建設業法令遵守ブログ

建設業許可の基礎知識

建設業法における「営業所」の定義とは?

大野裕次郎

社員行政書士・東京事務所所長

大野裕次郎

建設業に参入する上場企業の建設業許可取得や大企業のグループ内の建設業許可維持のための顧問などの支援をしている。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修や建設業法令遵守のコンサルティングも行っている。

一般的に「営業所」というと、企業が業務を行うために設置する拠点のことを指します。主に営業活動やサービスの提供、顧客対応を行うために設けられるものです。しかしながら、建設業法における「営業所」の定義は一般的な意味合いとは少し異なります。今回は、建設業法における「営業所」がどういうものなのかを詳しく解説します。

建設業法における「営業所」の定義

建設業法において「営業所」とは、「本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるもの」とされています。そして、建設業法施行令において、「政令で定める支店に準ずる営業所は、常時建設工事の請負契約を締結する事務所」とされています。つまり、建設業法における「営業所」の定義とは、「本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所」ということになります。

なお、本店又は支店は、常時建設工事の請負契約を締結する事務所でない場合であっても、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行う等、建設業に係る営業に実質的に関与するものである場合には、「営業所」に該当することになりますので注意が必要です。

建設業法
(建設業の許可)
第三条 建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。
~以下省略~


建設業法施行令
(支店に準ずる営業所)
第一条 建設業法(以下「法」という。)第三条第一項の政令で定める支店に準ずる営業所は、常時建設工事の請負契約を締結する事務所とする。

 さらに、国土交通省の「建設業許可事務ガイドライン」では、「「常時建設工事の請負契約を締結する事務所」とは、請負契約の見積り、入札、狭義の契約締結等、請負契約の締結に係る実体的な行為を行う事務所をいい、契約書の名義人が当該事務所を代表する者であるか否かを問わない。」とされています。

建設業法における「営業所」は、請負契約の見積り、入札、狭義の契約締結等、請負契約の締結に係る実体的な行為を行う事務所であると覚えておくとよいでしょう。

「営業所」の届出

建設業法の「営業所」を設置する場合、建設業許可の手続きにおいて、届出をしなければなりません。

逆にいえば、届出がされていない営業所では、請負契約の見積り、入札、協議の契約締結等、請負契約の締結に係る実体的な行為を行うことができないということですので、注意が必要です。

「営業所」の要件

建設業法の「営業所」を設置する場合の要件があります。許可行政庁により、微妙な違いがありますが、次の3つの要件はどの許可行政庁であっても必要となる要件です。

  • 令3条使用人が置かれていること
  • 専任技術者が置かれていること
  • 営業所としての実態があること

これらの要件を備えなければ、営業所の届出をすることはできません。

■東京都知事許可での営業所の要件
ア 外部から来客を迎え入れ、請負契約の見積り、入札、契約締結等の実体的な業務を行っていること

イ 電話(注)・机・各種事務台帳等を備え、契約の締結等ができるスペースを有し、他法人又は他の個人事業主の事務室等とは間仕切り等で明確に区分されていること
(注)名刺や封筒等で確認できる業務用の携帯電話も可とします。
 電話番号は、『建設業者・宅建業者等企業情報検索システム』で公開されます。
同一法人で本社と営業所が同一フロアである場合は、仕切り等は必要ないが、明らかに他の営業所と分かるよう看板等を掲示し、営業形態も別とすること
個人の住宅にある場合には居住部分と適切に区別されているなど独立性が保たれていること

ウ 常勤役員等(経営業務の管理責任者)(以下、「常勤役員等(経管)」という。)又は建設業法施行令第3条の使用人(支店等において上記アに関する権限を付与された者)(以下、「令3条の使用人」という。)が常勤していること

エ 専任技術者が常勤していること

オ 営業用事務所としての使用権原を有していること(自己所有の建物か、賃貸借契約等を結んでいること)。
出典:東京都「建設業許可申請変更の手引」(https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/kensetsu/pdf/2024/R06_kensetu_tebiki_all.pdf

「営業所」が複数ある場合の注意点

建設業法では、軽微な建設工事であれば、建設業許可が無くても請け負うことができます。(「軽微な建設工事」とは、工事1件の請負代金の額が建築一式工事以外の建設工事の場合にあっては、500万円未満、建築一式工事にあっては1,500万円未満又は延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅の工事をいいます。)

しかしながら、営業所が複数ある場合、許可を受けた業種については軽微な建設工事のみを請け負う場合であっても、届出をしている営業所以外においては当該業種について営業することはできませんので注意が必要です。

次のようなケースでは、A及びB営業所では土木・建築についての営業をすることはできません。また、B営業所では水道施設の営業もすることはできません。

まとめ

  • 建設業法における「営業所」の定義とは、「本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所」である。
  • 「営業所」は、請負契約の見積り、入札、狭義の契約締結等、請負契約の締結に係る実体的な行為を行う事務所である。
  • 「営業所」を設置する場合、建設業許可の手続きにおいて、届出をしなければならない。
  • 「営業所」を設置する場合、「令3条使用人が置かれていること」「専任技術者が置かれていること」という要件がある。
  • 「営業所」が複数ある場合、許可を受けた業種については軽微な建設工事のみを請け負う場合であっても、届出をしている営業所以外においては当該業種について営業することはできない。
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