設業者の信用にも直結します。そこで本コラムでは、建設業法第28条の条文をあらためて確認したうえで、指示処分と営業停止処分の内容、営業停止期間中の行為制限までを整理します。
建設業法第28条(指示及び営業の停止)の条文
はじめに、根拠条文である建設業法第28条を確認します。なお、同条は、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成12年法律第127号。以下「入札契約適正化法」といいます。)や、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(平成19年法律第66号。以下「履行確保法」といいます。)の違反も対象としている点が特徴です。
(指示及び営業の停止)
第二十八条 国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定(第十九条の三、第十九条の四、第二十四条の三第一項、第二十四条の四、第二十四条の五並びに第二十四条の六第三項及び第四項を除き、入札契約適正化法第十五条第一項の規定により読み替えて適用される第二十四条の八第一項、第二項及び第四項を含む。第四項において同じ。)、入札契約適正化法第十五条第二項若しくは第三項の規定若しくは履行確保法第三条第六項、第四条第一項、第七条第二項、第八条第一項若しくは第二項若しくは第十条第一項の規定に違反した場合においては、当該建設業者に対して、必要な指示をすることができる。特定建設業者が第四十一条第二項又は第三項の規定による勧告に従わない場合において必要があると認めるときも、同様とする。
一 建設業者が建設工事を適切に施工しなかつたために公衆に危害を及ぼしたとき、又は危害を及ぼすおそれが大であるとき。
二 建設業者が請負契約に関し不誠実な行為をしたとき。
三 建設業者(建設業者が法人であるときは、当該法人又はその役員等)又は政令で定める使用人がその業務に関し他の法令(入札契約適正化法及び履行確保法並びにこれらに基づく命令を除く。)に違反し、建設業者として不適当であると認められるとき。
四 建設業者が第二十二条第一項若しくは第二項又は第二十六条の三第九項の規定に違反したとき。
五 第二十六条第一項又は第二項に規定する主任技術者又は監理技術者が工事の施工の管理について著しく不適当であり、かつ、その変更が公益上必要であると認められるとき。
六 建設業者が、第三条第一項の規定に違反して同項の許可を受けないで建設業を営む者と下請契約を締結したとき。
七 建設業者が、特定建設業者以外の建設業を営む者と下請代金の額が第三条第一項第二号の政令で定める金額以上となる下請契約を締結したとき。
八 建設業者が、情を知つて、第三項の規定により営業の停止を命ぜられている者又は第二十九条の四第一項の規定により営業を禁止されている者と当該停止され、又は禁止されている営業の範囲に係る下請契約を締結したとき。
九 履行確保法第三条第一項、第五条又は第七条第一項の規定に違反したとき。
2 都道府県知事は、その管轄する区域内で建設工事を施工している第三条第一項の許可を受けないで建設業を営む者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該建設業を営む者に対して、必要な指示をすることができる。
一 建設工事を適切に施工しなかつたために公衆に危害を及ぼしたとき、又は危害を及ぼすおそれが大であるとき。
二 請負契約に関し著しく不誠実な行為をしたとき。
3 国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が第一項各号のいずれかに該当するとき若しくは同項若しくは次項の規定による指示に従わないとき又は建設業を営む者が前項各号のいずれかに該当するとき若しくは同項の規定による指示に従わないときは、その者に対し、一年以内の期間を定めて、その営業の全部又は一部の停止を命ずることができる。
4 都道府県知事は、国土交通大臣又は他の都道府県知事の許可を受けた建設業者で当該都道府県の区域内において営業を行うものが、当該都道府県の区域内における営業に関し、第一項各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定、入札契約適正化法第十五条第二項若しくは第三項の規定若しくは履行確保法第三条第六項、第四条第一項、第七条第二項、第八条第一項若しくは第二項若しくは第十条第一項の規定に違反した場合においては、当該建設業者に対して、必要な指示をすることができる。
5 都道府県知事は、国土交通大臣又は他の都道府県知事の許可を受けた建設業者で当該都道府県の区域内において営業を行うものが、当該都道府県の区域内における営業に関し、第一項各号のいずれかに該当するとき又は同項若しくは前項の規定による指示に従わないときは、その者に対し、一年以内の期間を定めて、当該営業の全部又は一部の停止を命ずることができる。
6 都道府県知事は、前二項の規定による処分をしたときは、遅滞なく、その旨を、当該建設業者が国土交通大臣の許可を受けたものであるときは国土交通大臣に報告し、当該建設業者が他の都道府県知事の許可を受けたものであるときは当該他の都道府県知事に通知しなければならない。
7 国土交通大臣又は都道府県知事は、第一項第一号若しくは第三号に該当する建設業者又は第二項第一号に該当する第三条第一項の許可を受けないで建設業を営む者に対して指示をする場合において、特に必要があると認めるときは、注文者に対しても、適当な措置をとるべきことを勧告することができる。
このように、第28条は「指示」と「営業停止」という2種類の処分を、監督行政庁が行使できる根拠となっています。
建設業法上の行政処分の全体像
次に、建設業法上の行政処分の位置づけを整理します。建設業者が法令に違反した場合、監督権を持つ行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)は、その内容に応じて処分を行います。行政処分は行政上の監督権限に基づき行われるものであり、刑事罰である「罰則」とは目的も手続も異なる点に注意が必要です。
建設業法上の行政処分は、以下の3種類に大別されます。
- 指示処分(建設業法第28条第1項・第2項)
- 営業停止処分(建設業法第28条第3項・第5項)
- 許可取消処分(建設業法第29条)
このうち、本条(第28条)では「指示処分」と「営業停止処分」が定められています。いずれの処分にも拘束力があり、処分を受けた事実は、国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」において公表される取扱いです(出典:国土交通省「ネガティブ情報等検索サイト」https://www.mlit.go.jp/nega-inf/)。したがって、処分を受けた事実は取引先や発注者にも容易に把握されることとなり、経営面への影響は決して小さくありません。
また、処分の運用基準としては、国土交通省が策定した「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」があり、違反行為の類型ごとに、指示・営業停止・許可取消しのいずれを選択するか、営業停止の期間はどの程度とするかといった目安が示されています(出典:国土交通省「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」)。
指示処分とは
指示処分とは、建設業法違反や不適正な行為を是正するため、必要な措置を命ずる処分をいいます。行政処分の中では最も軽い処分に位置づけられていますが、単なる「行政指導」ではなく、法律上の拘束力を持つ「行政処分」である点が重要です。したがって、処分を受けた建設業者は、指示された内容を確実に履行する義務を負うことになります。
指示処分が行われる代表的なケースは、第28条第1項および第2項に列挙されており、たとえば以下のような場面が想定されます。
- 建設工事を適切に施工しなかったために、公衆に危害を及ぼした場合、または危害を及ぼすおそれが大きい場合
- 請負契約に関して不誠実な行為をした場合
- 他法令違反により、建設業者として不適当であると認められる場合
- 建設業許可を受けていない者と下請契約を締結した場合(いわゆる無許可業者との下請契約)
なお、指示処分に従わない場合には、次に述べる営業停止処分へと段階が引き上げられることになります。
営業停止処分とは
営業停止処分は、指示処分に従わない場合、または法令違反等の内容が重い場合に、一定の期間、建設業の営業を停止させる処分です。処分期間は、建設業法第28条第3項および第5項の規定に基づき、1年以内の期間を定めて行われます。
営業停止処分は、地域限定・業種限定・公共工事限定など、対象範囲を限定して行われることもあります。そのため、処分の内容を正確に把握し、禁止される行為と継続可能な行為を明確に区別することが不可欠です。
営業停止期間中に禁止される行為
営業停止処分を受けた場合、処分期間中は、原則として以下の行為を行うことができません。
- 新たな建設工事の請負契約の締結(仮契約等に基づく本契約の締結を含みます)
- 処分を受ける前に締結された請負契約の変更のうち、工事の追加に係るもの(工事の施工上、特に必要があると認められるものを除きます)
- 上記および営業停止期間満了後における新たな請負契約の締結に関連する入札、見積り、交渉等
- 営業停止処分に地域限定が付されている場合は、当該地域内における上記各行為
- 営業停止処分に業種限定が付されている場合は、当該業種に係る上記各行為
- 営業停止処分に公共工事またはそれ以外の工事に係る限定が付されている場合は、当該区分に係る上記各行為
営業停止期間中でも行える行為
一方で、営業停止処分が発注者や下請業者に過度な負担を及ぼさないよう、以下の行為については処分期間中であっても行うことができます。
- 建設業許可、経営事項審査、入札参加資格審査の申請
- 処分を受ける前に締結された請負契約に基づく建設工事の施工
- 施工の瑕疵に基づく修繕工事等の施工
- アフターサービス保証に基づく修繕工事等の施工
- 災害時における緊急を要する建設工事の施工
- 請負代金等の請求、受領、支払等
- 企業運営上、必要な資金の借入れ等
これらの取扱いが認められているのは、受注者が営業停止となって工事が完全に止まってしまうと、発注者や工事関係者にかえって大きな負担を及ぼしかねないためです。したがって、既に締結済みの建設工事については、そのまま施工を続けることが認められています。
注文者に対する勧告
建設業法第28条第7項では、指示処分に関連して、監督行政庁が注文者に対して勧告を行うことができる旨が定められています。これは、法令違反等の原因が建設業者側だけでなく、発注する側の姿勢や契約条件に起因している場合も少なくないため、注文者の行動にも一定の是正を促す趣旨の規定です。
具体的には、次の場合において、国土交通大臣または都道府県知事が建設業者に対して指示をする際、特に必要があると認めるときは、注文者に対しても適当な措置をとるよう勧告することができます。
- 建設業者が建設工事を適切に施工しなかったために、公衆に危害を及ぼした、または危害を及ぼすおそれが大きい場合(第28条第1項第1号)
- 建設業者が他の法令に違反し、建設業者として不適当であると認められる場合(第28条第1項第3号)
- 許可を受けないで建設業を営む者が、建設工事を適切に施工しなかったために、公衆に危害を及ぼした、または危害を及ぼすおそれが大きい場合(第28条第2項第1号)
ここでいう「勧告」は、指示処分や営業停止処分のような法律上の拘束力を持つ行政処分とは異なり、注文者の任意の協力を求める性質のものです。もっとも、公的機関から勧告を受けたという事実は、注文者側の社会的な信用や、以後の発注姿勢に大きな影響を及ぼすため、実務上は無視できない意味を持ちます。
また、注文者への勧告制度が設けられている背景には、建設業法が「発注者・元請・下請」という重層的な取引構造を前提としており、単に建設業者だけを規制しても不良な工事や不当な取引条件を根絶できないという問題意識があります。そのため、建設業法第19条の3以下の「不当に低い請負代金の禁止」等の規定と併せて、発注者側の行動をも間接的にコントロールする仕組みとして機能しています。
まとめ:処分リスクを踏まえたコンプライアンス体制の重要性
ここまで、建設業法第28条に定められた「指示処分」と「営業停止処分」について、条文と運用の両面から整理してきました。指示処分は行政処分の中でも比較的軽微な位置づけではあるものの、履行しなければ営業停止処分へと段階が引き上げられ、さらに重大な違反であれば許可取消処分(建設業法第29条)に至る可能性もあります。加えて、処分の事実は国土交通省のネガティブ情報等検索サイトを通じて公表され、取引先や金融機関からの信用にも影響を及ぼします。
そこで、建設業者としては、日常的に建設業法および関連法令の遵守状況を点検し、社内でのコンプライアンス体制を継続的に整備していくことが不可欠です。建設業法上の処分リスクや社内体制整備についてご不安な点があれば、建設業許可・コンプライアンス支援を専門とする行政書士法人名南経営までお気軽にご相談ください。
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