建設業法令遵守ブログ

【建設業法】条文解説

建設業法第26条「主任技術者及び監理技術者の設置等」解説

寺嶋紫乃

行政書士

寺嶋紫乃

行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。

条文の確認

まずは、主任技術者・監理技術者の設置に関する建設業法の条文を確認しましょう。

主任技術者及び監理技術者の設置等)
第二十六条 建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。
2 発注者から直接建設工事を請け負つた特定建設業者は、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が第三条第一項第二号の政令で定める金額以上になる場合においては、前項の規定にかかわらず、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロ又はハに該当する者(当該建設工事に係る建設業が指定建設業である場合にあつては、同号イに該当する者又は同号ハの規定により国土交通大臣が同号イに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者)で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「監理技術者」という。)を置かなければならない。
3 公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、前二項の規定により置かなければならない主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに、専任の者でなければならない。ただし、次に掲げる主任技術者又は監理技術者については、この限りでない。
一 当該建設工事が次のイからハまでに掲げる要件のいずれにも該当する場合における主任技術者又は監理技術者
イ 当該建設工事の請負代金の額が政令で定める金額未満となるものであること。
ロ 当該建設工事の工事現場間の移動時間又は連絡方法その他の当該工事現場の施工体制の確保のために必要な事項に関し国土交通省令で定める要件に適合するものであること。
ハ 主任技術者又は監理技術者が当該建設工事の工事現場の状況の確認その他の当該工事現場に係る第二十六条の四第一項に規定する職務を情報通信技術を利用する方法により行うため必要な措置として国土交通省令で定めるものが講じられるものであること。
二 当該建設工事の工事現場に、当該監理技術者の行うべき第二十六条の四第一項に規定する職務を補佐する者として、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロ又はハに該当する者に準ずる者として政令で定める者を専任で置く場合における監理技術者
4 前項ただし書の規定は、同項各号の建設工事の工事現場の数が、同一の主任技術者又は監理技術者が各工事現場に係る第二十六条の四第一項に規定する職務を行つたとしてもその適切な遂行に支障を生ずるおそれがないものとして政令で定める数を超えるときは、適用しない。
5 第三項の規定により専任の者でなければならない監理技術者(同項各号に規定する監理技術者を含む。次項において同じ。)は、第二十七条の十八第一項の規定による監理技術者資格者証の交付を受けている者であつて、第二十六条の六から第二十六条の八までの規定により国土交通大臣の登録を受けた講習を受講したもののうちから、これを選任しなければならない。
6 前項の規定により選任された監理技術者は、発注者から請求があつたときは、監理技術者資格者証を提示しなければならない。

建設業者は、建設工事の適正な施工を確保するため、工事現場に、一定の資格・実務経験を有する技術者を設置しなければならないとされています。

主任技術者と監理技術者の違い

建設業者は、請負金額の大小、元請・下請に関わらず、必ず工事現場に「主任技術者」を設置しなければなりません。

そして、発注者から直接工事を請け負い、かつ、5,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上を下請契約して施工する特定建設業者の場合は、主任技術者に代えて「監理技術者」を設置しなければなりません。

出典:関東地方整備局「建設工事の適正な施工を確保するための建設業法 (R7.2版)」

主任技術者と監理技術者に求められる資格・実務経験

主任技術者は、一般建設業許可の営業所技術者と同じ資格要件です。

監理技術者は、特定建設業許可の特定営業所技術者と同じ資格要件です。


出典:関東地方整備局「建設工事の適正な施工を確保するための建設業法 (R7.2版)」

専任が求められる工事

公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で、工事一件の請負金額が4,500万円(建築一式工事の場合は9,000万円)以上のものについては、当該工事に設置される主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに専任でなければなりません。

「公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事」とは、個人住宅・長屋を除くほとんどの施設に関する工事が対象となります。

また、「専任」とは、他の工事現場に係る職務を兼務せず、常時継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事していることをいいます。

監理技術者資格者証

専任で設置される監理技術者は、「監理技術者資格者証」の交付を受けていて「監理技術者講習」を修了している者から選任しなければなりません。


出典:関東地方整備局「建設工事の適正な施工を確保するための建設業法 (R7.2版)」

主任技術者・監理技術者の専任の緩和


元請として工事を受注し、下請契約の総額が5,000万円以上(建築一式工事の場合は8,000万円以上)となる工事の場合は監理技術者の設置が求められます。
監理技術者を設置しなければならない工事以外の工事には主任技術者を設置します。
建設業法では元請、下請問わず、請負金額が4,500万円以上(建築一式の場合は9,000万円以上)の場合、配置する技術者は「専任」でなければならないため、監理技術者の設置義務がある工事については、監理技術者は必ずその工事に専任となります。

限りある人材の有効活用や担い手の確保、生産性向上等の背景から、主任技術者・監理技術者の専任要件の緩和が進められてきました。
以下では令和2年10月1日及び令和6年12月13日施行の改正建設業法により定められた、主任技術者・監理技術者を兼務させるための要件についてご説明します。

主任技術者・監理技術者を兼務させるための要件

主任技術者を兼務させることができるのは以下の3つのパターンです。

  1. 情報通信技術を活用し、現場管理を行う場合(専任特例1号)
  2. 密接な関係のある2以上の建設工事を同一の建設業者が同一の場所又は近接した場所において施工する場合
  3. 同一あるいは別々の発注者が、同一の建設業者と締結する契約工期の重複する複数の請負契約に係る工事であって、
    かつ、それぞれの工事の対象が同一の建築物又は連続する工作物である場合

監理技術者を兼務させることができるのは以下の3つのパターンです。

  1. 情報通信技術を活用し、現場管理を行う場合(専任特例1号)
  2. 監理技術者補佐を設置する場合(専任特例2号)
  3. 同一あるいは別々の発注者が、同一の建設業者と締結する契約工期の重複する複数の請負契約に係る工事であって、
    かつ、それぞれの工事の対象が同一の建築物又は連続する工作物である場合

主任技術者・監理技術者を兼務させるためのパターンについて詳しくは「建設業法における配置技術者の専任配置とは?期間や必要となる工事について解説
をご参照ください。

まとめ

建設工事を行う場合は、工事現場に一定の資格・実務経験を有する主任技術者または監理技術者を設置しなければならず、
元請、下請問わず、請負金額が4,500万円以上(建築一式の場合は9,000万円以上)の場合は配置する技術者の専任配置が必要です。
専任配置が必要な工事で主任技術者・監理技術者を兼務させる場合には、必要な要件をきちんと満たしている状態になければなりません。
主任技術者・監理技術者の設置に関してご相談のある方は、行政書士法人名南経営までお気軽にご相談ください。

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