建設業法令遵守ブログ

【建設業法】条文解説

建設業の無許可営業を行うとどうなる?

片岡詩織

行政書士

片岡詩織

行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可をはじめとする各種許認可手続きを担当し、担当件数は年間200件を超える。建設業者向けの研修や建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可のデューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務にも携わっている。

建設業では一定以上の規模の工事を請け負う場合には、建設業許可の取得が必要になります。建設業許可を取得せず、本来建設業許可が必要な建設工事を請け負った場合には、罰則の対象になる他、様々なデメリットもあります。
今回は、どのようなケースが無許可営業と見なされるのか、建設業を無許可で営業した場合の罰則、デメリットについて解説していきます。

建設業許可を取得せずに営業するとどうなる?

建設業は工事の適正な施工を確保するため、建設業法において「建設業許可」の制度が設けられています。

建設業法第3条(建設業の許可)
建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない

つまり、軽微な建設工事のみを請け負う場合には、建設業許可を取得する必要はありません。逆に言うと、建設業を営もうとする者は、軽微な建設工事のみを請け負う場合を除いて、建設業許可が必要です。建設業許可を取得せず、軽微な建設工事以外の工事を請け負った場合は、無許可営業となり建設業法違反となります。

建設業許可が不要な軽微な建設工事とは

軽微な建設工事とは以下に該当する工事をいいます。

建設工事の種類 軽微な建設工事
建築一式工事 次のいずれかに該当する工事
①工事1件の請負金額の額が1,500万円(税込)未満の工事
②請負代金の額に関わらず、延べ面積が150㎡未満の木造住宅を建設する工事
建築一式工事以外の工事 建築一式工事以外の工事 工事一件の請負代金の額が500万円(税込)未満の工事

詳しくは、「建設業許可が必要な請負金額とは?建設業法を基に解説」をご確認ください。

建設業の無許可営業となるケース

軽微な建設工事以外の工事を請け負った場合

建設業許可を取得せず軽微な建設工事以外の工事を請け負った場合には、無許可営業に該当します。軽微な建設工事か否かを判断する場合には、次の3つについて注意が必要です。
・消費税は請負代金に含む
・契約書を分割しても1つの契約として判断される
・発注者が材料を提供する場合、市場価格または市場価格および運送費を当該請負契約の請負代金の額に加えた金額を請負代金の額として判断する

建設業許可を有していない業種で軽微な建設工事以外の工事を請け負った場合

建設業許可を取得している場合でも、無許可営業を行ってしまう場合があります。
建設業は29の業種に分けられており、建設業許可はその業種ごとに許可を取得する制度となっています。
<建設業許可の業種>

土木工事業 建築工事業 大工工事業 左官工事業 とび・土工工事業
石工事業 屋根工事業 電気工事業 管工事業 タイル・れんが・ブロック工事業
鋼構造物工事業 時鉄筋王事業 舗装工事業 しゅんせつ工事業 板金工事業
ガラス工事業 塗装工事業 防水工事業 内装仕上工事業 機械器具設置工事業
熱絶縁工事業 電気通信工事業 造園工事業 さく井工事業 建具工事業
水道施設工事業 消防施設工事業 清掃施設工事業 解体工事業

建設業許可を取得したからと言って、どんな工事も制限なく請け負えるわけではなく、許可を取得した業種のみ、軽微な建設工事以外の工事請け負えるようになります。
特に「一式工事」と呼ばれる土木工事業、建築工事業については注意が必要で、「一式」だからと言って、すべての工事・作業ができるわけではありません。各専門工事の許可を有しない場合には、軽微ではない工事において、専門工事を単独で請け負うことはできず、一式工事ではなく専門工事に該当する工事を請け負ってしまうと、建設業の無許可営業に該当します。

建設業許可を有していない営業所で工事の請負契約を行った場合

建設業許可は建設業の営業を行う営業所毎に許可を取得する必要があります。
ここでいう営業所とは「常時請負契約の締結にかかる実体的な行為(見積・入札・契約等)を行う事務所」を言います。
例えば本社でしか建設業許可を取得していないにも関わらず、支店で建設業の見積や契約を行った場合には、建設業の無許可営業に該当します。

建設業の無許可営業を行った場合の罰則

建設業許可を適切に取得せず、無許可営業を行ってしまった場合、以下のような処分や罰則が考えられます。

・指示処分/営業停止処分/許可取消処分などの監督処分
・3年以下の懲役または300万円以下の罰金
・1億円以下の罰金(法人の場合)
・建設業許可を5年間受けられなくなる

無許可営業はその建設業の営業が出来なくなるだけでなく、懲役や罰金が科せられます。
また建設業許可の要件の1つに「欠格要件に該当しないこと」というものがあり、上記のような刑罰が科せられると、欠格要件に該当することとなり5年間は建設業許可を受けることが出来ません。建設業許可だけではなく他の許認可においても許可維持が出来なくなるなどの影響が出る可能性もあります。

建設業の無許可営業のデメリット

建設業許可を取得せず営業を行う場合には次のようなデメリットが考えられます。
・軽微な工事しか請け負うことが出来ない
・公共工事を請け負うことが出来ない
・下請業者として現場に入ることが出来ない可能性がある
・建設業者としての信用度が低くなる可能性がある
1つずつ詳しく見ていきましょう。

軽微な工事しか請け負うことが出来ない

建設業許可を取得せずに営業する場合には、軽微な建設工事しか請け負うことができません。軽微な建設工事とは、上記の通り一定未満の請負金額で行われる小規模な工事です。急に「軽微な工事以外の工事を請け負いたい」という状況になったとしても、許可がなければ請け負うことはできません。

公共工事の入札に参加できない

公共工事の入札に参加することが出来るのは、建設業許可を有し、経営事項審査を受けて建設業者に限定されています。

下請業者として現場に入ることが出来ない可能性がある

近年は、元請業者が下請業者を建設業許可業者に制限していることがあり、建設業許可を有していないと受注できない工事が発生する可能性があります。建設業許可を取得していないと取引先が限定されてしまう可能性があります。

建設業者としての信用度が低くなる可能性がある

建設業許可を取得するためには、次の6つの要件を満たしている必要があります。
・経営業務の管理責任者等を設置していること
・専任技術者の設置していること
・誠実性
・財産的基礎を満たしていること
・欠格要件に該当しないこと
・社会保険に加入していること

建設業許可を取得している業者は、必ず上記の要件をクリアしているため、一定の信用度があると判断されます。また金融機関から融資を受ける際にも、建設業許可を有していた方が有利であるといわれています。

まとめ

軽微な建設工事を除き、建設業の営業を行うためには必ず許可の取得が必要になります。また近年はコンプライアンスの観点から、発注者や元請業者から工事の発注にあたり建設業許可の取得を求められるケースも増えてきているようです。適法な建設業営業や事業拡大、顧客からの信頼獲得のためにも建設業許可の取得をご検討ください。許可取得について検討する際は、専門の行政書士に相談をすることをお勧めします。

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